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2004.7.23(金)更新
【合同インタビュー】
陶芸家・板谷波山の苦悩の時に光をあてた「HAZAN」の
五十嵐匠監督インタビュー
【合同インタビュー】陶芸家・板谷波山の苦悩の時に光をあてた「HAZAN」の五十嵐匠監督インタビュー
実在の人物を描く理由を、「映画の中だけで創られた人よりも、実際に頑張っている人にグッとくるから」と語る五十嵐匠監督。
【合同インタビュー】陶芸家・板谷波山の苦悩の時に光をあてた「HAZAN」の五十嵐匠監督インタビュー
波山を演じることに相当入れ込んでいたという榎木孝明。五十嵐監督の次回作でも主演を務めるという。
【合同インタビュー】陶芸家・板谷波山の苦悩の時に光をあてた「HAZAN」の五十嵐匠監督インタビュー
献身的に波山を支え、子供を深く愛する妻を好演した南果歩は「私が奥さんだったら絶対離婚する(笑)」と言っていたのだとか。
【合同インタビュー】陶芸家・板谷波山の苦悩の時に光をあてた「HAZAN」の五十嵐匠監督インタビュー
波山の作品の形は、ロクロ師・現田市松が手掛けたもの。53年間に渡り波山と作陶した彼を演じたのは、名脇役・康すおん。
【STAFF&CAST】
監督:五十嵐匠 出演:榎木孝明 南果歩 康すおん 柳ユーレイ 寺島進 長谷川初範 大鶴義丹 益岡徹 中村嘉葎雄 加瀬亮 (2003映画波山製作委員会)108分

■7月24日(土)より、シネマスコーレにて公開

【五十嵐匠 プロフィール】
1958年青森県生まれ。大学卒業後、岩波映画などを経て1983年にフリーとなる。「ナンミン・ロード」('92)、「SAWADA」('96)、「地雷を踏んだらサヨウナラ」('99)、「みすゞ」(2001)を発表し、実在の人物描写に定評のある映画監督。
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「板谷波山の作った香炉を見たとき、香炉が僕を見ているような感じがした」

「地雷を踏んだらサヨウナラ」(’99)、「みすゞ」(2001)と、短くも力強い人生を歩んだ実在の人物をモデルに映画を撮り続けてきた五十嵐匠監督が、新作「HAZAN」で陶芸家・板谷波山の苦悩の時を切り取った。これまで同様、主人公の細かな心の動きを丁寧な描写で映し出した五十嵐監督が、本作の魅力と、実在の人物をモデルに映画を作ることへの思いを語った。

  「板谷波山の作った香炉を見たとき、香炉が僕を見ているような感じがした。極端なこと言うと、『お前みたいな男に、これの芸術が分かるか』みたいに言われている気がして、気味が悪くて。それで、どんな人が作ったんだろうと思ったのが映画化のきっかけだった」と語る五十嵐匠監督。「地雷を踏んだらサヨウナラ」の取材では4年間もカンボジアに通い続けたというが、今回は波山の故郷である茨城県下館市に住民票を移し、半年暮らしたのだとか。
「故郷の風景を波山も小さい頃に見ている。そういう美意識というのは、彼の作品に投影されていると思う。だから波山の住んでいた町に住んで、波山が登った筑波山にも何度も登って、利根川から見えるきれいな夕日を見たりした。俺は要領悪いから、彼のことを知るためには自分でそうしないと駄目なの(笑)」
「作品を作るときは周りにとても迷惑をかける。そこを描くことが大切だった」

板谷波山は、1890年代から1950年代に活躍した茨城県下館市出身の陶芸家。近代陶芸作家の先駆者と言われ、陶芸家として初めて文化勲章を受章するなど高く評価された人物だが、その名はあまり知られていない。波山の魅力について監督はこう語る。
「コンプレックスを持っているところが波山の魅力。あの人は、先生にも就いたことないし、窯元の出でもない。どうして彼があそこまでの人になったかというと、自分でやるしかなかったから。一生懸命やる中で、新しい作品に繋がる何かが見つかるのじゃないかと思っているのね。絶対やってやるんだという所が好きだね
そんな監督の言葉からは、苦悩しながら常に土と格闘し、なりふりかまわず制作に没頭する波山の姿を想像するかもしれない。しかし本作は、貧しい家計を何とかやり繰りし、献身的に夫を支える妻の気持ちを映し出すことで、波山の苦悩と、家族の大黒柱としての人間的魅力が浮き彫りにされていく。
「映画監督という自分の仕事でも、好き勝手やっていると周りにとても迷惑をかける。作った作品からはあまり分からないけれども、波山が作品を作るときにどれだけ周りを巻き込んで迷惑をかけているか、そこを描くことが大切だった

高校で彫刻科の教鞭を執っていた波山が、何の基礎知識も持たぬまま、情熱だけで陶芸家の道を歩み始める。しかしそのセンスの良さは、失敗作の中にも見て取れた。少しでもお金の欲しい状況であったにも関わらず、失敗作を売ることはなく、家族を思いながらも陶芸家として強い信念を貫いていた波山を演じたのは、榎木孝明だ。
「僕はキャスティングするとき、基準が3つあったんです。何よりもまず、目が強い人。それから、榎木さんの場合は、武蔵野美術大学で陶芸を専攻していたいうこと。そして、立ち姿がきれいだということ。昔の人は、横を向いて立っている姿がすごくきれいなの。今の役者さんにはなかなかいない。榎木さんは剣道をやるからきれい」
自らも絵画で個展を開くほど、芸術の才能にも長けている榎木。立ち姿の美しさは言うまでもないが、制作過程を撮る際に使われた壷の彫刻をすべて手掛けているのだというから、その腕前には驚かされる。
「みんながこういう人だと言う映画を作ってもおもしろくない。映画には自分の印鑑を押さなくちゃ駄目」

長年、実在の人物をモデルにした映画に取り組んできた監督だが、毎回悩むことがあるという。
「人間は完璧に他人を理解できないと思うけど、映画では自分なりの波山は作れる。取材して分かった事実に、自分の主観を入れるというのとは違って、事実を知った上で“嘘つく”っていうかね。事実と“嘘つく”バランスはいつも悩む。実在した人物だけに、その人のことを知っている人もいるわけだけれども、みんながこういう人だと言う映画を作ってもおもしろくない。映画には自分の印鑑を押さなくちゃ駄目だから」

監督が取材を通して体感した茨城の情景を映し出した映像が、まるで台詞の一部分かのように観る者に迫ってくるのは、「詩集みたいな映画を作りたかった」という監督の思いが反映されているからだろう。妻の目を通して夫の苦悩を浮き彫りにしたり、少ない台詞の行間を読ませるような味わい深い作風の本作には、確かに“五十嵐印”の印鑑が押されていることを感じた。

(取材・文/編集部 山川良子)


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