「世の中は動いているのです!」の宣言で始めた、農家レストランランキング1位の店へ

東京ウォーカー(全国版)

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山形県の農家レストランのパイオニアともいえるのが、「知憩軒(ちけいけん)」を営む長南 光さん。全国の農家レストランのランキング第1位にも選ばれたほどの人気を誇る。農家で生まれ育ち、「農家を多くの人に知ってもらいたい」という思いから、約20年前に農家レストラン、その後民宿をひっそりとスタート。今では海外からもファンが訪れるという「知憩軒」を訪ねた。

軒の下で憩いの時間を過ごしつつ、農作物や農業の知識を身につけてくれたら…という思いで「知憩軒」と命名された


掃除が行き届いた静かな客室、共用の玄関やダイニングも、品のいい調度品に囲まれて、本当に気持ちがいい!どんな小さなスペースにも、お花やかわいい雑貨が置かれていて、心がふ~んわり和む。

知憩軒は1961年築の古民家。店内は当時そのままの雰囲気を感じられる


長南さんは、以前小田原市に働きに出たこともあるけれど、それ以外は地元鶴岡市でずっと農業に携わる。親の介護で家から離れられないので、仕事をするのならお客さんが家に来てくれるレストランや民宿がいいと考えた。「誰にも相談しなかったです。今日からレストランをやります!って家族に言って(笑)。多分みんなびっくりしたと思うけれど『世の中は動いているのです』って説得しました」。

民宿のお客さんの第1号は宮城県から来た女性だった。今ではイタリアからの常連客もいて、そのイタリアまで農家の料理を教えに行ったこともあるとか。「煮物や焼き物、漬け物など、ごく普通の郷土料理です。特に教えられたこともないけれど、生活するために自然に覚えました。それをお客さんが食べて『鶴岡の料理はおいしいな、農業って大切だな』って気付いてもらえたら」。

生きることの基本は“食”。食を支えるのが農家。


長南さんの手作り料理は化学調味料を使わない薄味仕立て。キノコや魚介類以外は、自分の畑で育て収獲した。

知憩軒の朝ご飯。材料は長南さんが育てた旬の野菜が中心。手作りの梅干しや漬け物もいただける


部屋の掃除も料理も農作業もほとんど長南さん一人でこなし、さらには機織りまでも!「丁寧に暮らすというのはこういうことなんだな」と実感。

「好きな人とおいしいものを食べて、笑って…。それで十分幸せな気がします。だって食って人生の基本ですから」と語る長南さん。知憩軒で食事をして、宿泊をして、長南さんと会話を交わすと、食の大切さがジワジワと身にしみる。そして忙しい毎日では気づかない自然の素晴らしさにも。たとえば、雨に濡れたあとの緑の輝き、青空に映える月山や鳥海山の美しさ、土を歩く小さな虫にも宿る命にも。「わざわざ教えることではないですけど、お客さんがふっと気づいてくれたらうれしいですよね」

感想ノートには、長南さんの美しい文字も並ぶ


はい、十分に伝わっていますよ。その証拠にお客さんが書き残した感想ノートをのぞくと、誰もがびっしりと文章を書き込んでいる。最後のページには、長南さんのメッセージも。また長南さんの顔を見に来よう、またおいしい料理を食べさせてもらおう。そんな気持ちになる、「知憩軒」での一泊だった。

東野りか

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