

上映作品のポスターは通路のみに貼られ、窓から見えるようになっている

| 過去の大入り袋ベスト3 |
| ●2003.11.30現在 |
★1位「キングダム」
>> 作品紹介

★2位「リトル・ダンサー」
>> 作品紹介

★3位「山の郵便配達」

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映画の待ち時間に読書タイムにふけるのもいい


「自分がよく知らない映画のチラシを置くわけにはいかない」というこだわりから、映画館前の通路に置かれているのは「蠍座」での上映作品のチラシのみ


12月9日〜22日公開の「アダプテーション」
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支配人が語る、蠍座

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支配人 田中次郎さん

スガイ・エンタテインメントの映画興業部で映画館シネマ5の運営にあたる。その後会社を退社し、1996年6月1日に「蠍座」をオープンさせ、支配人の業務に携わる。
●好きな映画 特になし
●好きな監督 特になし
●好きな俳優 ♂特になし ♀特になし |

「居心地のいい映画館、そして自分が観ていいと思った映画を上映できる映画「居心地のいい映画館、そして自分が観ていいと思った映画を上映できる映画館を目指してこれまでやってきました。シネコン全盛期となってきた昨今、当館は個人経営ですからできることは限られていますが、内装やコンセプト、上映作品まで自由に決められるので、今後も今までどおり独自の道を行きたいと思っています」

徹底的にこだわり抜いた、くつろぎのミニシアター

全国に“こだわりの映画館”は多いが、札幌にある「蠍座」ほど、その言葉がしっくりくるところはない。それは一歩足を踏み入れた瞬間にわかる。ゆとりをもって置かれた重厚な木のカウンターとテーブルには品のいい生花が飾られていて、ロビーというよりはカフェ・サロンという雰囲気だ。壁には公開作品のポスターは1枚もなく、インテリアのアクセントとしてフランス映画「ぼくの伯父さん」のポスターが飾ってあるのみだ。心地よいBGMが流れ、さらに手作りケーキや香り高いコーヒーが味わえる上、決定打は一般料金¥800という破格な料金設定である。これぞ映画ファンにとっての理想的空間のひとつではないか。 さらにもう1点、“実際に支配人が観てよかった映画のみ”を上映するという徹底ぶりには驚かされた。再映作品のみを上映する名画座にとってこの姿勢を貫くことがどれほど困難かは、容易に想像できる。そこで今回はそんな“こだわりの名画座”の粋を極めた「蠍座」のオーナー兼支配人の田中さんにお話を聞いてみた。
「ロビーは事務所と兼用にしたかったので、居心地のいいスペースにしようと心がけました。でもこのロビーが映画館のセールスポイントになるとは思っていません。映画館へ来る方はあくまで映画を目当てに来るわけですから」
映画館名「蠍座」というのも強いインパクトを放つ。 「僕が若かりし頃に通っていた新宿のミニシアター『蠍座』にちなんでつけました。当時は星座の名前をつけた映画館も多かったし、僕の生まれも蠍座です。映画館名は英語やカタカナではなく、日本語にしたかったので『蠍座』に決めました。ただ、印象や響きがよくないのか『お客さんからはマニア向けのあやしい映画館かと思いました』っていわれたこともあります(笑)。やはり『蠍』って刺されるというイメージがあるからですかね?」
そんな思いを込めて1996年6月1日にオープンした「蠍座」だが、最初の1年間はかなり苦戦を強いられ、1日に9人の観客しか入らなかった日もあったという。 「当時映画館の少なかった北側は地理的にも難しかった。なんとなく知名度が広がってきたのは3年目くらいですね。現在は7年目ですが、よく『この映画館にもお客さんがついてきたね』って言われますが、私自身はそんな実感がないし、そう思うことは危険ですよね。なぜなら映画館は、上映する映画次第だと思っていますから」
 上映作品はすべて支配人が観ておすすめできる映画のみ

