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2008.10.4(土)更新
【秘祭!奇祭!映画祭!! 全国映画祭めぐりツアーズvol.9
アジアフォーカス・福岡国際映画祭編】(後編)
映画祭ディレクターが語るローカルならではの苦労と喜び
そして福岡市は“映画”を通してアジア大陸と地続きに!
【秘祭!奇祭!映画祭!! 全国映画祭めぐりツアーズvol.9アジアフォーカス・福岡国際映画祭編】(後編)映画祭ディレクターが語るローカルならではの苦労と喜びそして福岡市は“映画”を通してアジア大陸と地続きに!
タイの大ヒット映画「サイアム・スクエア」からチューキアット・サックウィーラクン監督(写真左)、マイクを片手に熱唱する主演のウィチャウィシット・ヒランヤウォンクン(愛称:ピーチくん)、プロデューサーのスカンヤー・ウォンサターバット氏。ボーイズLOVEを描いた今までにないタイ映画だが、会場で「1曲、歌って!」と観客から頼まれ、ピーチくんがケミストリーの曲を日本語で歌い出した。東京国際映画祭などでは、ちょっとお目にかかれない光景では?
【秘祭!奇祭!映画祭!! 全国映画祭めぐりツアーズvol.9アジアフォーカス・福岡国際映画祭編】(後編)映画祭ディレクターが語るローカルならではの苦労と喜びそして福岡市は“映画”を通してアジア大陸と地続きに!
チャ・テヒョン、ハ・ジウォン主演の韓国映画「パボ」からは、キム・ジョングォン監督がティーチインに参加。「韓国では2000年以降、年間100本もの映画が製作されており、公開が遅れたり、お蔵入りする作品が多いんです。この作品も撮影終了から公開まで時間がかかりましたが、『公開が遅れた作品の中では最も出来がいい』と評価されました」と語った。初めは表情の固かったジョングォン監督だが、「楽しみにしていた作品。ジウォンさんの熱演ぶりがよかった」などファンの声を聞き、次第に笑顔に変わっていった
【秘祭!奇祭!映画祭!! 全国映画祭めぐりツアーズvol.9アジアフォーカス・福岡国際映画祭編】(後編)映画祭ディレクターが語るローカルならではの苦労と喜びそして福岡市は“映画”を通してアジア大陸と地続きに!
ティーチイン終了後、ファンからのサインに応えるジョングォン監督。「パボ」の公開を待っていたチャ・テヒョン、ハ・ジウォンのファンは少なくなく、東京から駆け付けてきた観客も。アジアフォーカスがブームを先取りした韓流映画は、やはり今も根強い人気がある。ジョングォン監督の後ろには来場ゲストたちがメッセージやイラストを書き込んだサインポールが見える
【秘祭!奇祭!映画祭!! 全国映画祭めぐりツアーズvol.9アジアフォーカス・福岡国際映画祭編】(後編)映画祭ディレクターが語るローカルならではの苦労と喜びそして福岡市は“映画”を通してアジア大陸と地続きに!
コンペ部門のないアジアフォーカスにおいて、唯一の賞が“福岡観客賞”。福岡の目の肥えた映画ファンたちが投票で選んだ作品は、パキスタン映画「神に誓って」。9.11以降の揺れ動くイスラム教徒の心情を捉えた野心作。左から映画祭ディレクターの梁木靖弘氏、「神に誓って」のショエーブ・マンスール監督、映画祭実行委員会会長の新藤恒男氏。「パキスタンでは公開前には『興行的に難しい作品』と言われましたが、国内で成功し、さらに海外で賞をもらえるとは」とマンスール監督は驚きのコメント
【秘祭!奇祭!映画祭!! 全国映画祭めぐりツアーズvol.9アジアフォーカス・福岡国際映画祭編】(後編)映画祭ディレクターが語るローカルならではの苦労と喜びそして福岡市は“映画”を通してアジア大陸と地続きに!
映画祭の会場となった天神ソラリアのすぐ近くには、井上陽水、チューリップ、甲斐バンド、海援隊、長渕剛らを輩出した伝説のライブ喫茶「照和」があった! この店がなかったら、武田鉄矢も人気俳優を次々と生み出した「3年B組金八先生」(TBS系)も違ったものになっていたに違いない。上映の合間に、美味しい一杯立てのコーヒー(400円)をいただきました
【アジアフォーカス・福岡国際映画祭】
1989年、福岡市が市制100周年を記念して「アジア太平洋博覧会」を開催。翌90年から、これをさらに発展させた「アジアマンス」がスタート。その主要事業のひとつとして、91年より「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」が始まった。毎年上映される作品のほとんどは日本初公開で、県外からの来場者も多い。優れたアジア映画を紹介するとともに、市民レベルでの文化交流、国際交流を通し、アジアに対する理解を深めることを主旨としている。無料託児サービス、視覚・聴覚障害者と健常者が一緒に映画を楽しめるバリアフリー上映会などもある。第18回を迎えた今年は9月12日〜21日に開催され、アジア16か国・地域28作品を上映、合計1万9610人(本映画祭1万4379人、協賛企画5231人)を動員した。主催:アジアフォーカス・福岡国際映画祭実行委員会、福岡市
>> 公式サイト
>> アジアフォーカス・福岡国際映画祭レポート前編
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世界を巡る梁木ディレクターによる
“本当に面白いアジア映画”の探し方


