「生まれる森」で第130回芥川賞候補となった島本理生。おしくも受賞こそ逃したが、文壇に新風を吹き込む若手のなかでも注目株の作家だ。小学校時代から小説を書き始め、03年「リトル・バイ・リトル」で高校生として初の芥川賞ノミネート、更に野間文芸新人賞を最年少受賞。着々と作家としての実績を重ねている彼女は現在弱冠21歳、現役の大学2年生だ。
初の書き下ろし長編となる本作「ナラタージュ」は、主人公である大学生・泉の、高校時代の恩師・葉山への純粋かつ激しい思いをつづった本格恋愛小説となった。
「『生まれる森』を書き終えた後、満足感よりももっといろいろ書きたい気持ちが出てきたんです。あれは恋愛が終った後の話で、苦しいところからいかに出るかっていう再生を目指したんですけれども、今回は苦しいところから出ていくのではなく、苦しいことと一緒に時が流れて生きていく、『生まれる森』の一歩先を書きたいな、というところから始まったんです」
若者の繊細な感情、心の痛みをこまやかに掬(すく)い取り、同世代の若者の支持を得ている島本作品。そこに共通して流れているものは?
「今回の主人公は人に強く訴えかけたり行動したりするんですけど、そこには誰かを無理やり自分のものにしようとしたり、誰かを不幸にしようとしたり、といった意図や感情はありません。わたし自身が人と人との距離感を描くうえで、読んでいて気持ちのいいものを書きたいなという意識があるので、それはどの作品にも共通していることだと思いますね」
事前の資料準備、下調べから構成の練り直しと、かつてないほどの時間と労力を費やした本作品。「深く入り込んでいる時は、書くのはすごく楽しいです」と、執筆の日々を笑顔で振り返る。
「読者の人には、読んでいる間は作品の世界にドップリとつかってもらいたいですね。恋愛って、人と自分とが深く共鳴したり、反発したり、人間関係の中で特に深いものだと思うから。それを感じてもらえたら一番うれしいです」