田中支配人のあらゆる面で妥協をしない点には頭が下がる。 特筆すべきなのが、前述のとおり、年間70本もの映画を上映する名画座でありながら、自分が観ていいと思った映画のみしか上映しないという方針である。「蠍座」の個人経営者である支配人が、名画座の運営をしながら、数多くの映画を前もって観るというだけでも大変な作業量である。そして配給会社との友好関係を踏まえた上で、いいと思った映画のみを選ぶ、というある種“勇気ある決断”を毎回行っているなんて、通常では考えられないことだ!
「実は過去に観なかった映画を上映したこともありましたが、その時は失敗して痛い目を見ました。だから今は、私が観て面白いと思った映画のみと決めています。自分がつまらなかった映画はやはり上映しても楽しくないですから。 最悪のケースは、評判はすごくよかったけど、自分自身がいいと思えなかった映画を上映して、結果お客さんが入らなかった時です。その時は落ち込みましたよ。逆にそれほどヒットはしてない映画でも、自分が面白いと思ったものを上映した時は後悔しないですから。それでお客さんも観てよかったと言って帰ってくださるとすごく嬉しいです。だって自分がいいと思う映画を上映したいために映画館を作ったのだから。お金儲けをしたかったら違う商売をしてますよ」
そんな厳しい目利きで選ばれる「蠍座」の映画を信頼して訪れる客も多いだろう。ちなみに客層は7〜8割が女性で、年齢は30代以上60代くらいまでと高めだという。 「最近は『めぐりあう時間たち』(2003)など、単館系ロードショー公開をして女性客に支持された映画が比較的当たっています。また、ロードショー公開時の成績はかんばしくなかったけど、当館ではヒットしたのが『愛してる、愛してない…』(2002)や『アバウト・シュミット』(2003)です。比較的真面目な映画が好きみたいですね。いちばん弱いのがメジャーな大作のアクションやラブコメです。戦争物やポップな映画も弱い」
実際にSFアクション大作『マイノリティ・リポート』(2002)は惨敗だったという。 「トム・ハンクス、トム・クルーズという“2大トムもの”は全くダメ(笑)。でも何が当たるかを見極めるのは本当に至難の技です。人の心や価値観を相手にしている商売だから難しいですよ」
また2003年4月25日には、札幌駅の北側に「札幌シネマフロンティア」というシネコンがオープンした。『蠍座』はダイレクトな影響は受けなかったとはいえ、少なからずも動員には影響が出たという。支配人はそんなシネコン事情についても冷静に見ている。 「シネコンを毛嫌いする映画関係者は多いけど、お客さんにとってみれば映画館事情は確実によくなっているから悪いことではない。それに当館は、今後も変わりなく独自の道を行くつもりですから。それで行き詰まったら、その時に考えようかと。数年後の予測はつきませんからね」
そう語る田中支配人は、“独自の道”についてはこうも語っている。 「個性というのは“両刃の剣”であり、出せば出すほど嫌がる人も出てくるってことです。でも誰にでも好きになってもらえるような方法をとると、逆に誰にも好きになってもらえなくなるような気もしますので、その辺は割り切らないと。だから自分が理想とするイメージの映画館を作り、そこに好きな人たちが集まってくれて、運営をし続けていけたらいちばんいいと思います」
そんな田中支配人の人柄もこの名画座の魅力の一部だ。一見物静かな印象はあるが、映画について語り始めると目じりを下げて柔和な表情を見せるところは好感度大で、それは「蠍座」というクセのある名前と、実際の“リラックス空間”ともいうべき名画座とのギャップとも似ているのではないかと思う。
そういった点も含め、ここにはこだわりのソフトとハードの両方を愛する人々が集ってくる。それらは支配人の静かな情熱とポリシーが昇華されたものであり、決して時代に流されることのない、ある意味“理想型”といえるべき姿である。そんな“唯一無比の名画座”にぜひ一度訪れてみてほしい。
 今後の上映作品について

「リバイバル上映となる『熊座の淡き星影』(’65)(12月16日〜22日公開)は、ルキノ・ビスコンティ監督作としては珍しくミステリー・タッチの映画となっていておすすめです。また、ニコラス・ケイジ主演作『アダプテーション』(2003)(12月9日〜22日公開)は、脚本家の苦労がよくわかる点が面白いです。その他、60年代の映画となりますが、『五番町夕霧楼』(’63)(12月16日〜22日公開)は、先日他界された河原崎長一郎さんの主演作です。名バイ・プレイヤーだった河原崎さんが主演された映画は少ないのですが、その中でもこの映画がいちばんお好きだったそうなのでで、故人を偲んで上映させていただくことにしました」
(取材・文/編集部:山崎伸子)
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