はーこのSTAGEプラスVol.59/「Kバレエは費用対効果がシビアな大阪に一番合う!」 熊川哲也が語る「ロミオとジュリエット」とバレエ

関西ウォーカー

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熊川哲也が太鼓判を押す若き才能たちが、その魅力を存分に発揮するKバレエの「ロミオとジュリエット」が、まもなくフェスティバルホールで上演される。

現代により伝わりやすく、観客を惹きつけて“魅せる”演出は、伝統芸術の継承に誇りを持って務める熊川の真骨頂だ。そのカリスマ性は踊らずとも健在であり、グランド新作「クレオパトラ」を成功させるなど、芸術監督としての才能にますます磨きがかかる。

熊川哲也が語る「ロミオとジュリエット」とバレエ


前回、「クレオパトラ」を即日完売させた熊川が、自らが見つけた才能を主役に据えたドラマティック・バレエの最高傑作「ロミオとジュリエット」。

「舞台芸術をみんなに見ていただきたいから、僕は一生懸命に語りたい。素晴らしい芸術を観た時に必ず生まれる優越感と裕福感と豊かな時間。だから今日は頑張って訴えに来ました」と来阪し、作品とバレエの魅力を伝える取材会に臨んだ。

「シェイクスピア、プロコフィエフという偉大な芸術家と一緒に仕事が出来るのは、今後も変わることがない、芸術家としての醍醐味です」(熊川)。

【作品について】

中世のヴェローナ。代々敵同士の名家、モンタギュー家の一人息子ロミオとキャピレット家の一人娘ジュリエットが一目ぼれして恋に落ちるが、手違いと勘違いによって自ら死へと向かう。シェイクスピアの世界的に有名な悲恋物語の最高傑作だ。

「障害ある恋って、どの時代、どの世界でも燃えるものじゃないですか。永遠のテーマ。人を永遠に共鳴させてくれる物語だと思う」。

英国ロイヤル・バレエ団に東洋人として初めて入団した熊川哲也。1980年代後半から1998年までの約10年間をシェイクスピアの国イギリスで過ごした。

「英国の地で演劇や歴史を学んだ僕のルーツが、一番色濃く出てるのが『ロミオとジュリエット』じゃないかと。演劇性が強い作品になっています」。

【制作への想い】

英国ロイヤル・バレエ団の演出家・振付家マクミランが作った『ロミオとジュリエット』を、10代からずっと踊って来た熊川。音楽も振付も身に染みついているため「正直、『ロミオとジュリエット』はやりたくなかった」と語る。初めて手掛けたのは、2009年だ。

「マクミラン先生から離れないとって、ずっと思ってた。超えられない壁なんですが、師匠として常に頭の片隅に置きながら制作しました。どこかに自分のアイディンティティを出さなきゃいけない、ベスト・オブ・ベストに行くにはどうすればいい、って。そういうプレッシャーの中で成長できたこともすごくある」。 

【主演ダンサーのこと】

「ダンサーたちは世代交代がうまく受けつがれ、今回若手2人を起用しました。スターはきっかけやいろんな要素が必要だから、スターになるかどうかはわからない。でも、僕が選んだダンサーたち。世界を創るダンサーたちだと、僕が認めているダンサーです」。担保は僕。この発言に熊川の自信が満ちる。

【写真を見る】にこやかに会見に応じる熊川哲也さん


●ジュリエット役:矢内千夏について

矢内千夏


「あ、いい才能見っけ!と思った。17歳でスクールに来て、これはもうプロだな、と。18歳でKバレエに入団して、19歳でソリストに昇格。『白鳥の湖』で大抜擢したんです。すごい女の色気が出せる。成熟してるかどうかわからないですけど、バレエに入ると悪魔に取り憑かれた感じの子なんじゃないかなと思う。うまいし、演じ方も素晴らしいのは確か。22歳の若さでプリンシパルソリスト(上から2番目)。今後は上に行く人です。本当にいい才能見つけた」。

●ロミオ役:堀内將平について

堀内將平


「ルーマニアでいいキャリアを積んで日本に帰って来て、日本の就職先としてKバレエを考えてくれた。フェミニンな、中性的な感じです」。

【見どころ】

バルコニーのシーンほか名シーンにも独自の演出を持ち込んだ全編オリジナルの振付、原作では端役として扱われているロザライン(ロミオの最初の想い人)を際立たせた独自の設定。プロコフィエフの音楽に敬意を表しながら、有名なシェイクスピアの悲恋の物語を、より一層ドラマチックに、疾走感あふれる展開で描き出す。さらに、観客をフェスティバルホールにいながらにして中世のヴェローナへと誘う、舞台美術と衣裳の素晴らしいこと! 新星ダンサーの将来性を目の当たりにする楽しさはもちろん、熊川のセンスでこだわり抜いた魅力的な舞台が繰り広げられる。

●音楽

「作品の見どころは、シェイクスピアとプロコフィエフ。音楽会に行っても、プロコフィエフの『ロミオとジュリエット』の全曲をやることって、ほとんど無いと思うんですよ。それを生のオーケストラで聴くことが出来るだけでもすごいのに、そこにダンサーたちの掛け合いや美しい踊りが付随されている。とにかく現代音楽スタート時代のプロコフィエフは狂気だよ、狂気。音楽がすごいです」。

