【シン・ゴジラ連載Vol.10】「シン・ゴジラ」の気になる男女キャスト

東京ウォーカー

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ついに興行収入70億円を突破した「シン・ゴジラ」。驚天動地の災害シミュレーションとしての評価と拮抗するほどに好評なのが個性的なキャラクターの存在。今回はそんなキャラクターの魅力に迫ってみた。

「シン・ゴジラ」の魅力と「極私的」楽しみ方


「シン・ゴジラ」は上映開始早々に心臓をムンズと握られ、グイとわしづかみにされたと気づいた時はすでに遅く、ギリギリとする感情が続きながらクライマックスの「ヤシオリ作戦」で興奮のるつぼに叩き込まれ、茫然となったままエンドロールを迎える映画である。多くの見せ場と魅力的なキャストのおかげで、10人にお気に入りの要素を訊けば10人それぞれの返事が返ってくることだろう。そんなわけで「極私的」を冠したタイトルに則り、個人的にお気に入りの男女キャストについて記していきたい。私は好きに書く!

そこにオマージュはあるのか?池田戦車第1中隊長


映画「シン・ゴジラ」よりTM&(C)TOHO CO., LTD.


序盤で最大の見せ場となる、タバ作戦。予備知識もなく観た自分は、10(ヒトマル)式戦車の乗員にかぶさるテロップ「池田戦車第1中隊長」に驚愕と疑問と落涙を禁じ得なかった。しばらく戦史について述べるが(どうか読み通してください)、「戦車」「池田」という単語に、ほどほどに太平洋戦争を知る者が連想するのは日本陸軍の戦車第11連隊長、池田末男大佐である。初耳の方、太平洋戦争が終わった昭和20年8月15日、千島列島の占守島で戦車部隊のリーダーだった、という理解でOKです。

戦争の終わった占守島の将兵は帰国できたはずだが、千島列島ひいては北海道を占領下に置きたいソ連は、終戦から3日後の18日、数千人の規模で島に上陸してきた。「火事場泥棒」とのルビをつけたい所業に対し、現地の最高指揮官・堤第九一師団長は池田連隊長に「敵」を撃滅するよう下令する。

これを受けて池田連隊長は、部下たちに「上陸軍をひとり残らず海に叩き落とすまで奮闘せよ!」と激烈な命令を下し、全車輌の集結を待たずして行動を開始した。濃霧を突進する戦車隊は池田連隊長の「これより敵中に突入せんとする。祖国の弥栄(いやさか。「繁栄」「ますます栄える」という意味)を祈る」との無線に続きソ連兵の蹂躙を開始、火砲や歩兵部隊も呼応して文字通り水際で敵を撃滅した。

ソ連軍の死傷者は約3千名と言われており、20日夜半に停戦交渉が成立した。我が方も池田連隊長をはじめ約600名が戦死したものの、ソ連は池田戦車隊らの奮闘に慎重となり、究極の野望たる北海道侵攻を諦めたのである。

長くなってごめんなさい。話を「シン・ゴジラ」に戻すので、タバ作戦を思い出していただきたい。作戦は失敗に終わったものの、巨大不明生物の進撃速度を低下させるという、わずかではあるが有効打を放ったのは戦車隊であり、その先鋒は「池田」戦車第「1」中隊長であった。ここで疑問を唱えざるを得ない。池田姓と、(一部の)数字の合致は偶然か?

以下はまさに極私的な考えだが、「敵に一矢を報いる戦車隊リーダー」の姓を定める場合、「池田」はこれまでに記した歴史的事実からも、このうえなく好適ではないだろうか。

さらに池田戦車第1中隊長には生還を思わせる「全車撃ち終わり!」というセリフもあり、北辺の防波堤として戦死なさった池田戦車第11連隊長への心からの敬意に思えてならないのだ。ついでながら、列を成してゴジラと対峙する戦車隊は「ニッポン対ゴジラ」を具現化したようで、自分はここで泣いた。

もうひとつ、酒席レベルでの話として、かつて雑誌「B-CLUB」(の末席にいました)で架空戦記「紺碧の艦隊」を撮りたい旨の発言をしていた樋口真嗣監督もいる現場ゆえ、池田姓はそこから…とはさすがに考え過ぎか。

とはいえ、妄想、空想も突き詰めると新たな鑑賞の楽しみが見出せる…といいなと思い、ミリタリー方面でも仕事をする自分から池田戦車第1中隊長を推しておく。

可愛い「同類」ヒロイン・尾頭ヒロミ


【写真を見る】映画「シン・ゴジラ」よりTM&(C)TOHO CO., LTD.


