大阪・肥後橋「ガル」 名店デリー出身の店主が作るセンス抜群の“家”カレー

大阪でブーム加熱中のスパイスカレーの名店を紹介するWEB連載「大阪スパイスカレー名店ファイル」第7回は大阪・肥後橋の人気店をご紹介します！

今回紹介するのは、東京・上野のインド・パキスタン料理の老舗「デリー」で約10年修業した店主のこだわりカレーが堪能できる「Ghar（以下、ガルと表記）」。スープ系のチキチキカレー、とろみ系のぎゅうビーフカレー、ドライ系のベジラムキーマとタイプの異なる3種の定番に加え、毎回、趣向を凝らした内容が好奇心をそそる月替りカレーが味わえる。お昼時にもなると店内はたちまち満席状態になり、行列ができる繁盛店だ。2012年のオープン以来、衰え知らずの人気を保つ「ガル」の店主 鈴木貴之さんに「デリー」へ入店した経緯や、関西にお店を開いた理由などを聞いてみた。

大学卒業後、専門学校に進学し「デリー」へ

「ガル」を訪れたのは夕方、店主の鈴木さんは一人で黙々と明日の仕込みをしている最中だった。「作業をしながらですみません」と一言。短い言葉の中に鈴木さんの優しい人柄が伝わってきた。

店主の鈴木さんは大学時代、料理とは全く異なる建築系の学科で学んでいたという。そんな鈴木さんが料理の道へ進むことになったのは、就職活動を控えた4年生の時。自分が何をしたいのかを改めて見つめ直した時、焼鳥店や焼肉店でのアルバイト経験を通して、料理をすることに興味があることに気付いたという。就職はせず調理師専門学校への進学を決めた。1年間料理について学んだ後、学校からはイタリア料理やフランス料理、和食などへの入店を勧められたが、しっくりこなかった。そこで、いろいろと調べた結果、東京の「デリー」に専門学校から行った人が一人だけいることを発見！　関西での就職も考えたが、当時は現在のように多種多様なカレー店もなく、また、求人があったとしてもホールスタッフとして。インド人やパキスタン人など現地の方が厨房で調理をしており、日本人が厨房で働ける店はなかったという。そこで東京行きを決め「デリー」へ入店。「当時は、デリーがそんなにすごい店だということを知らずに行ったんです(笑)」と鈴木さん。

店長兼料理長というキャリアを持って関西へ凱旋

「デリー 上野店」に入店し、その後、銀座店、ミッドタウン店では料理長に、最終的には上野店で店長兼料理長として勤務。「デリー」のカレーを学ぶことができたことはもちろん、インド人コックとのコミュニケーションの中で現地の調理法などを学べたことも大きかったという。東京では10年、それから地元へ戻ると関西を離れる時に決めていたそうだ。東京での生活が始まって10年目、結婚してお子さんがいた鈴木さんは、子供が小さいうちに実家の奈良へ帰ることにした。

関西に戻ってきてから店舗探しを始めたところ（カレー店はスパイスを使うため、匂いの問題で物件探しが難航することが多いらしいが）思いのほか良い物件が早くに見つかり、2012年6月に「ガル」をオープン。「ガル」とは、ヒンディー語で“家”という意味。気軽に立ち寄ってほしいという気持ちが込められている。

タイプの異なる4種のカレーすべてがイチオシ！

「デリー」で培ってきた技術をベースに、「ガル」では鈴木さんオリジナルのレシピとセンスで、どこにもない至極の逸品が味わえる。「ガル」で出すカレーは4種。鶏ガラで出汁と15種の香辛料が絶妙に調和した、辛さ抜群のチキチキカレー。チキチキのネーミングの由来はチキンスープとオーブンで焼き上げたチキンが入っているから。1人前に玉ねぎ1玉分が入り、玉ねぎの甘味と牛肉の旨みがぎゅっと詰まったぎゅうビーフカレー、そして一番人気は、鈴木さんいわく「ビビンバみたいな感じ」のベジラムキーマと、毎月内容が変わる月替わりのカレー。いずれも鈴木さんイチオシのメニューだ。

現在はランチのみ。まだ模索中だが、スパイス料理に特化した料理とお酒、締めにはインドカレーという内容で夜の営業も復活させたいと考えているそう。

「将来は、畑でスパイスや野菜を育て、その野菜を使ってカレーを作りたい」と語る鈴木さん。ではご実家のある奈良は？という質問に「よく言われるんですよ。出身が奈良なので、なぜ奈良に出さなかったのかって。当時は奈良に店を出す勇気がなかった(笑)」と。奈良の自然豊かな里山で、自家菜園のスパイスと野菜でこしらえた美味しいカレーが食べられることを勝手に期待しております。

※本連載はムック「KansaiWalker特別編集　関西カレー’17新時代！」（現在発売中）の発売を記念した連載記事です。大阪スパイスカレーの名店・新店を多数紹介した本です。ぜひ興味のある方は書店・コンビニでチェックしてください。

【関西ウォーカー編集部/ライター惣元美由紀】

惣元美由紀