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2008.6.27(金)更新
【単独インタビュー】
「歩いても 歩いても」で家族の夏の1日を描いた
是枝裕和監督が語る誕生裏話と日常のリアル
【単独インタビュー】「歩いても 歩いても」で家族の夏の1日を描いた是枝裕和監督が語る誕生裏話と日常のリアル
最新作「歩いても 歩いても」を引っさげ名古屋にやってきた是枝裕和監督は、「映画で描いたのはとある夏の1日ですけど、横山家の人たちが今もそこに暮らしてるように感じてもらえる映画になったらいいなぁと思いながら作りました」と語ってくれた
【単独インタビュー】「歩いても 歩いても」で家族の夏の1日を描いた是枝裕和監督が語る誕生裏話と日常のリアル
兄の15周忌のため、再婚した妻(夏川結衣)とその連れ子を伴って帰郷した良多(阿部寛)。なごやかに両親、姉(YOU)の家族と接する彼だったが、その胸中には、跡継ぎを期待していた兄と自分を比べていた父(原田芳雄)へのコンプレックスがくすぶっていた
【単独インタビュー】「歩いても 歩いても」で家族の夏の1日を描いた是枝裕和監督が語る誕生裏話と日常のリアル
ふたりの子どもたち&旦那と一緒に帰省した長女ちなみを演じるのはYOU。監督とは「誰も知らない」(2004)に引き続いてのタッグとなる
【単独インタビュー】「歩いても 歩いても」で家族の夏の1日を描いた是枝裕和監督が語る誕生裏話と日常のリアル
台所で家族一緒に料理のお手伝いをする良多の一家。ここにもささやかなドラマがあふれているのだ
【単独インタビュー】「歩いても 歩いても」で家族の夏の1日を描いた是枝裕和監督が語る誕生裏話と日常のリアル
仲良しな母娘を演じた樹木希林(母・とし子役)とYOU。「クランクイン前の本読みの段階ですでに息ピッタリ。本物の母娘みたいだった」と監督談
【単独インタビュー】「歩いても 歩いても」で家族の夏の1日を描いた是枝裕和監督が語る誕生裏話と日常のリアル
初めての良多の実家の訪問に、緊張しっぱなしのバツイチ子持ちの妻・ゆかり(夏川結衣)。監督曰く「ふたりのシーンを増やした」のだそう
【単独インタビュー】「歩いても 歩いても」で家族の夏の1日を描いた是枝裕和監督が語る誕生裏話と日常のリアル
医者だった父を演じるのは実力派の原田芳雄。ある事情で海を避けていた彼が海に行くシーンで良多は、父親の老いをしみじみと実感するのだった
【単独インタビュー】「歩いても 歩いても」で家族の夏の1日を描いた是枝裕和監督が語る誕生裏話と日常のリアル
監督の視線の先にあるものは……、母親への思いやキャスティング裏話から監督業にいたるまで、たっぷり語ってくれた監督。この日も明け方まで「歩いても 歩いても」の原作執筆に追われていたのだとか。そんな監督の元気の源は“赤福”(そうあの話題のです)。おいしそうにほうばっておりました
(C)]2008「歩いても 歩いても」製作委員会

【是枝裕和監督 プロフィール】
1962年東京都生まれ。制作会社テレビマンユニオンに参加し、91年のギャラクシー賞優秀作品賞を受賞した「しかし…」、ATP賞優秀賞受賞作「もう一つの教育 伊那小学校春組の記録」(91)、放送文化基金賞受賞作「記憶が失われた時…」(’96)など数々のテレビドキュメンタリーを演出。劇場映画デビュー作となる「幻の光」(’95)はベネチア映画祭金のオゼッラ賞を受賞する。「ワンダフルライフ」(’99)、「ディスタンス」(2001)とキャリアを重ね、2004年の「誰も知らない」では、カンヌ映画祭で主演の柳楽優弥が最優秀主演男優賞を受賞。前作「花よりもなほ」(2006)では時代劇に挑戦した。一方、プロデューサーとして伊勢谷友介監督デビュー作「カクト」(2003)、西川美和監督の「蛇イチゴ」(2003)、「ゆれる」(2006)を手掛けている

