井口昇監督の作品がついにDVD化! 気になる収録作品にのぞき見隊が迫る

井口昇監督といえば、以前「恋する幼虫」のインタビュー(2月13日(金)UP分)でも紹介した、のぞき見隊イチオシの映画監督。AV監督を本業とする一方、俳優として活躍したり、エロ抜きの“泣ける”自主映画も監督する、異色の映画人だ。 そんな井口昇監督の作品が気にはなりつつも、いままで観る機会のなかった人に朗報! 井口監督の自主映画作品や短編作品がDVD化されることが決定したのだ。井口昇が世に認められるきっかけとなった「わびしゃび」('88)から「帰ってきた刑事まつり」の中の一編「アトピー刑事」('03)まで、15年間の映像が収録されているDVD「クルシメさん、アトピー刑事 愛の井口昇劇場1988−2003」が8月27日(金)に発売される。この井口昇監督のDVD発売に先駆けて、“井口監督のルーツを探る”独占インタビューを行ってきた。 |
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「カメラを回していないと気が狂いそうだった」 映画少年が自分の恋の行方を追う「わびしゃび」

井口昇監督が18歳で撮った「わびしゃび」は、日常の断片を撮った前半と、衝動的に好きな後輩の女の子に会いにいき思いを打ち明ける後半で成り立つドキュメタリー。この若さと痛さがつまった作品ができたきっかけを井口監督はこう語る。 「僕はもともと映画少年で高校時代から自主映画をつくっていたんですけど、専門学校時代すごくもんもんとした日々を送っていて、カメラを回してないと気が狂いそうだったんですよ。でも撮るものがなくて、そういう爆発したいのに爆発できないようなときに、高校で片思いしてた後輩の女の子に会ってみたいなと思ったんです。それで、衝動的にカメラを持って会いに行っちゃったんですよ。いまで言うストーカー行為ですね(笑)」。 しかしその作品が、1990年のイメージフォーラム・フェスティバルで審査員賞を受賞。映画監督として歩み始めるきっかけとなることに。しかも機械オンチで、劇中の井口監督の心情を表すような早送りになったり無音になるシーンが、すべて偶然の産物だったそう。「この作品は偶然の神様との共作」と謙遜する井口監督だが、普通の人なら失敗というだけで切ってしまうそれらのシーンを、作品の絶妙なアクセントとして生かしてしまうセンスがスゴイ! |
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「裸や絡みなしでエロティック映画をつくりたい」 井口監督の新しい挑戦となった「クルシメさん」

92年以降、アダルトビデオ業界で低予算のドラマ作品をこつこつと作り続け、「ウンゲロミミズ」('94/※1994年度上半期ビデオ・ザ・ワールド誌ベストテン監督賞受賞・1994年度年間第3位)などドラマ性のあるほのぼのスカトロという独自の路線を確立し、監督として忙しい日々を送っていた井口昇監督。しかし「ずっと性とかエロティズムとかに興味があって撮っていたんですけど、セックスを撮れば撮るほどそこから遠のいているように思える時期があって。だからどうせ撮るんだったら、自分のお金でつくりたいなと。男性と女性の話じゃなくて、女性と女性のインモラルな友情物語というようなものを撮りたかった」と思ってつくった作品が、トラウマを抱えた女性2人の奇妙な関係を描く「クルシメさん」('97)。他人を傷つけずにはいられないユキと奇妙な舌にコンプレックスを持つカズエが、ひとりの男性を取り合いながらも友情で結ばれていくというこの作品は、一部の映画ファンに人気を集め、いまもカルト作として名高い。 その「クルシメさん」は、もともと<大人計画・俺隊>の舞台で井口昇監督が作・演出した「紅い給食」('96)から生まれたもの。「新井亜樹さんが演じた疑似レズっぽいシーンがすごく印象に残っていて、それを広げたいなと思っていたんです」と言う井口監督は、当然「クルシメさん」でも新井さんをキャスティング。そしてその相手役を探していたときに幸運な出会いがあった。 「雑誌に出演者募集を出したんですよ。そうしたら5通くらい来た応募の中でひとりだけが履歴書を送ってきている人がいて、しかも両親の印鑑付きだったんです。それが唯野未歩子さん。当時は普通の学生さんで、2人で喫茶店で会ったらものすごい照れ方をするんですよ。彼女がすごく恥ずかしがっているのを見て『これだ!』と思いました」。 いまも映画女優として活躍する唯野未歩子さんを発見できたのは、井口監督のこんな性癖(?)によるものだった。「アダルトビデオを監督して気付いたんですけど、僕にとって“羞恥心”というのがすごく重要なんです。例えば、女の子が道でつまずいてひとりで恥ずかしがるとか、人前でご飯を食べるのを恥ずかしがるとか、そういうところに自分はぐっとくるんですよ」。 そして、トラウマやコンプレックスを持ち、“羞恥心”に縛られた登場人物たちが暴走する自身の作品についても監督は、「僕自身、コンプレックスがあったり障害を持っている人が好きなんでしょうね。そういう人に共感するんですよ」と明かしてくれた。 |
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「13日の金曜日 PART3」へのオマージュ!? 飛び出す物体に惹かれる井口昇監督

