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2008.7.8(火)更新
【完成披露舞台挨拶】
さようなら、水野晴郎先生が最後の映画出演
「ギララの逆襲」河崎実監督が語る現場秘話
【完成披露舞台挨拶】さようなら、水野晴郎先生が最後の映画出演「ギララの逆襲」河崎実監督が語る現場秘話
洞爺湖サミット便乗映画「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」を完成させた河崎実監督(右)。「ギララ」ヒットの暁には、「ギララ・ガッパ超特急」をつくりたいと語った。ちなみに本作の「危機一発」が“髪”でなく“発”になっているのは、水野晴郎先生が映画宣伝マン時代に考案した「007 危機一発」(’64)に敬意を払ってなのだ。誤字ではありません
【完成披露舞台挨拶】さようなら、水野晴郎先生が最後の映画出演「ギララの逆襲」河崎実監督が語る現場秘話
河崎監督の前作「髪がかり」に続いて主演を飾った、カメラマン・三平役の加藤和樹(中央)。ミュージカル「テニスの王子様」でデビューしたイケメン俳優だが、本編では“ねちこま踊り”に一心不乱に取り組んだ。笑いに理解のある男だ。取材当日は女性ファンで劇場は溢れ返っていた
【完成披露舞台挨拶】さようなら、水野晴郎先生が最後の映画出演「ギララの逆襲」河崎実監督が語る現場秘話
大泉元総理を演じたのは、「ザ・ニュースペーパー」の松下アキラ(中央)。「ねじれ国会よくないね。本当は民意を反映したバランス国会のはずなのに、民主党は反対してばかり。何も考えてない福田さんに、何でも反対する小沢さん。腹黒い福田さんに、ドス黒い小沢さん。ある意味、バランスとれてるね」と政局をチクリ。製作発表時に告げられていた各国セレブの出席はならなかったが、ザ・ニュースペーパーや主題歌を歌ったデブパレードらが会場を盛り上げた
【完成披露舞台挨拶】さようなら、水野晴郎先生が最後の映画出演「ギララの逆襲」河崎実監督が語る現場秘話
「ギララの逆襲」が最後の出演作となった、水野晴郎先生の出演シーン。故郷・岡山のお国言葉で怪獣ギララの出現を興奮気味に語り、最後は「いやぁ、ギララってすごいですねぇ」の決め台詞で締めくくった。「サンセット大通り」('50)のグロリア・スワンソンを彷彿させる1シーンだ
【完成披露舞台挨拶】さようなら、水野晴郎先生が最後の映画出演「ギララの逆襲」河崎実監督が語る現場秘話
東京スポーツの記者・すみれ(加藤夏希)とカメラマンの三平(加藤和樹)はギララ出現でパニック化した北海道を取材するが、洞爺湖近くの森に隠された小さな神社を見つける。そこでは村人たちが“タケ魔人”なる不思議な仏像を崇拝していた
【完成披露舞台挨拶】さようなら、水野晴郎先生が最後の映画出演「ギララの逆襲」河崎実監督が語る現場秘話
大暴れするギララに対して、大泉元総理は核兵器の使用までほのめかす。洞爺湖どころか日本中、いや世界中がめちゃくちゃになってしまうぞ! ブラックな結末だった「日本以外全部沈没」(2006)から一転して、河崎監督の平和へのメッセージが込められた内容となっている。
■「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発 」は北海道にて7月5日(土)より先行公開、7月26日(土)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
[c]2008「ギララ」製作委員会
【河崎実監督プロフィール】
かわさきみのる 1958年東京都出身。英国のBBCテレビが取材に来るほどの超高級フグ料理店の息子として生まれ、円谷プロの「ウルトラマン」シリーズを浴びるように観て育つ。明治大学在学中、8ミリ作品「フウト」(’77)や「√ウルトラセブン・放浪の果てに…」(’79)などを自主製作。CMプロデューサーを経て、「地球防衛少女イコちゃん」(’87)で商業監督デビュー。「飛び出せ!全裸学園」(’95)「美乳戦士メスパイ」(’97)などナンセンス・パロディを次々と発表。人気コミックの実写化「まいっちんぐマチコ先生」(2003)ではヒロインのマチコ先生に「明るいエッチは世界を平和にする」という名言を吐かせている。筒井康隆原作「日本以外全部沈没」(2006)は第16回東スポ映画大賞・特別作品賞を受賞。名物バイヤー&宣伝マンの叶井俊太郎と組んだ劇場公開作に「いかレスラー」(2004)、「コアラ課長」(2005)、「ヅラ刑事」(2006)など。河崎監督がみずから主演する「電エース」シリーズの最新作「絶対やせる電エース 宇宙大怪獣ギララ登場! 宇宙怪獣小進撃」(2008)はオリジナル作「宇宙大怪獣ギララ」(’67)のドキュメンタリーとしても楽しめる。「ギララの上映館で販売するので、ぜひ買ってね」とのことだ。6月に夏木マリが不思議な理髪師に扮したオシャレなコメディ「髪がかり」が公開されたばかりだが、さらに秋には「猫ラーメン大将」が封切られる予定