●舞台美術と衣裳

「セットと衣裳の豪華絢爛さ。デザイナーがイギリスで大御所のヨランダ・ソナベントで、Kバレエの『白鳥の湖』、『くるみ割り人形』とか作ってくれてる。僕がすっごく仲よくて、大好きだったおばちゃん。石畳の階段が本物のように見えたりするヴェローナの街、キャピレットの家、ジュリエットのベッドルームなど、工夫されてます。日本のバレエ団でここまでのセットや衣裳に予算かけられるのは、まず新国立劇場でもないはず」。

●オリジナルの振付

「ストーリーは、変えるとさすがにシェイクスピアに怒られるからね。振付では、ステップの難しさじゃないかな。見ていると、息つく暇もないぐらいな踊りだと思いますよ。優雅な時は優雅な踊りだけどね。僕は現役時代に超絶技巧者だったから、テクニックがすごく好きで、音楽と勝負するぐらいのビートが好きだった。だから僕が振付するとステップはとても難しいと思う。後輩たちは踊りづらいと思うけど、習得させたいし、できるからこそKバレエに入れてるわけだから。ステップの難しさが1番かな」

10代の若い男女が出会い、命を落とすまでのたった1週間の物語。駆け抜ける1週間に、まっすぐな若さと愛がほとばしる。美しさ、切なさ、疾走感。演劇やバレエで良く知る舞台のイメージを超える、Kバレエならではのため息が出るような世界に酔いしれたい。

「古典は不動なもの。200年300年後、みんなが上演して、みんなが見る。だから僕はプロジェクションマッピングなんか、絶対使いたくない」(熊川)。

【生活の中でバレエをもっと楽しんで】

バレエは生きていくために必要がないものだけど、観た時に素晴らしい感受性を磨いて、なんて豊かな時間を過ごせてるのかってお客さんが思ってくれれば、俺はもっともっと劇場文化が育つと思うし、それを説いてバレエを浸透させて行きたいと思う。僕は伝道師だからね。映画と比べたらバレエは10倍だから、確かに高いけど、半年に1回。大阪には1年に1回しか来ないんで。ちょっとお金をためて、1年に1回、バレエはKバレエだけ観に来て。そしたら最高だと思うんだよな…って、独り言ですけどね(笑)」。

【大阪のお客さんのこと】

「大阪は、日本人ぽくない感じの土地だなと、ずっと思ってたんですね。大阪の人はラテンに近いかなって。20年間踊らせてもらいましたけど、感情表現が豊かなんで、こっちの気分が盛り上がりますよね。イエス、ノーって、きっぱり言う人も多いじゃないですか。大阪はアルゼンチンに似てるね。でもシビアではある。

大阪は費用対効果がまず頭にあるでしょ。払った金額に対して観たものはどう、みたいな(笑)。 費用対効果がシビアなんでKバレエは1番大阪に合ってると思います。なぜならば、費やしたお金がハンパないから」。

熊川さん、舞台を観たお客さんが「値打ちやわ~!」と言う。これ、大阪人の最高の褒め言葉って知ってます? 大阪人は、そこにどれだけお金を賭けたか、値打ちのわかる人種。予想以上のものを観せられて感動した時に発するひとこと。ブラヴォー!の大阪変化形です。

【フェスティバルホールについて】

 こんな素晴らしい劇場はなかなかない。すごい歴史があるとこだなぁと思いますね。古い昭和のニュアンスが残っていて、生き続ける魂をそこに感じつつ、新しく近代化されている。あぁ素晴らしいなと。大阪人は誇りに思うべきだね。これだけの劇場持ってるんだから、その劇場に観にいかないと」。

【Kバレエの今後は?】

「Kバレエがちゃんと成長して、公演し続けられれば。一歩一歩やっていきたい。いいダンサーがたくさんいるから、作品力で勝負したいなと思っています。本物で勝負していけば絶対伝わると僕は思っているんで。Kバレエに憧れてる、目がキラキラしてる子供たちもいっぱいいるから、踊らせてあげたい。そんな風に繋げていきたいね」。

来年3月、グランド新作として“和物”に挑戦する!?

「完成できるかどうか、難しい。和物はハレンチ出来ない。足を見せられない、上げられない、跳べない、リフトもダメ…何をどうやったらいいのか。難しいけど頑張らないと」。

STAGE

熊川哲也 Kバレエ カンパニー「ロミオとジュリエット」

「ロミオとジュリエット」Toru-Hiraiwa


チケット発売中

日時:10/20(土)14:00

会場:フェスティバルホール

演出・振付:熊川哲也(Kバレエ カンパニー 芸術監督)

音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

舞台美術・衣裳デザイン:ヨランダ・ソナベンド

出演:矢内千夏(ジュリエット)、堀内將平(ロミオ)

酒匂麗(マキューシオ)、奥田祥智(ベンヴォーリオ)、杉野 慧(ティボルト)、

戸田梨紗子(ロザライン)、西口直弥(パリス) ほかKバレエ カンパニー

料金:S席16000円、A席13000円、B席10000円、C席8000、BOX席20000円、バルコニーBOX(2席セット)32000円

問い合わせ:フェスティバルホールチケットセンター(TEL:06・6231・2221)

HP:https://www.festivalhall.jp

高橋晴代・はーこ

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