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| コメディ映画で、初主演を務めた松尾スズキ氏。「笑いのない真面目な作品に比べて、笑わせる作品で笑いが起きないと、より重苦しいよね。やっぱりコメディは役者にとって怖いものですよ」と謙虚に語る |
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| かつて睡眠障害で精神科に通った経験のある松尾氏。「精神科の先生って、テンション低いんだよね(笑)。でも、今回の役は医学的なアプローチはしてないよ。なるったけ、薄っぺら〜い男に見えるように努めました」 |
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| いつも彪柄のシャツとブーツを身に付けている精神科医・伊良部(松尾)。こんな医者が実在したら、嫌です。でも伊良部の本能のままに行動する無邪気さが、なぜか結果的に患者たちの悩みを解決へと導いてしまうのだ |
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ブラックなコメディかと思えば、物語の後半では患者の田口(オダギリジョ−)との間に、不思議な友情(?)が芽生える、ちょっといいシーンも。「でもね、伊良部はなんで自分に好意が寄せられているのか全然理解してないんだけどね」(松尾) (c)2004「イン・ザ・プール」製作委員会 |
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【松尾スズキ プロフィール】 1962年12月15日福岡県北九州市出身。1988年に「大人計画」を旗揚げ。同劇団の主宰、作・演出兼役者を務める。1997年「ファンキー!〜宇宙は見える所までしかない〜」で第41回岸田國士戯曲賞を受賞。2000年に上演された奥菜恵主演のミュージカル「キレイ〜神様と待ち合わせした女〜」で第38回ゴールデンアロー賞演劇賞受賞。主な映画出演作は、「殺し屋1」(2001)、「チキン・ハート」(2002)、「突入せよ! 「あさま山荘」事件」(2002)、「MASK DE 41」(2001)、「いま、会いにゆきます」(2004)、「真夜中の弥次さん喜多さん」(2005)、「姑獲鳥の夏」(2005・7/16公開)ほか。監督&脚本&出演作「恋の門」(2004)は、ベネチア映画祭国際批評家週間部門に出品されるなど、大きな話題を呼んだ。また、作・演出・出演の舞台「キレイ〜神様と待ち合わせした女〜」が7/6〜8/12まで東京・大阪にて再演される。
STAFF&CAST 原作:奥田英朗 監督・脚本:三木聡 出演:松尾スズキ オダギリジョ− ちはる 藤田陽子 MAIKO きたろう 森本レオ ふせえり 岩松了 市川実和子 田辺誠一ほか(2004/へラルド)101分 ■5月21日(土)よりシネセゾン渋谷、テアトル新宿ほかにて全国順次公開

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「映画出演は、リスキーな感じがするね。 責任もって、無責任さを演じてましたよ」

もう、松尾スズキが止まらない!!って感じでしょうか。2004年10月にこれまでの日本映画の常識を覆すようなハイ・テンション&ハイ・スピードで描かれた青春ラブ・ストーリー「恋の門」で映画監督デビュー。ホーム・グラウンドである演劇界では大人計画の本公演「イケニエの人」(世田谷パブリックシアターほか)、大竹しのぶとの2人芝居「蛇よ!」(青山スパイラルホール)で話題をさらった。2005年4月には「恋の門」がDVD化。そして5月、ついに初主演映画「イン・ザ・プール」が公開される。松尾スズキ、42歳。怒濤の展開である。 「いや、もう、これで打ち止めですから(笑)。それに映画初主演といっても、『イン・ザ・プール』での僕の役は主演主演した役じゃないし。オダギリジョーくんが主演っぽいシーンもあるし、田辺誠一くんが主演っぽくもある。群像劇っぽい作品なんです。まぁ、それに僕は物語の中心になって、ぐいぐいとストーリーを引っ張っていくタイプではありませんから」
いいですねぇ、超過密スケジュール状態が続く売れっ子ぶりとは裏腹に、松尾氏本人はおよそ芸能人らしからぬテンションのゆるさ。 メディカル・コメディと銘打たれた「イン・ザ・プール」で松尾氏演じる伊良部は「お前、ほんとに医師免許持ってんの?」とツッコミたくなるような、いい加減な精神科医。患者の痛がる様子を眺めて恍惚感を覚える注射フェチで、極度のマザコン。24時間勃起状態に悩む田口哲也(オダギリジョ−)、生真面目な性格が災いして自宅のガスの火を消したかどうか気になってしようがない岩村涼美(市川実和子)、ストレス発散のために頻繁にプールに通う大森和雄(田辺誠一)たち3人の患者が伊良部の神経科に通うはめになるが、傍から見ると3人の方がよっぽどの常識人。はたして3人の病状は回復するのか?
原作小説は「空中ブランコ」で直木賞を受賞した奥田英朗氏の“とんでも精神科医”伊良部シリーズの第1弾にあたる。原作で描かれた伊良部はぽっちゃり体型で、芸能界でいえばダチョウ倶楽部の上島竜兵っぽいイメージ。なんで、また松尾さんに主演のオファーが来たんでしょうね? 「うん、そうだよね。フツー、原作小説に登場人物の外見が描写されていれば、そっから入っていくよね。伊良部って、ちょっと前なら西田敏行さんが演じるようなキャラクターじゃないかな。でもね、うれしかったですよ、そう考えると。そんな役が自分に来たってことは、これは取り組むに値するなってね」
舞台や映画「恋の門」では、松尾氏自身が演出し、自分も演じるという形でやってきたわけだが、今回は「俳優・松尾スズキ」としてのストレートな参加。この点は本人はどう感じているのだろう? 「いやー、楽じゃないです。リスキーな感じ。もう、逃げ場がないっていうね。舞台とかなら自分が評価されなくても、役者の誰かが誉められればいいやって思えるけど、俳優として呼ばれたのに、他の俳優は評価されて自分は何も引っ掛からなかったら『ハイ、もう終了!』ですよね(笑)。今回、伊良部役を演じる上で自分で掲げていたことは『自由であれ、無責任であれ』ってことかな。伊良部って人の病気を治したいとか考えてる男ではなく、病気の人をもっと近くで見てみたいとか、病気の人で遊びたいとか考えてる男。ほんとね、心も体も無責任にみえるように責任もって演じました」
多数連載中のコラムでは毒舌全開の松尾氏だけに、あまり無礼な質問しても、ぬる過ぎる質問をしてもムッとされるのではとインタビュアーの緊張感がそこはかとなく漂う渋谷セルビアンタワー1室での30分。後半は現代お笑いカルチャー・シーンをリードする、もうひとりの才人・三木聡監督とのコラボぶりについて聞いてみよう。 |
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「三木聡監督の演出は、おそろしく細かかった。 『恋の門』での僕と、五分五分じゃないかな」