【水野晴郎プロフィール】
みずのはるお 1931年岡山県出身。父親が満州鉄道関係の仕事をしていたため、少年期を満州で過ごす。戦後の混乱期、母親や弟たちと命からがら満州から引き揚げる。この時の体験が、反戦映画「シベリア超特急」シリーズとして結実することに。帰国後は故郷の高梁市で家計を助けるため郵便局員として大いに働く一方、なかなか地方で上映される機会のない名作洋画を自主上映する映画サークルの中心的存在となる。「本当は公務員だったから副業しちゃいけなかったんだけど、ポスターや手づくりのチケットを用意したり、楽しかったなぁ」と青春時代を振り返っていた。映画への想いは益々膨れ上がり、慶応大学文学部に通いながら20世紀フォックス社宣伝部にアルバイトとして勤務。その後、正社員に。さらに日本ユナイト映画宣伝部支配人にヘッド・ハンティングされる。名物宣伝マンとして「史上最大の作戦」(’62)、「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」(’64)、「夕陽のガンマン」(’65)、「真夜中のカーボーイ」(’69)など一度聞いたら忘れられない邦題を次々と考案。1972年に映画評論家として独立し、「水曜ロードショー」「金曜ロードショー」(共に日本テレビ系)での解説は25年に及んだ。警察研究家としても知られ、鈴木則文監督作「多羅尾伴内」(’78)では警察官役で出演している。にっかつ80周年記念大作として製作された「落陽」(’92)では山下奉文陸軍大将役で出演。役づくりのために遺族や関係者に会ううちに、「戦争を未然に防ぐために軍人の道を選んだ」という山下大将の生き方に感銘し、彼を主人公にした密室サスペンス「シベリア超特急」(’96)の製作を開始する。みうらじゅん、ナンシー関らに絶賛され、寺島しのぶの映画デビュー作となった「シベリア超特急2」(2000)、 三田佳子を芸能界復帰させた「シベリア超特急3」(2001)、アクションを盛り込んだ「シベリア超特急5」(2004)などの快作を製作し、ファンを大いに喜ばせた。映画だけでは飽き足らず、舞台「シベリア超特急4」「シベリア超特急007 モスクワより愛をこめて」と公演を行ない、旧知の俳優やファンとの交流を楽しんだ。2008年に「シベリア超特急ファイナル」を完成させた後には、加藤泰監督に脚本を依頼していた「好色五人女」の製作に取り掛かる予定だった。2008年6月10日永眠。享年76歳

【STAFF&CAST】
監督・脚本:河崎実 脚本:右田昌万 特殊造型:品田冬樹 振り付け:香瑠鼓 主題歌:デブパレード「cosmic mind」 出演:加藤夏希 加藤和樹 福本ヒデ 松下アキラ 渡部又兵衛 なべやかん 井上純一 森下悠里 和崎俊哉 堀内正美 きくち英一 中田博久 黒部進 古谷敏 夏木陽介 みうらじゅん リリー・フランキー 水野晴郎 ビートたけし(2008/トルネード・フィルム)98分
>> 公式サイト
予告編[ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発]
製作発表記者会見(6分49秒) [ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発]
>> 「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」製作発表記者会見
>> 「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」河崎実監督インタビュー
>> 水野晴郎「シベリア超特急5」完成披露記者会見
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サブカル界の強者どもが勢ぞろい!
ギララの名の元に、夏の宴が始まる


