連載第4回「大阪インバウンド最前線」あべのハルカスでインバウンドに人気はキラキラ夜景と光り物
関西ウォーカー
この連載は、大阪で激増するインバウンド(訪日外国人観光客)の最前線を人気施設や旅行・観光に詳しい業界関係者などキーパーソンに話を伺うインタビュー企画。第4回は近鉄不動産株式会社 アセット事業本部 ハルカス運営部 喜多 慎太郎さんに、ハルカスのインバウンドの現状や、インバウンドが増えて変わったこと、今後の施設づくりについて聞いた。
インバウンドの現状
――インバウンドの現状を教えてください。
ここ数年でインバウンド比率が急激に上がってきました。開業3周年を迎えた昨年の展望台の入場者数が約160万人で、そのうちの約2割がインバウンドです。
――どういうきっかけで昨年から増えたのでしょうか。
毎年冬から開催している夜間イベント、3Dプロジェクションマッピングや、通年行っている「光と音のショー」(現在休止中)というマッピングが海外の方に非常に好評です。そのあたりを評価いただいているのかなと思います。
――マッピングが人気というのは、アジアの方にですか。
先ほどお話しした「光と音のショー」をパンフレットにも載せていたのですが、それを見て問い合わせをいただくこともあります。海外でも非常に人気になっているようで「今日はやっているか?」という問い合わせがよくあり、展望台にそれ目的で来ている人も多いのかなと思います。海外の方々はイルミネーションやマッピング系に関心があるように感じています。
あとショップの光るグッズは海外の方々には好評です。売れ行きは飛びぬけているわけではありませんが、海外の方が好んで購入されることが非常に多いので、光るグッズを増やそうとしているところです。
――光るグッズとは具体的にどういうグッズですか。
現在販売しているのはあべのハルカスのシルエットがキラキラ光るオブジェです。新商品の開発も検討しており、コスト面も配慮しながら導入しています。
――他にお土産で売られているグッズはありますか。
ちりめんの和風のキティちゃんが人気です。着物を着ているところが日本ならではですね。これまであまりハルカスの関係ないものは取り扱っていなかったので、これは新しい取り組みです。
あともう一つ、551の蓬莱とコラボした商品も人気です。全体的な売上としてはそこまで大きくないのですが、やはりここでしか買えない大阪土産ということで、海外の方にも購入していただいていますね。
あとはたこ焼きなど大阪名物をモチーフにしたグッズが結構うけがいいです。定番だと記念メダルが人気で、売り上げ点数ですと今トップですね。
――梅田スカイビルでも、売れ筋はスカイビルの小さな模型のカプセルトイと伺いました。そういった人気のお土産ありますか?
カプセルトイやメダル、おみくじもやっています。リーズナブルで簡単に日本ならではのものが楽しめるので人気ですね。
ショップ以外だと飲食店。冬場におでんを販売していたんですけど、“おでんとはこういうものです”という英語も解説をちゃんと掲示して、解説しながら店頭に並べて販売していました。これが非常に海外の方にうけが良かったです。
――レストランの利用で、インバウンドならではというものはありますか。
カラフルなレインボーフルーツサンドですね。ドリンクのカクテル系もカラフルな物を用意しています。特にインバウンドだけに向けてやっているわけではありませんが、女性もしくはインバウンド向けにさまざまな商品を開発しています。
――ビールよりカクテルを飲まれるんですか。
海外の方がどれくらい買っているかという集計までは取れていませんが、ターゲットとしてインスタ映えや、インバウンドの方が写真を撮るのに好まれそうなものを用意しています。
外国人には夜景が人気
――展望台の話に戻りますが、昼と夜どちらの利用が多いですか。
海外の方は夜の方が圧倒的に多いです。インバウンドでの来場者のうち、7割ぐらいが夜間ですね。夜景を好むというのもありますし、夜間は大阪市内周辺の施設が閉まってしまうなかで、ハルカスの展望台は22時までやっているという点もあると思います。
さきほどのプロジェクションマッピングなどのイベントも含めて、夜にインバウンドが多いのはそういう理由ではないかと感じております。
――夜景で記念撮影などされるんですか。
この間、七夕のイベントで60階に浴衣や七夕の短冊を置いてフォトスポットを作ったのですが、みなさん浴衣を着て写真を撮っていました。写真は有料(1,500円)ですが、それでもやっぱり海外の方々は、「日本で浴衣を着て」というのが思い出になるようで好評でした。
インバウンド増加による変化
――インバウンドが増えたことによって施設で変化したことはありますか。