【STAFF&CAST】
監督・原案・脚本・編集:是枝裕和 企画:安田匡裕 音楽:ゴンチチ 出演:阿部寛 夏川結衣 YOU 高橋和也 田中祥平 野本ほたる 林凌雅 寺島進 加藤治子 樹木希林 原田芳雄(2007シネカノン)114分
■6月28日(土)よりシネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズCQN、新宿武蔵野館、7月19日(土)より名演小劇場ほか全国順次ロードショー
>> 公式サイト
予告編[歩いても 歩いても]
完成披露舞台挨拶(5分16秒) [歩いても 歩いても]
>> 「歩いても 歩いても」完成披露舞台挨拶
>> 「歩いても 歩いても」阿部寛インタビュー
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久々に家族が集まった横山家の夏の1日
ありふれた日常にみえるリアルな風景とは


 夏の終わり、海の見える街で静かに暮らす老夫婦のもとに、娘と息子が家族と一緒に帰ってきた。今日は、15年前に事故で亡くなった長男の命日。久々ににぎやかになった横山家では、母がはりきって手料理をこしらえている。「誰も知らない」(2004)、「花よりもなほ」(2006)の是枝裕和監督が撮りあげた最新作「歩いても 歩いても」は、そんな家族のとある夏の1日を描いたホーム・ドラマだ。特別なことは何も起こらないけど、家族にだけ見せる表情と家族ゆえにはってしまう虚勢が、次第に解き明かされていく。笑い声の裏にひそむ喪失の悲しみ、辛辣な言葉、身勝手さ、両親の老い、そして受け継がれるもの……、日常の機微を丁寧に掬い撮った是枝裕和監督に、本作の誕生裏話から監督業についてまでたっぷりと語ってもらった。
「今まで作った中でいちばん自分の匂いが出ている映画になったんじゃないかな」

「今まで作った中でいちばん自分の匂いが出ている映画になったんじゃないかな」と振り返る是枝裕和監督。本作は自身の母親の死が出発点なのだとか。
「母が倒れてから亡くなるまで、足しげく病院に通っていたんですね。その時交わした母との会話や、思い出したことがたくさんあったので、亡くなったあとに、それをひとつにまとめたいなぁという気持ちから書き始めたのがこの脚本だったんですよ。だから主人公の設定も、母親との関係も、父親との距離感も、自分の状況に似ているんですよね。ちょっと性格のきつい姉がいるというのもね(笑)。だから第一稿はすんなり書けました。8日間で書きあげたから今まででいちばん早いんじゃないかな」

 そんな監督の分身?とも言える主人公・横山良多役を演じたのは阿部寛。現在失業中。義理の息子ともなかなかなじめない男を等身大の魅力で演じきっている。このキャスティング。実は監督の直感によるものだったのだそう。
「僕と同世代の男で、こういう小さくて情けなぁ〜い男を嘘なくやれる40代って誰だろう? と考えた時に、たまたまテレビのバラエティ番組に阿部さんが出ていたんです。しかも阿部さんチンパンジーにやり込められていたんですね。身体の上に乗っかられるわ、ルームランナーのスピードボタンを勝手に押されて早くされてるわで、それを見て『阿倍寛しかいないなぁ』と思って翌日にはオファーの連絡をしていましたね(笑)」

 クランクインの2週間前に行われた本読み時には、既に横山家の雰囲気が出来上がっていたという。時折、爆笑が起き、和やかな時間が流れていく。そして本読みが終わり……、
「『気になる箇所があるのでちょっといいですか?』と阿部さんが言うので、いくつか台詞が気になったのかなと思ってたら。『1ページ目からなんですけど……』と僕が相手役をしながら全部通しで本読みをしたんです。良多の気持ちについての確認ができたのですごく良かったんですけど。まさか全部やるとは思わなかった(笑)」
「料理を作る音に触発されて思い出が蘇ったら
いいなと思って」


 使いこまれた台所、タイルの剥がれた風呂場、庭が見える開放感に満ちた居間。劇中で映し出されるのは、家の中で繰り広げられる家族の日常の風景だ。よりリアルな空気を焼きつけるため、現場で台本が変わることもあったそう。
「8割ぐらいが家の中での撮影だったから、最初は正直不安でした。でも撮り始めてみると、家の中っていろんなことができるんだよね。あれだけ家族が集まれば、場所や人の組み合わせによって限りなくドラマがあるし、樹木希林さんが演じたとし子(良多の母)みたいに、その人が居るところと居ないところで言ってることが違ったりもする。こんなに家族の話って面白いのかと感じたし、役者さんたちの芝居を見たら不安も吹き飛びましたね。で、現場で思いつくこともあるから、直前に台本を変えたところもあって。夏川結衣さん(良多の妻・ゆかり役)からは、2度目の時に『今度やったら絶交!』って言われちゃいました」

