年に1回僕たちは……【いきものがかり山下穂尊の『いつでも心は放牧中』Vol.10(最終回)】

2017年11月10日 11:00更新

東京ウォーカー(全国版) 編集部

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僕たちは3人であまり話をしない。

と言うと語弊があるかもしれないが、たとえば暇だから今日呑みに行こうか、みたいなことは絶対にない。

元々仲良しだから集まったというわけではない。良樹にしても、小学校からずっと同じ学校だったけれど、一緒に遊んだりするような仲ではなかった。聖恵は、わかりやすくいきものがかりをやるために一緒にやるようになった。

だから、プライベートはそもそもバラバラなのだ。

もしかしたらその距離感がいきものがかりにとって重要なことなのかもしれない。

 

インディーズからメジャーに行く間に、車の中でよく話をしたが、そこでもたとえば音楽的なことについてや、プライベートについてはほとんど話さなかった。次はどうしようとか、あの件についてはどうすればいいかといった戦略的なことはよく話したが。

昔から、「次はこういう曲を作って」などと依頼したりすることは一切なかった。あくまで活動上の目標ありきで、次のワンマンがあるから僕と良樹で曲を作ってきて、その中からじゃあこれをやろうという感じだった。もっとはっちゃけた曲を、とか、もっと地味な曲をといったリクエストはしたことも受けたこともない。

さらに、お互いの曲について、批評をし合うということもない。

もちろん、セットリストを組む時に、この曲をやろうとか、これはやめておこうというのはある意味においては批評ではあるのだが、具体的に曲について話し合うということはない。

そして、音楽的な部分でもめたということもこれまであまりない。

 

いきものがかりのリーダーは、基本、良樹だ。

僕は舵を取ったりすることに対して、あまり興味がないというか、どっちでもいいというタイプだから、まずリーダー向きではない。

基本的に良樹が決めたことはいいと思っている。もし、少し違うなという空気を感じたら、僕が言うようにしている。そこは、外部の人よりも信頼してくれているという関係性があるからだと思う。

ただ、聖恵だってもちろん影響力があるわけだし、誰が誰よりも多く票を持っているというわけではない。3人が1票ずつ持っている、そんな感じだ。

 

プライベートもバラバラ、音楽的なこともそれほど話さない。そんな僕たちだけど、それでも年に1回3人だけでメシを食う。

年に1回の定例会みたいな感じで、それぞれが抱えていることや思っていることを伝え合う。たまにシビアなことを話したりすることもある。

良樹の結婚の報告を受けたのも、この3人だけの場だったし、それをどうやって事務所に報告しようかとか、そんなことを話し合ったのを憶えている。僕たちにとっては、結構重要な場なのだ。

年に1回でもそういう場がないと、大げさかもしれないが、いきものがかりが崩れていくような気がする。

2017年の初めに発表した「放牧宣言」についても、まず前年に3人だけで話し合った。これからどうする? というところから始めたのち、デビュー10周年の大きな動きが終わってから、という大まかな流れを決めて、その上でスタッフたちとじっくり決めていった。

元々3人だけでやっていたので、始まりはいつもそこなのだ。

そこだけは崩れたことがない。

そこでひとつひとつ共有していくことが、いきものがかりの一年のエンジンとなる。

 

たしかに僕らはあまり話をしない。

しかし、大切なことはいつも3人で共有している。

そして、もう一つ。意外なことに「放牧」になって、僕らはプライベートで会う機会が結構増えた。まるで、デビュー前に、ああでもないこうでもないと語り合っていた感覚が蘇ってくるようだ。

次はどこへ向かうのか――わからないけど、とにかく歩き始めてみようか。

さて、ここまでの全10回の連載はいかがでしたか? "山下穂尊"という人間がなんとなくわかって頂けたでしょうか。

いよいよ、この連載をまとめた単行本が明日、11月11日(土)発売されます。そして! ちょっと前に発表しましたが11月19日(日)に渋谷のHMV&BOOKS TOKYOさんでトークイベントなるものがあります。ぜひ、そこでお会いできる人は会いましょう!

あらためてありがとうございました!!

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