ショップやカフェでインバウンド向けの商品や飲食物を幅広く開発しているところですね。
施設の雰囲気としては、昨年度から国内の方だけでなく、インバウンドの方にも楽しんでいただけるような施設づくりを心がけてやっています。そのあたりが変化したところですね。
――新たに対応したサービスや、多言語対応などは何かありますか。
カウンターやサイン関係などを多言語対応にして、できるだけお客様が混乱しないようにしています。チケットカウンターでは、サイン関係だけでは対応しきれないお客様もいらっしゃるので、映像通訳サービスというものを導入しています。
タブレットを使って通訳オペレーターと直接話をして、解決していただくというものです。ハルカスでは英語はもちろん、中国、韓国語が話せるスタッフもいますが、そのスタッフが常時対応できるわけではないので、対応できないタイミングや言語の場合はこのサービスを用いて対応させていただいております。
――コスト面など、大変ではないですか。
そうですね。ただ、チケットカウンターで混乱してしまっては他のお客様に迷惑がかかってしまうので、そこはスムーズに対応できるように、ある程度コストをかけながらでもやっていかなければならないところかと思います。
――タブレットの通訳サービスは、何言語ぐらいの対応ができるんですか。
英語、中国語、韓国語、タイ語、ロシア語です。
――「エッジ・ザ・ハルカス」も海外の方は利用されますか。
多くの方にご利用いただいております。今までは営業時間が18時までだったので、割合的には少し少ないかなという印象でした。しかし、夜間営業を始めてから、インバウンドの割合も非常に多くなってきています。そういう意味では幅広く国内外の方々に楽しんでもらってますね。夜間営業をやらせてもらって良かったと思います。
これからの展望や具体的な展開は
――これからの展望や具体的な展開で考えられることはありますか。
具体的には申し上げにくいところはありますが、旅行客が増加していくと考えておりますので、その中で大阪の一名所として当施設を選んで頂けたらいいなと思っています。そういった意味で、いろいろなイベントや新しい商品開発をやっていけたらと思います。
――海外の団体さんは来ますか。
来られますが、ここ最近では団体旅行よりも個人で旅行されるFITのお客様が増えています。
――「エッジ・ザ・ハルカス」の夜間営業についてはどうですか。
「エッジ・ザ・ハルカス」についても4言語で同意書や注意事項、登ってからの手順などのサイン関係を作って掲出しています。できる限りお客様が混乱しないように、安全面は十分配慮して行っています。
――注意事項がうまく伝わっていないと困りますね。
そのあたりはインバウンドの方々にも十分配慮して、施設づくりをしているつもりです。
――海外向けのプロモーションはどうですか。
海外で発信力のあるインフルエンサー等を呼んで「エッジ・ザ・ハルカス」を体験してもらうなど、力を入れています。今後オリンピックや万博誘致もありますし、そういった意味でこれからも増えていってほしいですね。
――これからLCCも導入され、ビザも緩和される話になっているので、全体的にインバウンドが増えるのでしょうか。
そこであべのハルカスを選んで頂けるようなことを、常にやっていかないといけないと思っております。インバウンド受けしそうなイベントをやりつつ、国内の方々にも受けるようなイベントもやっていくように考えています。
インバウンドに寄りすぎない施設づくり
――海外の人が増えると国内の人は来なくなるといいますが。
難しいですね。できるだけインバウンドに寄りすぎない施設づくりが大事なのかなとは思います。イベントにしてもそうです。今やっているクールスライダーなどはインバウンドの方々も利用はされますけど、国内の方々が好まれるところもあります。イベントもファミリー向けにすると、国内の方も来られますので。年間を通してターゲットを絞りながらやっていくというのも一つなのかなと思っています。
――インバウンドが増えたことによって活性化したというか、新しい展開になっていってますね。
てんしば(天王寺公園エントランスエリア)ができたことによって、天王寺から新世界が点と点から面へと広がったように思います。通天閣、天王寺動物園、新世界といった流れができました。てんしばに大型バスの駐車場があるので、そこで降りて、てんしばや展望台に行ってくれるので、今までより天王寺に人が集まりやすくなっていると感じています。
(了)
※本企画は、情報誌「関⻄ウォーカー」2018年8/28発売号の大阪インバウンド特集「YOUは何しに大阪へ?」との連動企画です。
二木繁美
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