松尾氏初主演映画「イン・ザ・プール」は、脚本&監督を手掛けた三木聡氏にとっても、劇場初公開作品となる。三木監督といえば、2000年までシティボーイズの作・演出を担当し、人気バラエティ「トリビアの泉」(フジテレビ系)のブレーンを務めている“笑いのプロフェッショナル”なのだ。 「今回の仕事は、三木さんが監督するってのが、やっぱり大きかったね。最初に出演のオファーがきたときは、脚本の第1稿しか出来てなかったけど、三木さんが監督で僕に重要な役を任せてくれるというので、1も2もなく引き受けました。僕もシティボーイズが大好きで、三木さんが演出したシティボーイズのライブは何本か拝見してて、『あー、うまいなぁ。自分とは違う笑いを持っている人だなぁ』とリスぺクトしてたんで」
お互いに舞台の演出をし、映画を監督する立場。三木監督の演出ぶりは、どうでした? 「うーん、おそろしく細かかった。僕も『恋の門』のときはすごく細かいって言われたけど、五分五分だね(笑)。最初は台本読み合わせ。その頃は僕から『伊良部役は、こんな感じですかねぇ』とアイデアを出したりもするけど、それからリハーサル、現場と次第に細かい指示が三木さんから出て、って感じ。これが、もう何度か続くとギブアップしちゃうよ、というぐらい細かい演出でした。やっぱり舞台を経験してる人の映画づくりだなって思いましたね」
女性に対して愚痴ひとつこぼさない田口(オダギリ)に代わって、田口の別れた妻(藤田陽子)の会社に押し掛けて、伊良部が暴言の限りを吐きまくるシーンは、圧巻! 台本に書かれたとは思えない、異様にリアルな場面となっている。女性とのバトル・シーンは、松尾さんのアドリブとかじゃないんですか? 「(笑) いや、でもね、三木さんの書いた台本通りですよ。アドリブは今回の作品では、まずなかった。三木さんが現場で思い付いたアイデアを急遽盛り込むってことはあったけど。基本的に三木さんのイメージしてる世界がかっちりあったんでね」
インタビュアーの個人的な回想だが、松尾氏を初めて観たのは、1993年福岡ビブレホールでの「大人計画」コント公演「鼻と小箱」。それから10余年、まぶしいくらいに松尾さん、メジャーな存在になられました。 「どうも、ありがとう(笑)。でもね〜、僕はメジャーになったとは思ってないんでね。自分はメディアの端っこで、ちょこちょこやってるつもりなんで。フツーに電車に乗りますし、TSUTAYAに行っても誰からも声掛けられないしね。それに1回舞台に戻れば、もうインディペンデントな世界なわけで、好き放題やってますよ」
気の早い話だが、松尾ファンとしては、「恋の門」に続く長編監督作を、できれば今度はオリジナル脚本で観たいものである。 「うん、映画のつくり方もなんとなく分かってきたんでね、そろそろオリジナル企画に手を出すのもよかろうと。ま、ゆっくりあせらずにね。それに、まだ『イン・ザ・プール』が公開されてないわけだから、評価もされてないのに次のステップには進めませんし。ま、芝居でも映画でも表現ってのは、人前に晒されてナンボだと思うんでね。今は静かに刑を待つ、といった心境かな(笑)」
「イン・ザ・プール」の全国公開と前後して、松尾スズキ監督作「夜の舌先」(高岡早紀が好演!)を含んだオムニバス映画「female フィーメイル」も、5月14日(土)に公開。さらに7月には酒井若菜を主演に迎えたミュージカル「キレイ」の再演が待っている。まだまだ、松尾スズキは止まらない!!って感じです。
(取材・文/ライター長野辰次) |
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