さぁ続いては、お気に入りの女性キャストだ。自分は初登場の時点から環境省自然環境局野生生物課課長補佐(のち代理)の尾頭ヒロミ(以下、尾頭さん。演・市川実日子)一択!もはや「尾頭さん」という新ムーブメント、新ジャンルすら生んでいる彼女の魅力は、どこにあるのだろうか?

好き過ぎて「わからない」というのが正直なところだが、個人的に述べるなら「オタクっぽいところ」に尽きる。一目惚れとなった初登場時、尾頭さんは端正ながら化粧っ気のない横顔を見せつつ例のキレッキレな早口で巨大不明生物の所見を述べる。怒られそうだが、ここで「あ、おれと同じオタクな匂いがするな」と勝手に思って以来、彼女は今なお1日にそれなりの時間を画像検索に費やす最強ヒロインとなったのだ。

それとスーツ姿。オタクを知る皆さん、「腐」でなくてもオタクなご婦人ってあんな雰囲気まとっていません?特に白いボウタイブラウスと重ねたスーツ姿、平日のイベント会場やそのスジのショップでよく見るぞ。スチール写真でも見られる膝小僧のアザは、どんな演出意図だったのだろう?ついでに「推し松は誰だろう?」「声優さんならマモさんあたり?」「コミケより『博物ふぇすてぃばる!』行ってそうだな」ってことも初登場で想像した。

群像劇でもある「シン・ゴジラ」ゆえ、瞬間的なインパクトを残して退場するものと思いきや、以後もみんな大好き巨災対の一員として随所で登場、「目を合わせないけれど、言うべきことは言う」「ちょっととっつきにくそう」「でも可愛い」「だからどんな仕草も萌える」「どうせならもっといろんなことを知りたい」という魅力を、これでもかと振りまいてくれた尾頭さん。シーンを重ねるごとにだんだんと乱れてくる髪、名セリフ「少し臭います」の際のほつれた毛はもちろん、ボブヘアから飛び出すかたちのよい耳など、隠しきれない「女性」にもクラクラする。もう最初の鑑賞時は、ゴジラの行く末より次の尾頭さんの出番が気になる始末(汗)。

立川に移ってからは防災服姿となるが、あの「袖を通しただけで服に着られている感」「裾をぎゅっとつかんだ姿」の可愛らしさはもはや凶器のレベル。メンバーに呼びかける時の「あの!」も、人づきあいに慣れてないけれど情動に突き動かされた感じが萌え。そんなこんなで十人十色の「お気に入りポイント」があると思うが、細かいシーンではエレベーター内の少しおびえた表情が、本当に、もう…。

それでいて「一匹狼」の尾頭さんからは、オタクとしての同類の匂い、ちょっかい出してもっと彼女を知りたい気持ち、触れなば折れん儚さ、それとは正反対の芯の強さ、ブレない探求心も漂う。ラストの笑顔は言うにおよばず「ヤバい」という砕けた口調もたまんないよ!

自分にとって「ゴジラ」シリーズのベストキャストは「特殊戦略作戦室の黒木です」だったが、新たに尾頭さんという汲めども尽きない魅力にあふれた、どうしようもないほど好きなヒロインが加わった。庵野監督のめざした「おもしろい日本映画」は、尾頭さんひとりで必要にして十分な思いだ。願わくば、このコーナーでも他の書き手の方による尾頭さんの魅力を読んでみたい。終わります。

【松田孝宏(まつだたかひろ)●フリー編集者兼ライター。戦記やエンタメジャンルを扱う。最近の仕事は「文豪ストレイドッグス 公式ガイドブック 開化録」(KADOKAWA、執筆)、「【ビジュアル解析】戦艦「大和」」(宝島社、編集・執筆)などがある】

編集部

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