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2004.4.1(木)更新
【東京シネマのぞき見隊】(19)
2002年度、ピンク映画界のアカデミー賞(?)を席巻した
話題の“人情系ファンタジー”のDVD発売記念イベントに潜入!
【東京シネマのぞき見隊】(19)2002年度、ピンク映画界のアカデミー賞(?)を席巻した話題の“人情系ファンタジー”のDVD発売記念イベントに潜入!
開店休業中の妖しげなバーを舞台にした群像劇「美女濡れ酒場」。死にはぐれたバーテンダーや、素性知れずの無一文の歌手、駆け落ち同然で結ばれた若夫婦など、登場人物はどこか訳アリ風な雰囲気を醸し出しながらも、ドロドロした愛憎劇にならないのは「映画はモダンであるべきなり!」という監督のこだわり。樫原監督曰く「ケーブルホーグのバラード」('68※サム・ペキンパー監督)をベースに、ミュージカルや人情時代劇などのエッセンスを織り交ぜたという同作は、映画的密度の濃い内容に仕上がっている
【東京シネマのぞき見隊】(19)2002年度、ピンク映画界のアカデミー賞(?)を席巻した話題の“人情系ファンタジー”のDVD発売記念イベントに潜入!
イベント終了直後の樫原辰郎監督(1964年、大阪府生まれ)をキャッチ! ハワード・ホークス、オーソン・ウエルズ監督らによるハリウッドクラシック作品を敬愛するシネフィルだが、バンド青年だった過去をもち、現在はグルメライターとしても活躍するなど、多才な一面も。ちなみに監督が手にしているのが、3/26より発売中の「美女濡れ酒場」DVD。先行発売された今回のイベントでは、10枚以上も売り上げたそう(そのうち2枚は、のぞき見隊です…)
【東京シネマのぞき見隊】(19)2002年度、ピンク映画界のアカデミー賞(?)を席巻した話題の“人情系ファンタジー”のDVD発売記念イベントに潜入!
場内併設のカウンター内で、バーテンダーとして働いていた(!?)主演の竹本泰志、山咲小春のおふたり。手前のグラスは、劇中にも登場する“郁夫の水割り”ならぬウイスキーフロント。水の上にウイスキーを揺らさずに注ぐと、琥珀色との美しき2層の水割りが…。「撮影前にたっぷり練習させたから、竹本が作る水割りは美味しいはず」とノンベエの樫原監督お墨付きの逸品。イベントでは普段の倍以上の水割りがオーダーされたそう(そのうち2杯は、のぞき見隊です…)
【東京シネマのぞき見隊】(19)2002年度、ピンク映画界のアカデミー賞(?)を席巻した話題の“人情系ファンタジー”のDVD発売記念イベントに潜入!
アップリンク・ファクトリー場内。作家性の強いピンク映画を輩出する製作・配給会社“国映”作品からスタートした“NIPPON EROTICS”のDVDシリーズだが、“国映”の瀬々敬久監督作「羽田へ行ってみろ そこには海賊になったガキどもが今やと出発を待っている(公開時タイトル:課外授業 暴行)」('89)や、カルト的人気を誇る周防正行監督の「変態家族 兄貴の嫁さん」('84)などの80年代ピンクが特に好評だったそう。またロマンポルノの傑作「白い指の戯れ」('72)「母娘監禁・牝」('87)は、熱烈なファンが多く特に喜ばれたのだとか
【東京シネマのぞき見隊】(19)2002年度、ピンク映画界のアカデミー賞(?)を席巻した話題の“人情系ファンタジー”のDVD発売記念イベントに潜入!
2003年4/5に新文芸坐にて開催された<ピンク大賞>でのイベント風景。第15回という節目の年だった昨年は、オールナイトにも関わらず満員御礼の盛況振り。コアなファンばかりでなく、成人映画館には行けないけどピンク大賞だけは行くという若い女性も多いそうで、「可愛らしい女性が多く来てますね。僕の映画に出てほしいくらいだな」と、司会を務めた池島ゆたか監督の冗談も飛び出すほど。また例年訪れるゲストの数も半端ではなく、表彰式には壇上に上がりきれないゲストもいるほどの賑やかさだ
<第16回ピンク大賞>
日時:4月17日(土)22:10開場/22:30開演
上映作品:
「猥褻ネット集団 いかせて!!」
(ベストテン1位/監督:上野俊哉、主演:村山紀子)
「不倫妻の淫らな午後」
(ベストテン2位/監督:池島ゆたか、主演:佐々木基子)
「味見したい人妻たち」
(ベストテン3位/監督:城定秀夫、主演:KaoRi)
「悩殺天使 吸い尽くして」
(ベストテン4位/監督:国沢実、主演:橘瑠璃)
「痴漢義父 息子の嫁と…」
(ベストテン5位/後藤大輔、主演:浅木涼子)
※上映前に多数ゲストによる表彰式あり
料金:当日2300円/前売2000円
※整理番号付き前売券は新文芸坐、渋谷シネ・ラ・セット、
チケットぴあにて発売中
(当日は前売券持参者より整理番号順での入場、
当日券の方はその後の入場となります)
>> アップリンク・ファクトリー
>> アップリンク
>> ピンク映画専門誌「PG」
>> 新文芸坐
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ピンク映画界、2002年最大のニュース!
業界最大の映画賞で7冠を達成した話題作