井口昇監督作品を考えたとき、やはりはずせないのが“飛び出す物体”だ。「クルシメさん」では舌が、「俺の空」や「恋する幼虫」('03)では目玉が飛び出すサマは、グロテスクなのだがなぜかユーモラスさも漂わせる井口作品の必殺の手法。ここまで井口監督を飛び出しもの好きにさせたのは、なんと「13日の金曜日 PART3」('82)がきっかけ。 「僕が中学生のときに初めて観に行った映画が『13日の金曜日 PART3』で立体映画だったんですよ。映画の中で、ジェイソンが男の人の頭を後ろからぱーんと叩くと目玉がピューンと飛び出るんです。それを僕は異常に覚えていて、もし僕が映画監督になったらこの場面をリメイクしよう、いつか立体映画で目玉が飛び出る映画をつくるんだと思ったくらい」。 少年時代に少しトラウマにもなったというほど衝撃作品に出会った井口監督は、「自分の作品も子どもが観てトラウマになってくれるといいなとか、人生に影響されるといいなとか思いますね」という危ない発言も。大丈夫、井口監督の作品は十分トラウマになると思います。 そんな子どもにも観せたい井口昇作品は、8月27日(金)に発売になるDVDのほかに、今年2月に公開されたばかりの、不器用な男女が惹かれ合いながら世界の終末に向かって突き進む「恋する幼虫」のDVDも9月1日(水)に発売になる。 この2本のDVDは特典も豪華。「愛の井口昇劇場」は、「アトピー刑事」を主演のひとりデモ田中さんがリミックスし直したニューバージョンや、俳優としても活躍する鈴木卓爾監督や、活弁映画監督の山田広野さんなどが作品の音声解説を入れていたり、「恋する幼虫」も本編のほかに、未公開シーンや、スタッフたちを集め新たに撮りおろした、主人公のトラウマになった事件のその後を追った「幼虫のはらわた」が収録されている。なので、以前観た人も初めて観る人にも楽しめること間違いなし。 井口監督が10代のときに撮影した暴走ドキュメンタリー「わびしゃび」から、30代でつくった純愛映画「恋する幼虫」まで、ひとりの異才の成長の過程が分かるDVDをぜひチェックしてみてください。 取材・文/木村恵子(ワークス・エム・ブロス) |
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<井口昇監督による「クルシメさん、アトピー刑事〜愛の井口昇劇場1988−2003」収録作品コメント>
「わびしゃび」('88/36分) 監督・撮影:井口昇 高校を卒業し、もんもんとした毎日を過ごす10代の井口昇監督が、片思いする後輩に思いを伝えに走る“真実”のドキュメンタリー 「告白した後輩の女の子にいま観てもらいたいですね。当時は『構成が前半と後半よくないんじゃないですか』みたいなクールな感想を言われましたけど、いま観たらもしかしたら号泣してもらえるかもしれないし」
「クルシメさん」('97/56分) 監督:井口昇 出演:新井亜樹 唯野未歩子 なにわ天閣 鈴木卓爾 松梨智子 雨谷由香 愛する人を傷つけてしまうという奇病を持つユキと、自分の体にコンプレックスを抱えるカズエは、お互いに好意を持ちながらも傷つけ合ってしまうという奇妙な友情物語 「唯野さんに『作り物の舌を口に挟んで』というのがなかなか言えなくて、新井さんに『おならしてもらっていい?』というのも直前まで言えない、そんな直前まで説明の出来ないシーンの連発でしたね」
「わたしとクルシメさん」('98/8分) 監督・撮影・主演:井口昇 出演:新井亜樹、唯野未歩子 新井亜樹さんと唯野未歩子さんの主演2人が、「クルシメさん」と井口監督について語る、真実半分、演出半分の短編。井口昇監督のインタビュアーっぷりが笑いを誘う 「いまはなき中野武蔵野ホールで、『クルシメさん』を上映するときにつくったおまけの作品です。僕この前久しぶりに観たんですけど、作品の内容よりも中野武蔵野ホールが健在だった映像にうるっときてしまいました」
「俺の空(くう)」('99/10分) 監督・出演:井口昇 出演:唯野未歩子 唯野未歩子さんと井口昇監督出演の美女とフリークスの物語。唯野さんが井口監督の唯一の目玉を狙う。井口監督の永遠のテーマ、愛する人を傷つけずにはいられない女性を描く短編 「実はこれもいまはなくなってしまったH2Oという上映スペースで『クルシメさん』を上映する際の併映作品です。とりあえずチラシをつくるときに、『俺の空(くう)』というタイトルだけ付けて、内容を何も考えずに血糊と眼帯と目玉だけを用意して撮影に入りました。台本がなくても映画つくれるんだなって勉強になりました」
「アトピー刑事」('03/10分) 監督:井口昇 出演:松本玲子、原達也、デモ田中 「帰ってきた刑事まつり」の中の人気作。感情が高ぶると顔が変わるほどアトピーがひどくなり人格も変わる二重人格の女刑事と、相棒を組む男刑事の究極の恋愛物語 「『アトピー刑事』のアトピーがひどくなった方演じている原さん(男性)が、そのときたまたま髪の毛が長かったので、すごい幼稚な発想なんですけど、これは女刑事に見えるなと思って演じてもらいました。いまのところ実際にアトピーの方に怒られてないんで、それだけが救いです」 |