 第18回アジアフォーカス・福岡国際映画祭では、イラン映画「すずめの唄」(2007)の他、タイで爆発的なヒットを記録した青春ドラマ「サイアム・スクエア」(2007)、「猟奇的な彼女」(2001)のチャ・テヒョン主演の韓国映画「パボ」(2008)、キルギス・カザフスタン映画「盗まれた花嫁」(2007)などの日本初上映作品を鑑賞した。
「サイアム・スクエア」はアクションやホラーの多いタイ映画の中で、珍しく少年愛を描いた意欲作。阪本順治監督の「闇の子供たち」(2008)がタイの映画祭で上映中止になるなど、まだまだ検閲の厳しいタイ映画界だが、タイの映画ファンも従来の型にはまった娯楽作品では飽き足らなくなっていることが伺えた。「盗まれた花嫁」はキルギスでは“略奪婚”という伝統が今もあることに驚いた。観客賞を受賞したパキスタン映画「神に誓って」(2007)を含め、アジア各国の“今”が伝わってくるビビッドなラインナップだった。

 そんなアジアの最新映画23本を選定した映画祭ディレクターである梁木靖弘氏が時間をつくってくれるとのことで、ソラリアホテル内にある映画祭事務局にお邪魔した。
 アジアフォーカス映画祭は、第1回〜第16回まではアジア映画に精通している映画評論家で、日本映画学校の校長である佐藤忠男氏が映画祭ディレクターを務めていたが、第17回から福岡在住の映画・演劇評論家であり九州大谷短期大学教授である梁木氏が2代目映画祭ディレクターに就任している。

梁木「地方の映画祭ですから、待っていても映画は集まりません。たまに売り込まれる映画もありますが、ダメな作品が多いんです(苦笑)。やはり自分で、ひとつひとつ探して観てこないと素晴らしい映画には出会えませんね。人気の高い韓国の釜山映画祭やインドのケーララ映画祭、それに欧州でアジア映画を扱うベルリン映画祭かロッテルダム映画祭には行くようにしています。もちろん、東京国際映画祭や東京フィルメックスにも行きます。東京では東京国際映画祭の“アジアの風”、フィルメックスと2つの映画祭でアジア映画を観ることができますが、アジアフォーカスでは“アジアの風”出品作品のような芸術性、フィルメックスのような社会性のどちらの面も持ち合わせた作品を選ぶようにしています。両面を兼ね揃えた作品を集めるのは至難の業ですよ(苦笑)。でもね、『予算の都合もあるし、これでいいや』という考えで作品を選ぶと、初めてアジア映画を観た人は『なんだ、アジア映画ってつまんないや』と思ってしまう。作品選びには妥協しないようにしているんです」

 作品を選ぶ上で、「この映画は日本人にウケそう」といったことは考えないそうだ。
梁木「最近のハリウッド映画がつまらなくなったのは、海外のマーケティングを意識しすぎている点があるんじゃないでしょうか。一時期は勢いがあり面白かった韓流映画も、日本のマーケットを意識して似たような作品が溢れ、頭打ちになってしまった。やはり本当に面白い映画というのは、製作されたその国の社会情勢や国民の心情、文化をリアルに反映させ、その国の人たちから愛されている作品だと思うんです。タイの映画史を変えたと言われる『サイアム・スクエア』もそうです。今年の観客賞を受賞した『神に誓って』も、まさにパキスタンの今を伝える作品。よくぞ、福岡市民はこの映画を観客賞に選んでくれたな、と作品を選出したボクもうれしく思っているんです(笑)」
コンペも見本市もない地方の映画祭・
アジアフォーカスが誇れるものとは?


 福岡市とは距離的にも開催日程的にも近い釜山映画祭(10月)は、アジアで一番人気の映画祭と言われるほど活況を呈している。国の支援を受けている釜山映画祭は7人いるプログラム・ディレクターが世界中の映画祭を飛び回っており、話題性や規模の面ではアジアフォーカスは残念ながらかなわない。「今年も、早くから目を付けていた作品を釜山に持っていかれて」と梁木氏は苦笑するが、そんなアジアフォーカスが大事にしているのが、ゲストに対するホスピタリティ。よそ者を歓迎し、楽しませることに喜びを見出す博多っ子の気風でもある。

梁木「ありがたいことに、『新作を撮ったら、また福岡に来たい』と言ってくれる監督が多いんです。歓迎パーティーが終わった後も、監督たちはボランティア・スタッフの案内で夜の街に繰り出すみたいですね。中でもイランのマジド・マジディ監督は、今年で7回目の参加。自分の作品を日本で初めて上映したアジアフォーカスをとても気に入ってくれて、映画会社が『日本でのプレミア上映は東京で』と言っているのに、『最初は福岡で』と強く主張しているんです。今回は奥さんとお子さんも連れて、バケーションも兼ねての来日だったようで、すっかりアジアフォーカスの常連です。アジアの新興国の映画や新人監督の作品も積極的に紹介していますが、こういった福岡を愛してくれる監督たちとの付き合いも大切にしていきたいですね」

 梁木ディレクターいわく、「地方の映画祭としての課題はいろいろありますが、一番はより多くの若い人たちに、アジア映画の面白さを知ってもらいたいということですね。たくさんの若者が集う釜山映画祭の活気に少しでも近づけるよう、娯楽作品も盛り込んだバラエティーに富んだプログラムを組んでいこうと思います」とのことだ。

 作品の優劣を決めるコンペ部門がないため観客賞以外はニュース性のある賞はなく、またマーケット部門(見本市)がないため業界人が詰め掛ける派手な映画祭ではないが、アジアと日本の距離を地方から縮めていく地道な“文化交流”の場として今後も末永く続いて欲しい。いつかマジディ監督をじっくりインタビューできる機会をつくりたいと思いながら、晩夏の名残を漂わせる福岡を後にした。

(取材・文/ライター長野辰次)
※ホークスの王監督、お疲れさまでした



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