山﨑努と樹木希林、2人の名優にも物怖じしない!? 映画「モリのいる場所」沖田修一監督インタビュー

関西ウォーカー

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 山﨑努と樹木希林の日本映画界を代表する名優コンビが、伝説の画家・熊谷守一夫妻を演じた映画「モリのいる場所」。「モヒカン故郷に帰る」「横道世之介」の沖田修一監督がメガホンをとり、晩年の熊谷守一をユーモアたっぷりに描いている。多くの人を魅了する熊谷守一の魅力と、山﨑、樹木の名優コンビとの撮影について沖田監督に語ってもらった。

インタビューに応じてくれた沖田修一監督


映画「モリのいる場所」は、30年間ほとんど家の外へ出ることなく、自宅の庭にいる生き物たちを見つめ描き続けていた熊谷守一のユニークな生活スタイルを軸に、ユーモアあふれる人たちと織りなす晩年のとある1日を描いた作品。熊谷守一(通称:モリ)を山﨑が、妻・秀子を樹木が演じ、ほかにも加瀬亮、吉村界人、光石研、青木崇高、吹越満、池谷のぶえ、きたろう、三上博史など一癖も二癖もある個性派キャストが揃った。

──本作のモデルは画家の熊谷守一さんですね。劇中でも触れていますが、晩年に発表した作品は子どもが描いた絵と間違えられるような作品で、外出もほとんどせず、自宅の庭で生き物を見続けていたなど、調べれば調べるほど面白い魅力的な人ですよね。

そうですよね。守一さんは本当に魅力的な方です。

「モリのいる場所」メインビジュアル(c)2017「モリのいる場所」製作委員会


──沖田監督が熊谷さんのことを知ったのは「キツツキと雨」の撮影中に、山﨑努さんから聞いたのがきっかけだそうですね。

岐阜でロケをしていたとき、たまたま記念館の近くだったみたいで、山﨑さんから「時間があったら寄ってみたら?」って言われて。その時は忙しくていけなかったんですけど、池袋に美術館があるって聞いて、時間ができたときにちょっと行ってみたんです。作品はネット画像で見ていたんですが、子どもが描いたような簡単な絵で実物を見たら「これかー(笑)」ってなって。それからいろいろと調べていくうちに、30年ぐらい外に出ていないことも知りました。その不思議なスタイルにも惹かれましたね。

──映画にしようと思ったきっかけを教えてください。

山﨑さんが守一さんの役をやったらどうなるんだろうって興味が大きなポイントでした。写真家の藤森武さんの「独楽ー熊谷守一の世界」という写真集があって、晩年の守一さんのチャーミングな写真がいっぱいあるんです。こんな守一さんを山﨑さんが演じて、それを映画で撮れたら、あまり見たことがない映画になるんじゃないかなって思ったんです。

【写真で見る】本作の着想についてを明かす沖田監督


──本作は、晩年の守一さんのある1日だけを描いています。1日だけではありますが、これまでの日々が想像できる不思議な作品でした。なぜ、晩年の1日だけを切り取って描こうと思ったのですか?

晩年の守一さんのチャーミングな写真を見てしまったものですから、晩年を描きたいという思いはありました。そもそも半生を映画できるイメージができなくて(笑)1日の話しにすることで、逆に長い時間に何があったかを想像させることができるような気がして、シンプルに1日だけを切り取ることにしました。

──山﨑さんとは演技についてどのようなお話をされましたか?

もちろん山﨑さんも守一さんが大好きなんですが、だからこそ写真のようなチャーミングな守一さんにはなれないって言われて。山﨑さんなりの熊谷守一を作っていこうって話をしました。あとは話し方がおじいちゃんすぎないかを気にされていたので、調整していきました。でも、基本的には山﨑さんの見せてくれるものにちょっとだけ付け加えるだけでしたね。山﨑さん、やっぱり凄かったんで。

──脚本も沖田監督が手掛けられていますね。

台本を書いているときにセリフの言い方も頭の中でイメージするんですよね。それを人に渡して演じてもらうと、自分の思った通りの言い方じゃないんですよ、だいたいは。でも山﨑さんの場合は、僕は面白がって書いていることをすごくわかってくださっていて、あまりズレがないんですよ。不思議と合ってて怖いんですよ(笑)大げさな感じじゃなく、さりげない面白さも再現してくれるので、台本を大事にしてくださっているのがわかりました。

「モリのいる場所」劇中カット(c)2017「モリのいる場所」製作委員会


──そして、樹木希林さんですが、アドリブを多く反映したと伺いました。

アドリブというより樹木さんのアイデアを取り入れた感じです。樹木さんがこうしたら面白いんじゃないかってことをたくさん考えてくれて、やるかやらないかは話し合いながら決めていくんですが、樹木さんに言われたらやってみてくださいってことになりますよね(笑)

──具体的に樹木さんのアイデアを反映したところは?

序盤のセリフで前の旦那さんに触れるところがあるんですが、そこは樹木さんが入れたいって言ってくれました。あとは、山﨑さん演じる守一さんと話しているときは、何かをしながら話すのがいいっていうのも樹木さんのアイデアです。2人で囲碁をしているシーンでも、樹木さんは縫い物しながらやっているんですよ。そういうキャラクターの流れみたいなものは、樹木さんが作ってくれて。改めてすごいなと思いました。

──日本を代表する2人の名優とご一緒して、物怖じみたいなものはなかったんですか?

あったと思いますよ(笑)山﨑さんと樹木さんに何も言わないで任せたら、それはきっと勝ちですよ。本当は余計なこと言わないで、2人にお任せしてしまうほうが良い作品ができるんじゃないかって。でも、どこかで、自分が考えたものだから、やっぱりこうしたいっていうのはあるんですよね(笑)

「モリのいる場所」劇中カット(c)2017「モリのいる場所」製作委員会


──あと、本作で重要なファクターになっているのが、猫や昆虫などのさまざまな生き物たちと守一さんが愛してやまなかった大きな庭です。

運が良かったのかもしれないですけど、ロケハンをしたときからこの庭には生き物が自然と集まっていました。とにかく生き物がたくさん出てくる映画にしたかったので、撮影中もスタッフが生き物を見つけると教えてくれました。生き物の撮影に関しては、思ったようにいかないので大変でした。でも、カメラマンの月永さんが一生懸命撮影してくれたので、いいものになりました。

──大きな庭は、まさに森のようでしたね。

逗子にあった2軒の家の裏庭をくっつけて、1つの庭にしています。元々半分ぐらいは生い茂っていたんですが、美術部が造園と整理をして小宇宙のような世界観のある庭に仕上げてくれました。ほぼ家と庭だけの映画ですし、庭は守一さんにとってのすべてなので、病院や学校があるような街と変わらない広さを表現しました。本当に気持ちのいい場所だったので、樹木さんもずっと縁側にいましたね。

山﨑努と樹木希林との撮影を笑顔で振り返る沖田監督


2人の名優に物怖じしたと話す沖田監督だが、スタッフによると現場では作品へのこだわりが強く、山﨑と樹木にも躊躇せず演技について話し合っていたそう。山﨑と樹木は、そんな沖田監督の「良い意味での頑固さ」が楽しいと明かしていたとか。それを聞いた沖田監督は嬉しそうに照れ笑いを浮かべていた。

映画「モリのいる場所」は、5月19日(土)よりロードショー。

山根翼

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