 アメリカ映画界に権威あるアカデミー賞があるように、ピンク映画界にも年に一度の祭典“ピンク大賞”がある。その年に公開されたピンク映画のうち25作品以上(2003年公開は全89作品)を見た人なら誰でも投票できるという、ピンク映画専門誌「PG(※注1)」主宰による観客参加型の映画賞だ。その2002年度“ピンク大賞”全9部門(ベスト10作品賞・監督賞・脚本賞・女優賞・男優賞・新人監督賞・新人女優賞・技術賞・特別賞)のうち、監督賞、特別賞以外の7部門を制覇した映画があった。もちろん史上初の快挙で、ピンク映画界ではちょっとしたニュースになったのだ。それが老舗プロダクション、大蔵映画による群像劇「美女濡れ酒場」('02)である。
ポルノといえども“エロ”だけではないのです!
強烈な作家性を感じるピンク映画の魅力とは…


 「でもピンク映画って、結局アダルトビデオ(=AV)みたいなもんでしょ?」 そんな映画ファンの声が聞こえてきそうだが、“ピンク映画”と“AV”を一緒にしちゃあいけません! ズバリ“本番なし”のソフトコアポルノであることと、映倫の審査を受け、劇場(=成人映画館)で公開されるという決定的な違いがあり、私のような女性でも“映画”として興味をそそられるジャンルなのだ。大蔵映画、新東宝、Xces、ENKといった独立プロが製作した成人向けの商業映画なのだが、300万円の予算と3日間の撮影期間という厳しい条件のなかで製作されるのがほとんど。それでも“濡れ場”と呼ばれる必須のセックスシーンを盛り込めば、監督が比較的自由なテーマを撮れるため、そこんじょそこらの一般映画ではお目にかかれないような名作、珍作(?)を数多く輩出しているのもまた事実なのだ。監督の個人的に好きな映画がオマージュとして露骨に(!?)引用されていたり、ポルノであるにも関わらずSFやホラー、ベタベタなコメディといった破天荒なストーリーが展開されたり…と、作品から作り手の顔が透けて見えるほどの強烈な作家性が一番の魅力なのかもしれない。というなれば、「美女濡れ酒場」はその最たる例。同作は98年より30本以上の脚本を手がけてきたシナリオライター、樫原辰郎の初監督作なのだが、幼少時より映画を見まくって育ったという相当なシネフィルである樫原監督が、「自分のこれまでの引き出しを全部開けて、オマージュをギュウギュウに詰め込んだ、現時点での集大成」とまで語る渾身の一作なのだ。そしてDVD発売を翌日に控えた3/25、発売記念イベントを決行。シネマのぞき見隊としては、映画のいちジャンルとして、2002年を代表する傑作とまで言われた「美女濡れ酒場」の秘密を確かめずにはいられません!? (かくしてコアなファンが集うピンク映画イベントに初潜入することに…)
歌謡ショーあり、お酒のサービスあり…
コアなピンク・ファンが集うイベントに潜入!