 宮崎駿監督の新作アニメ「崖の上のポニョ」一色に染まりそうな夏休み映画興行に、果敢に勝負を挑んでいるのが河崎実監督の「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」だ。オリジナル・ビデオ「地球防衛少女イコちゃん」(’87)で商業デビュー以来、インディペンデント・シーンで活躍してきた河崎監督にとって松竹生まれの「ギララ」は念願の怪獣映画。北海道に出現した宇宙怪獣ギララに対し、サミットのために来日中の各国首脳たちが支持率アップのためにアノ手コノ手で戦いを挑むというストーリーが展開される。

 特撮コメディとも政治パロディとも言えるが、「ギララの逆襲」をひと言で表現するなら、サブカル界の名士たちが集まった“ひと夏の宴”だろう。プロデューサーの叶井俊太郎氏は「アメリ」(2001)、「えびボクサー」(2002)、「ディセント」(2005)などユニークな作品を日本に紹介してきた名物バイヤーでもある。「仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL」(2002)で女ライダーを演じた加藤夏希、「仮面ライダーTHE NEXT」(2007)で新V3に扮した加藤和樹がW主演。「ウルトラマン」のハヤタ隊員こと黒部進、「キャプテンウルトラ」の中田博久ら特撮ドラマの歴史を築いてきた名優たちが脇を固める。さらにサブカル界の文豪みうらじゅん、リリー・フランキーがカメオ出演。ビートたけしの名前もクレジットされている。そして、映画評論家であり、マイク・ミズノ名義で「シベリア超特急」(’96)シリーズを撮り続けてきた水野晴郎先生の最後の出演作でもあるのだ。

 洞爺湖サミット開催の迫った7月3日、東銀座の松竹・東劇にて、「ギララの逆襲」の完成披露試写会が行なわれた。上映前の挨拶でマイクを握った河崎監督は、次のようにコメント。
河崎「怪獣映画の製作は子供の頃からの夢でした。ゴジラ、ガメラ、ウルトラマン…と着ぐるみによる怪獣映画は、歌舞伎や能と同じように日本にとっての伝統芸能。ギララを40年ぶりに甦らせたことで、日本に再び怪獣映画ブームを起こしたい。残念なことに水野先生はこの作品が最後の出演作となりましたが、『ギララ』が大ヒットした暁には、水野先生のライフワークだった『シベリア超特急』への追悼の意を込めて『ギララ・ガッパ超特急』をつくりたい。ぜひ、みなさん、親族、家族、恋人、友達に宣伝してください」

 東京スポーツの記者役の加藤夏希とコンビを組むカメラマン役の加藤和樹は、河崎監督の前作「髪がかり」(2008)にも主演している、人気急上昇中のイケメン俳優だ。
加藤「河崎監督は現場でずっと映画の話ばかりしている、“映画バカ!”っていうくらい映画好きな方です。その想いを受けて、ボクも現場では命懸けで演じました。ボクの出演場面はマジメにやればやるほど面白くなると監督に言われ、その通り一生懸命やりました。ボクも子供の頃は怪獣映画を劇場でよく観ていたので、ギララから怪獣ブームが広がればと思います。みなさん、よろしく」

 本作は社会風刺コント集団として知られる「ザ・ニュースペーパー」のメンバーも重要な役で映画初出演。大泉元総理として、現総理より目立ちまくった松下アキラは、小泉元総理の口マネで挨拶。
松下「ねじれ国会、よくないね。この映画もねじれているけど、ひねりが効いてて、面白いよね。この映画はキャッチ・コピーに『本格的特撮怪獣パニック・スペクタクル巨編』って書いてあるけど、ハッタリもいいとこだね。最近はCG映画がすごいけど、心に残らない。その点、この映画は心に残る作品だよ。ただし、映画史には残らないけどね」

 本物の元総理同様に、キャッチーな言い回しで、映画の本質を語るあたりは、お見事である。そして、水野先生の最後の出演作の上映が始まった。
最後の撮影は、お国言葉のアドリブ付き
そして水野先生は銀河鉃道で旅立った!


