美男2人の純粋な恋。”ディカプリオ以来の才能”ティモシー・シャラメに陶酔!<連載/ウワサの映画 Vol.30>

東海ウォーカー

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美男子同志の背徳の情事…、うふっ…、と妄想が肥大しっぱなしだった「君の名前で僕を呼んで」。残念ながら(笑)期待したような下世話さはちっともなくて、むしろ崇高!「モーリス」や「日の名残り」などの名作を監督した89歳の巨匠ジェームズ・アイヴォリーが脚色を担当し、アカデミー賞脚色賞にも輝いてるんだから、低俗なわけないか(反省)。アカデミー賞ではほかにも作品賞などにノミネートされましたが、特に、本作で「ミレニアル世代のディカプリオ」と絶賛され主演男優賞候補となったティモシー・シャラメくんが出色です。避暑地で育まれる17歳と24歳の青年の恋…、ゲイうんぬんの次元を超え、胸に迫るのはひたすら澄んだ魂のみ!

イギリス人青年の同性愛を描く文芸ロマンの名作「モーリス」(1987年)で、私を虜にしたアイヴォリー。彼の世界観を投影し、アンドレ・アシマンの同名小説を生き生きと脚色!©Frenesy, La Cinefacture


舞台は1983年。17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、毎年、夏になると、アメリカで教鞭をとるギリシャ=ローマ美術史を専門とする大学教授の父(マイケル・スタールバーグ)と翻訳家の母(アミラ・カサール)と共に北イタリアを訪れます。母が相続した17世紀に建てられたヴィラで過ごすある日、父が毎夏迎えているインターンとして、博士課程に在学中の24歳の大学院生・オリヴァー(アーミー・ハマー)がアメリカから到着。一緒に自転車で町を散策したり泳いだりして時間を重ねるうちに、エリオのオリヴァーへの気持ちは、初めて知る恋へと変わっていきます。やがて激しく恋に落ちる2人でしたが、夏の終わりと共にオリヴァーが去る日が近づいていたのでした…。

「インターステラ―」でマシュー・マコノヒーの息子役だったティモシー。ディカプリオのオヤジ化を思うと、今のみずみずしさは本当にかけがえのないものですね…©Frenesy, La Cinefacture


涙も、汗さえも、17歳の主人公・エリオに扮した新星・ティモシーの、2度とは戻らない”キラキラな瞬間”が強烈にまばゆいです。コロンビア大学入学後にニューヨーク大学に編入したインテリな彼は現在22歳、初主演となった本作で各映画賞をうならせ若手最注目の座に躍り出ました。進展したり後退したりのもどかしい関係の中で高まる感情、そして生々しくむき出しになる成長期特有の精神的&肉体的焦燥を自然体で演じています。お父さんがフランス人ということで、ヨーロッパの言語に親しみがあったり、なにげに情熱的だったりと、エリオ像にも見事にぴったり。ポカンと口を半開きにしてせがむようにキスを待つ表情や、性的エネルギーが走らせたよもやの行動を恥じてまごつく”桃事件”などなど…、かわいすぎるぞ、ティモシー!

190㎝の彫刻的肉体を誇るアーミーにしがみつく、やせっぽっちなティモシー…。小鹿ですか? って感じで、キュンキュンが止まりません©Frenesy, La Cinefacture


個人的にこの物語の影の主役だと思うのが、エリオの両親。実力派マイケル・スタールバーグ&アミラ・カサールが作品に重厚感を与えています。男に恋する息子の喜びも傷心も温かく受け止め、「稀有で特別な絆だ」と讃えてくれる…。”人を人として見る”その視線こそが稀有ですよ、パパ&ママ! 「心も体も一度しか手にできない。痛みを葬るな、感じた喜びも忘れずに…」などと終盤でパパがエリオに語る言葉は、一字一句書き留めればよかったくらいの見せ場となっています。

監督はイタリアの俊英ルカ・グァダニーノ。ロケ地となった監督が住むロンバルディ州・クレマの景観と自分の住環境との差にうなだれるばかり…。奥2人がエリオのパパ&ママです©Frenesy, La Cinefacture


すてきな両親によって多才な男子に育てられたエリオは、自然に囲まれて、クラシック音楽を編曲したり演奏したり(ティモシー自身が演奏を披露!)、有史以来の文学や芸術や哲学を多言語で親しみながら、知的で官能的な夏を過ごします。こういう舞台装置なので、恋の形式が多様なことはエリオにとっても当然。近所のフランス人女子とやることやってる延長にオリヴァーへの本物の恋が訪れたってだけで、「性別が何か問題?」って雰囲気です。ってことで作品タイトルも意味深ですね。オリヴァーがベッド上でエリオに「君の名前で僕を呼んで」って囁くんですけども…、もはや”万物一如”的な世界。

長身で丹精なお顔立ちで富豪で…、と「天は何物与えたんだ」っていうオリヴァー役のアーミー・ハマー。秘めた恋の喜びと罪悪感を知性たっぷりに演じ、ゴールデン・グローブ賞候補に!©Frenesy, La Cinefacture


そして久々に感動した名シーンが、3分30秒(!)というスーパー長回しのラストショット。その中のエリオは幸せそうには見えないけれど、痛みすらも生涯の宝物となる”一度きりの初恋”を懸命に消化しようとしています。このラスト3分30秒の主役は、エリオ=”あの頃”のあなた。古代美術が代弁する人間史と、豊かな土地とまぶしい俳優…。シンプルで嘘のない”美”が支配する珠玉の1本は、今年イチのときめきに終わらず永く心に住み着く気がしています。【東海ウォーカー】

女の子たちと遊んでいるエリオの肩に何気なく触れるオリヴァー。彼の口癖「後で」が気に入らず、いじわるな行動をとるエリオ…。”恋のはじまり”がくすぐったいですな~©Frenesy, La Cinefacture


【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!  最近のお気に入りは「孤狼の血」(5月12日公開)の白石和彌監督!

おおまえ

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