 「美女濡れ酒場」は、ワケありのバーテンダーや自ら歌手と名乗る謎めいた客が集う、場末の寂れたバーを舞台に繰り広げられる人情系ファンタジー。今回のDVD販売やイベントを企画したアップリンクからは、“NIPPON EROTICS”シリーズとして、日活ロマンポルノ(※注2)や1960年代・1980年代のピンク映画など、名作と謳われた成人映画のDVDが数多く発売されていたが、新作ピンク映画に関しては、2002年11月に発売された瀬々敬久監督(「MOON CHILD」('02))の「トーキョー×エロティカ」('01)以来、実に1年半振り。それだけに今回の発売イベントも、DVDに収録された特典映像の活弁付き上映会あり、歌謡ショーあり…となかなか凝った趣向だ。ところがイベント会場のアップリンク・ファクトリー(渋谷)の場内には、案の定ファンと思しき30〜40歳代の男性ばかりで、関係者以外の女性は私を含めて2名だけ…。ただ、ソファー席あり、バーカウンターあり…といった会場のオシャレな空間のせいなのか、来場者のめいめいが気軽にお酒を楽しんだりと、いたってカジュアルな雰囲気で我々もすっかりリラックスモードに。夜8時からのイベントは、樫原監督や主演のバーテンダー役の竹本泰志らの挨拶もそこそこに、今回の目玉である歌手役の山咲小春による歌謡ショーから始まった。
 ところでそこで何故、歌謡ショーなのか? それは歌手が劇中で歌う、昭和歌謡風の「三丁目の青いバラ」が「美女濡れ酒場」のもうひとつの“顔”だから。耳にいつまでも残る、どこか懐かしいこの歌は、何と樫原監督が作詞・作曲を手がけたというオリジナル! 一度は音楽の道を志したこともあるという監督が、現実の世界からトリップするミュージカル映画のテイストを織り交ぜたかったからなのだとか。
 また監督のもうひとつのコダワリが、お酒。劇中で用いられている黒ビールやウイスキーは全て本物を使用したそうだが、これは酒飲みを自認する監督が、黒ビールの自然な泡や、トロンとした水割りの琥珀色がゆらめく美しさをごまかしたくなかったという(ノンベエならではの)美意識の表れ! イベントでも、併設のバーカウンター内に主演のバーテンダー・郁夫(竹本泰志)を実際に立たせて、劇中のバーさながらに“郁夫の水割り”ならぬ「美女濡れ酒場」特製ウイスキーを販売する場面(左記写真参照)も。これがなかなか絶品で、シネマのぞき見隊も味見と称してちゃっかりご賞味。夜10時終了予定が11時までズレ込んだ大盛況のイベントを、ほろ酔い気分で楽しみました…。
「美女濡れ…」に興味を持ったピンクビギナーは
年に一度のイベント“ピンク大賞”へGO!


 最近は今回の「美女濡れ酒場」DVDのように、ソフト化も決してない訳ではないが、昔のフィルムをほとんど残さず、ジャンク(=破棄、廃品)してしまうことの多いピンク映画界では、こうしたDVDリリースの方が珍しいというのが現状。必然的にピンク映画ファンは成人映画館での鑑賞を強いられてしまう。しかしうら若き(?)女性である筆者も、“狭い・汚い・危険”と悪評判の絶えない成人映画館に潜入するには、かなりの勇気を要する。そこで女性やピンク映画ビギナーにまずオススメしたいのが、「美女濡れ酒場」が2002年度7部門を制覇した“ピンク大賞”なのだ。ピンク映画界は、厳しい製作条件であっても35mmフィルムにこだわり、試行錯誤を繰り返した40年余にもわたる歴史のなかで、若松孝ニ、山本晋也、高橋伴明、井筒和幸、磯村一路、滝田洋二郎、黒沢清、周防正行、瀬々敬久etc….といった数多くの名匠や、大杉漣、竹中直人、田中要次ら実力派俳優を生み、そして育ててきた場所。だからこそ、まずは喰わず嫌いをせずに“ピンク大賞”のようなオープンなイベントでピンク映画をぜひ試して欲しい。今年も同祭は4/17に、新文芸坐での開催が決定。昨年に引き続き、場内は大勢の観客でごった返すのか? 壇上に溢れんばかりのゲストが今年も来場するのか? そして何より「美女濡れ酒場」のような思わぬ一作に出会えるのか…。いちファンとして今から本当に楽しみです。
(取材・文/戸田美穂 ワークス・エム・ブロス)


※注1)PG:創刊10年目を迎える、ピンク映画情報誌。ミニコミ誌からスタートしたというが、雑誌とWebの両方で展開しており、新作紹介や劇場公開日程までの詳しい情報を網羅。成人映画館の情報を掲載していた月刊情報誌「シティロード」の休刊に次いで、「ぴあ」までもが情報掲載を打ち切って久しい現在、もはや個人が発行するミニコミ誌の域を越え、その情報誌のマイナスを一手に補っている同誌は、ピンク映画業界にとって唯一無二の存在だ。
※注2)日活ロマンポルノ:業績不振だったメジャー会社の日活が、その打開作として71〜88年に製作したポルノ路線の映画のこと。300万円が相場という独立プロが手がけるピンク映画とは異なり、ロマンポルノは製作費が約2倍の700万円前後で、専用の撮影所も使用したためピンク映画の豪華版として認知された。近年、一般映画館での特集などが注目を集めたこともあり、神代辰巳、小沼勝らによる作家性の高い秀作は、先入観のない若い世代を中心に、今再び人気を呼んでいる
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