 北海道で大暴れするギララに対し、先進国首脳たちはロシア考案「ポロニウム毒殺作戦」、英国考案「洗脳電波作戦」などの暗黒秘技を使って戦いを挑む。しかし、怪獣映画における怪獣は、人間の常識が通用しない不条理のシンボルとしての存在だ。そんな形而上の存在に、実利と名声のみを求める政治家たちの策略は通じない。一連の珍騒動をみうらじゅん、リリー・フランキーらが楽しげにコメントし、いよいよ水野先生が登場する。「いやぁ、ギララってすごいですねぇ」という決め台詞ととも微笑む水野先生。たった1シーンだけの出演だが、スクリーンから特別なオーラが放たれている。水野先生の生前の姿なのだが、フィルムに焼き付いているのは、「映画が好きで好きで堪らない!」という純化した魂そのものなのだ。

 拍手が鳴り響く終映後の客席を出ると、ロビーにはファンにサイン攻め・握手攻めに遭っている河崎監督がいた。「水野先生について、コメントお願いできますか?」と声を掛けると、河崎監督は静かにうなずくや周りにいたファンに断ってから、時間を設けてくれた。バカ監督を自称している河崎監督だが、こういうところはすごくキチンとされている方である。

 夕方5時からの1シーンのみの撮影にも関わらず、水野先生は午後1時に撮影現場入りしていたそうですね?
河崎「そうなんです。やる気まんまんで、早く現場に入りたかったんでしょう。撮影時はすでに体調は優れなかったんですが、当日はおひとりで自宅から歩いて現場に来たんですよ。脚本では『ギララって、すごいですね』のひと言だけの予定でしたが、水野先生は自分のお国言葉である岡山弁でしゃべりまくって台詞を増やしてました。少しでも現場に長くいたかったんでしょうね。さすが“役者”でしたよ」

 河崎監督から見て、水野先生はどのような存在でした?
河崎「水野先生自体が、ひとつのジャンル・ムービーになってましたよね。『シベリア超特急』は映画という枠を越えていましたよ。まぁ、ボクも河崎実という特別なジャンルになっているわけだけど(笑)。水野先生もボクもAERAのムック『ニッポンの映画監督』に入れてもらえなかった仲です(苦笑)。実は水野先生からは『シベリア超特急ファイナル』と同時期に公開する番外企画として『シベリア超特急ディレクターズ6』の企画のオファーを清水崇監督らと受けていたんです。水野先生がいないので、この企画は現時点ではどうなるか分かりませんが、『ギララ』をヒットさせて、チャンスがあれば『ギララ・ガッパ超特急』をやりたいですね」

 2008年に製作・公開を予定していたマイク・ミズノ監督による「シベリア超特急ファイナル」は幻となってしまったが、「シベ超」シリーズを貫く“平和への祈り”というメッセージは「ギララの逆襲」にも受け継がれている。その点について尋ねると、「ボクの『日本以外全部沈没』(2006)はブラックな終わり方だったけど、今回はね、やっぱり希望のあるものにしたかったんですよ」と河崎監督は答え、先行上映の始まる札幌へと向かった。

 「シベ超5」(2004)の準備中だった水野先生に「映画評論と映画製作、どっちが楽しいですか?」と質問したところ、間髪おかずに「もちろん、映画製作だよ!」と福々しい笑顔で回答された記憶が胸に去来する。
 帰りの東銀座から見渡した夜空は残念ながら曇り空だったが、きっと水野先生は今頃、「シベリア“銀河”超特急」で大空を旅しているはずだ。映画宣伝マン、評論家として、数々の名画を世に広め、また底抜け脱線サスペンス「シベ超」シリーズで、多くの人たちに生きる勇気を与えてきた水野先生。本当にありがとうございました。

 そして7月26日(土)。水野先生が天国から見守る中、サブカル史上空前の夏祭りが幕を開ける!

(取材・文/ライター長野辰次)



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