ソフィア・コッポラがカンヌ国際映画祭監督賞に!女7人×男1人…、緊迫の愛憎劇!<連載/ウワサの映画 Vol.20>

東海ウォーカー

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ソフィア・コッポラが2017年カンヌ国際映画祭監督賞に輝いた「The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」。ミヒャエル・ハネケ、ジャック・ドワイヨンの両御大を抑えた、56年ぶり史上2人目の女性監督の受賞とあり、盛り上がりましたね。長編6作目にしてサスペンス・スリラーという新ジャンルに挑み、オハコのガーリー感を抑えたダークな世界観で魅せる本作。でも、どうしたって抑えられないのが”おしゃれ感”!今作も全編がソフィア印です。

チビっ子から思春期ガール、若手教師に園長まで、フリフリなドレスをまとった美しい”淑女”たち。秩序と欲望の狭間のせめぎ合いが、めくるめく愛憎劇に発展!©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved


原作はトーマス・カリナンの「The Beguiled」。この小説は、1971年に一度映画化されています。そのドン・シーゲル監督&クリント・イーストウッド主演作「白い肌の異常な夜」のリメイクではなく、女性の視点から原作を解釈し直したソフィア。繊細な心理戦を際立たせた新たな物語に仕上げています。

ふくらみ控えめのスカートなど、現代でも着られるようにデザインされた衣装がステキ。見せどころのファッションをはじめ、ソフィアの乙女ワールドへのこだわりに拍車がかかってます!©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved


舞台は1864年のバージニア州。南北戦争まっ最中の世間から隔絶された女子寄宿学園で、7人の女性たちが暮らしています。ある日、園長のミス・マーサ(ニコール・キッドマン)らは、負傷し森に潜んでいた北部の敵兵・マクバニー(コリン・ファレル)の手当をし、屋敷にかくまうことに。男子禁制の学園に突如加わった異性のワイルドで紳士的な人間性に触れ、学園の面々は浮き足立ち、心を奪われていきます。やがて、回復したマクバニーを囲んだ夕食会で、会話にトゲを忍ばせた女たちの嫉妬と欲望は最高潮に達し、その晩に”ある出来事”が勃発。危うい均衡を保ってきた”女の園”は思わぬ事態に…!

音楽室に幽閉状態のマクバニーが気になって仕方ない女子たち。女軍団の陰湿なけん制の応酬は、自分もちょいちょい遭遇してきたおなじみの光景でした…©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved


じっとりねっちり。女子たちの振る舞いが、身に覚えのあるものばかりでイタい…。南部の伝統を守る淑女といえど、しょせんはオ・ン・ナ。さりげなくブローチを付けてみたり、チビッ子までが真珠のイヤリング(先生の私物を拝借!)で着飾ったり、園長さんに至っては、手当のために触れた久しぶりの男の肉体にドキドキ…。本能に駆られた露骨な浮かれように赤面です。程度の差こそあれ、老いも若きも異性への反応が一律で笑える!”キリストの教えに則って”回復まで面倒をみるという建前も、「男子と一緒にいた~い」という下心が見え見え。”教え”にかこつけちゃうしたたかさ…、女あるあるですね~。

「パーティで女の子に話しかけるには」「アバウト・レイ 16歳の決断」など、攻めの役柄が続くエル・ファニング。今回は、同性としては絡みたくない、場を乱す挑発的な美少女役です©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved


清楚な教師役のキルスティン・ダンスト、出し抜いてやる感全開でマクバニーを誘惑するエル・ファニングら「ソフィア組」に加え、新戦力の実力派2人も巧かった!まずは、園長役のニコール・キッドマン。いきなりオンナをむき出しにし始めた学園メンバーに対する、聖母から一転しての冷ややかな表情がコワすぎっ。美貌と年の功を武器に、年齢のハンデを蹴散らすその凄みがハンパなく…。成熟した女の意地とプライドにタジタジです。

状況をつぶさに見渡し、「引っ込んでなさい、クソガキども(怒)」とばかりに、ブラック&スマートに敵(?)を威嚇。持ち前の知的さがあふれ出てますね、ニコール姐さん(中央)!©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved


続いて、女の園の天国と地獄を体験するマクバニー役のコリン・ファレル。「女なら誰でもいいんかい!」という勢いで、女性全員をその気にさせて、ハーレム状態に調子こいちゃう姿がなんとも似合ってます。”男性”より”オス”という言葉の方がしっくりくるコリンだけに、暴力的な面も含めて「地でやってるの?」ってなハマり役ですねぇ。不運でもあり自業自得でもある、この男の「あ~あ」な運命とは…!?

女たちの本能を覚醒させ、「戦争に戻りたくねーし、ここに居座ってやろう」と思い付くマクバニー。情けない困り顔も狂気も、素のコリンを見ているみたい…©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved


女性の集団心理と、そこに異物(男)が入り込んだ時の一連の化学反応を緊迫感満点に暴いてみせたソフィア。スリラーの形をとったことで、テーマであり続ける”秘めたる女心”の表出がより洗練されました。男性の存在が遠のいていた南北戦争という背景も、抑圧された女たちの現実逃避への渇望を効果的に煽っていて印象的です。そして、音楽をほぼ排した、まばゆい自然光と不穏なロウソクのきらめきが織り成す静謐(せいひつ)な映像世界も、ひたすら優雅!

完璧な構図の映像美!…この少女も、早くもドロドロ女の素質十分。世の中にはドロドロじゃない女性もいるんですか?類友のせいか私は会ったことありません(悲)©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved


野心と焼きもちの嵐が去った後、園長たちが下す決断は、女性なら妙に納得しちゃうと思います。激情にまみれていても、やっぱり理性が優先してたりしません?女って。そんな複雑怪奇な乙女心の機微こそが、私がソフィア作品で観たいもの。それがどんなに”スリラー”であっても、結局は美しき女たちに魅了されてしまうのです。【東海ウォーカー】

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは「15時17分、パリ行き」(3月1日公開)のクリント・イーストウッド監督!

おおまえ

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