 リアルといえば、久々に集まった子どもたちに得意料理をふるまおうと腕をふるうとし子の姿と料理が印象的だ。昼の食卓に並ぶ、大根のきんぴらや豚の角煮も、とうもろこしのかき揚げも、枝豆とみょうがの混ぜ寿司もいたってシンプルなのに、食欲のツボを刺激する。そこにも、監督の思いが込められている。
「とうもろこしのかき揚げはうちのおふくろがよく作ってくれてたんですけど、僕にとってすごく懐かしいものなんですよ。みょうがもね、実はすごく嫌いだったんだけど、母親が大好きだったから僕に食べさせようとして。実家に帰って寝ていると、台所でみょうがを刻み始めるんです。そうすると音が違うから『あ!また、みょうが刻み始めた!!』と思ってすごく嫌だったんだけど……。だから、みょうがを刻む音も僕にとっては、実家の台所のイメージと直結している特別な音なんですね。きっと、みなさんの中にも特別な台所の音があると思うので、映画を観ることで料理を作る音に触発されて、思い出が蘇ってくるといいなと思いながら、ポーンと揚がるとうもろこしのかき揚げの音や枝豆のザッザッと湯を切る音を一生懸命拾ってました」
 余談ではあるが阿部寛の母親の味は鳥のから揚げなんだとか。彼の長身の裏に母の味あり! 実にいい話である。
「『踊る大捜査線』の監督のオファーがきたら?
もちろんやりますよ(笑)」


 「歩いても 歩いても」は老夫婦とその子どもたちの家族を描いたホーム・ドラマだ。そこで、監督に好きなホーム・ドラマを挙げてもらった。
「『阿修羅のごとく』(’79/NHK)かな。脚本家・向田邦子さんの描く女性は素晴らしくリアルだし、同性に対して一切甘えがない。勉強になるし、面白いし、笑わせようとしてないんだけど笑える。人間を見る目が非常に成熟してるから、人って怖いなぁと思わせる部分もたくさんあるんだよね」

 是枝監督といえば、監督業に加え、脚本から編集までひとりで行う数少ない監督。大変だとは感じないのだろうか?
「僕は、台詞やシチュエーションを現場で変えるんですね。現場でこういうシーンがやりたいと思った時に、『いやぁ原作にないからなあ』って言われるのも『脚本家の先生がこう変えたくないって言ってます』みたいなのも嫌なんですよ。そんな経験はないんですけど(笑)。やりたいことができたほうがいいので、やらせてもらえるうちはやりたいなと思ってます。
 脚本書いている時もすごく楽しいし、撮影現場に入って、脚本を乗り越える芝居が役者から出てきた時には興奮しますよね。編集しながら、現場で見えてなかったものが見えた時もすごく嬉しい。どの作業にも面白さがある、だから全部やりたいんです。面白くなければきっと人に任せてます。
 でも、体力的にはしんどいんですよ。でも半分趣味だからなぁ、やっぱり楽しいんです(笑)」

 1作、1作、様々なことに挑戦している監督だが、こんな興味も。
「面白そうと思える作品に出会ったらオファーものでももちろんやります。でも、今は自分のやりたいものをやるのでいっぱいいっぱいだから、それを押しのけてまでやりたいと思うものがない。ただそれだけなんですよ。『踊る大捜査線』シリーズの監督のオファーとかが来たらやると思います(笑)」

 そう笑顔で語る監督が大事にしていること。それは映画を特別なものと思わないということ。
「デビュー作『幻の光』(’95)を撮った時に、映画だからと今まで自分が撮ってきたテレビ的手法とは違う形でやったんですね。けど『ワンダフルライフ』(’99)では、映画だと特別視せず、テレビでやってきた時に感じた面白いと思うことをやったら、そのほうが面白かった。だから、映画はこうあるべき、こういうものだと決めつけないようにしてる。そのほうが結果的に楽しめるから」

「このキャストとスタッフでこうした形になったのは素晴らしい巡りあわせだったんだと思う」と振り返る是枝裕和監督最新作「歩いても 歩いても」は、阿部寛、夏川結衣、YOU、樹木希林、原田芳雄、加藤治子ら実力派たちの競演が楽しめる1作に仕上がった。ぜひ、映画館で是枝ワールドを堪能して欲しい。

(取材・文/ライター 大西愛)
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