アカデミー主演男優賞受賞!特殊メイクしてても沸き立つゲイリーのオーラ!<連載/ウワサの映画 Vol.25>

東海ウォーカー

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今年のアカデミー賞で6部門にノミネートされ、主演男優賞(ゲイリー・オールドマン)とメイクアップ&ヘアスタイリング賞(辻 一弘)を受賞した「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」。ピンときそうでこない壮大な伝記みたいな邦題ですけどね、原題はチャーチルの言葉でもある「Darkest Hour」。その原題が指す、首相就任からダンケルクの戦いを背景に下された歴史的決断までの”27日間”が、彼の没後に公開された戦時内閣の閣議記録を元に描かれます。緊迫感を途切れさせない、ゲイリー渾身の名演にシビれます!

「つぐない」「プライドと偏見」などのジョー・ライト監督が、首相になりたてで足場がぐらつきまくっていたチャーチルに肉薄。ラスト、伝説のリーダーへの階段を上ります!©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.


1940年5月、第二次世界大戦初期。勢力を増したナチス・ドイツは各国に侵攻し、フランスは陥落寸前に。イギリスにもその脅威が迫る中、フランス・ダンケルクの海岸に追い込まれる連合国軍…。度重なる失策により”政界一の嫌われ者”であったウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)は、英国首相に就任早々、この最大の危機に対する舵取りを任されます。ヒトラーに屈して和平交渉を行うのか、国家を失くそうとも徹底抗戦するのかー。葛藤するチャーチルは、四面楚歌の議会で政敵に追い詰められながら、ヨーロッパのみならず世界の命運がかかった究極の選択を迫られることに…。

「クレミーがいなかったら戦争を生き残れなった」とチャーチルが語る、家庭でも政治でも夫を支えた愛妻クレメンティーン。クリスティン・スコット・トーマスの演技も重厚です!©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.


毎度の「巧いな~」を超えて、今回のゲイリー・オールドマンには燃える”役者魂”を感じましたね~。正直、ほかのオスカー・ノミニーとは格が違っちゃってる。でっぷりチャーチルとは似ても似つかないクールなおじさまですが、ここまで外見がかけ離れていると、いくらカメレオン俳優といえどキツい。ってことで、「別人?」級の完璧な特殊メイクが施され、畏れを抱くほど役に憑依してる…。「ゲイリーなの?ゲイリーである必要はあるの?」と不安でしたが、クルクルの愛らしい目はまぎれもなく彼!話し方や動きを完コピしつつ、おちゃめな人間味を醸して壮絶な苦悩を引き立てています。”変わり者で感情的”というイメージしか持っていなかった私には、発見の多いチャーチル像でした。

朝から酒を吞み、国王との用事よりも昼寝を優先、風呂場でもミーティングする…。ゲイリーが演じると妙にかわいいけど、やっぱり変人…。がんばれ、秘書(奥、リリー・ジェームズ)!©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.


そんなゲイリー直々のオファーで、彼の特殊メイクを担当したのが辻 一弘。2012年に現代美術家に転向して映画界を去っていましたが、かの名優に「キミがメイクしてくれないなら、オレは出ない」って言われちゃったら、さすがに断れない(笑)。とはいえ頭の形からして全然違う2人…、変身道具の開発と試作には6ヵ月もかかり、ヘアメイクには3時間半を要したとか。ゲイリーは出づっぱりなので、毛穴とかシワとか、アラ探しを試みましたが完敗。たぷたぷしたアゴ肉なんか、もう芸術的ですよ。「ゲイリーは特殊メイクの重要性を理解してくれている」と語る辻さんも、主役と共に”当然の”アカデミー賞受賞です!

チャーチルといえば”Vサイン”。手のひらを内側にした場合は「クソくらえ」の意になることを知らずに部下に正されたなど、笑えるエピソードも満載です©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.


本作と並びアカデミー作品賞にノミネートされた「ダンケルク」とセットで観るのがオススメ。こちらが「会議室」、あちらが「現場」となっていて、まったく違う興奮があり理解も深まります。政治家が駆け引きしてるうちに、庶民は死んでいく…、2本の対比が戦争のリアルを浮き彫りに(涙)。ダンケルクの戦いで遂行された”ダイナモ作戦”(輸送船や駆逐艦、一般の船舶など860隻を招集し、30万以上の兵士を救出した)はチャーチルの発案だったんですね。作戦実行直前、カレーにいた部隊を巡る苦渋の決断が一層胸に沁みますよ。

かつてジャーナリストだったこともあり、”言葉”の力で国民を奮い立たせたチャーチル。ゲイリーが再現するラスト約4分の名スピーチのシーンは圧巻!©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.


チャーチルが、ヒトラーとの和平条約にサインしていたら…。現在の世界を様変わりさせたであろう危険な交渉をギリギリで回避した瞬間、心拍数が跳ね上がっちゃいました。そしてゲイリーの熱演に、民衆の声を拾い上げてくれるリーダーへの憧れを重ねずにはいられないのでした。チェンバレン元首相役(ロナルド・ピックアップ)や英国王ジョージ6世役(ベン・メンデルソーン)までも本人に似た雰囲気をまとい、観客を歴史の一場面に連れ出してくれる本作。こんなにも本物感を追求されると、今後の歴史ものはハードル上がっちゃいますねぇ。【東海ウォーカー】

個人的に深い信頼関係にあったといわれる英国王ジョージ6世とチャーチル。本作では、2人の友情が芽生える過程もていねいに捉えています©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.


【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!  最近のお気に入りは「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」(4月6日公開)のジャック・ブラック!

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