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2005.6.10(金)更新
【動画・独占インタビュー】
楳図かずおの名作コミック「まだらの少女」を
“特殊映像作家”井口昇監督が見事に映像化!!
【動画・独占インタビュー】楳図かずおの名作コミック「まだらの少女」を“特殊映像作家”井口昇監督が見事に映像化!!
ピュア過ぎて、傷つけ合ってしまう関係を撮らせると独自の発光体としての輝きを放つ井口昇監督。「目指したのは、ほのかなエロチズムです。下品にならないように気を付けました。僕、今35歳なんですけど、僕の中の中年度と少年度が撮影中ずっと葛藤し続けてました」東銀座・松竹の応接室にて
【動画・独占インタビュー】楳図かずおの名作コミック「まだらの少女」を“特殊映像作家”井口昇監督が見事に映像化!!
2人のヒロインには「自分がまず演じてみせる」という演出スタイルをとった井口監督。「クルシメさん」の撮影現場では主演女優から「もういや!」と言われたこともあるそうだが、井口監督の映像に対する“ヘビ”のような執念が今回、見事に実を結んでいる
【動画・独占インタビュー】楳図かずおの名作コミック「まだらの少女」を“特殊映像作家”井口昇監督が見事に映像化!!
美土路村で暮らす京子役を演じた成海璃子(右)は、土曜ドラマ「瑠璃の島」(日本テレビ系)に主演している人気急上昇中のアイドル。東京から来た弓子役の中村有沙は、井口監督がオーディションで抜擢。「天才てれびくんMAX」(NHK教育)にレギュラー出演し、監督いわく「その筋で、大変な人気」だそうだ
【動画・独占インタビュー】楳図かずおの名作コミック「まだらの少女」を“特殊映像作家”井口昇監督が見事に映像化!!
大変! 村の人たちがみんなヘビ人間になっちゃった!! 弓子の着ている水玉の洋服やリボンが、楳図ワールドの雰囲気をうまく伝えています。ちなみにロケ地は神奈川県。1週間のロケで毎日夜9時には子役たちを家に帰すという、なかなかタイトなスケジュールだったとのこと
【動画・独占インタビュー】楳図かずおの名作コミック「まだらの少女」を“特殊映像作家”井口昇監督が見事に映像化!!
一体どこまでが幻想なのか、現実なのか? 学校でも家庭でも“いい子”を演じていた弓子に、次々と不可解な出来事が起こる。はたして、ヘビ女の正体とは……!? 井口監督がこだわった“恐怖におののく顔”がこれだ
[c]2005 楳図かずお/「楳図かずお 恐怖劇場」製作委員会


【井口昇監督 プロフィール】
1969年、東京都生まれ。学生時代に撮った8ミリ作品「わびしゃび」(’88)がイメージフォーラムフェスティバルで審査員賞を受賞。平野勝之ら個性的な映像作家のもとで様々な成人向けビデオの撮影現場を経験する一方、自主制作作品「クルシメさん」(’97)、「アトピー刑事」(2003)、「恋する幼虫」(2003)は劇場公開され、カルト的な人気を得る。身長158cm、体重85sというチャーミングな体型を活かして、劇団「大人計画」などの舞台や映画にも出演。2005年4月には初めての単行本「恋の腹痛、見ちゃイヤ!イヤ!」(太田出版)を上梓。井口監督らしい可笑しくて、ちょっぴりホロ苦いコラム集なのだ。

STAFF&CAST
原作:楳図かずお 脚本:小中千昭 監督:井口昇 撮影:喜久村徳章 特殊造型:原口智生 出演:成海璃子 中村有沙 鈴木理子 安井昌二 中原翔子 嶋田久作 田中美奈子(2005/松竹)53分

■『楳図かずお恐怖劇場』は6月17日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー、全国順次公開。「まだらの少女」は「ねがい」との2本立てで6月25日(土)〜7月1日(金)の上映
>> 公式サイト
>> 井口昇監督初単行本発売記念イベント取材レポート
>> 井口昇イベント<昇祭〜後夜祭>取材レポート
>> 「愛の井口昇劇場」井口昇監督インタビュー
>> 「恋する幼虫」井口昇監督インタビュー
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「楳図作品の中で最もハードルの高い名作。
撮影前は不安で不安で仕方なかったです」


 2つの才能が幸福な出会いを果たしたと言っていいだろう。恐怖漫画の巨匠として知られる楳図かずお氏の初期を代表する傑作短編「まだらの少女」が、「クルシメさん」(’97)、「アトピー刑事」(2003)、「恋する幼虫」(2003)などのインディーズ系映画で異才を放ってきた井口昇監督によって見事に実写映画化されたのだ。
 楳図漫画はあまりにもオリジナリティーに溢れ過ぎ、また絵そのものに圧倒的な迫力があるため、これまで映像化に成功した作品は非常に希少だった。“映像の魔術師”と言われた大林宣彦監督をもってしても「漂流教室」(’87)などは散々たる出来である。しかし、「クルシメさん」などの一連の自主映画で“愛と憎しみは紙一重”をテーマに撮り続けてきた井口監督の持ち味と、楳図漫画のキーワードである“子供ゆえの美しさ、残酷さ”がぴたりとハマった。

 楳図かずお氏のプロ・デビュー50周年を記念して、楳図氏自身が各年代からセレクトした「蟲たちの家」「ねがい」など6本の短編を、黒沢清、清水厚ら6人の監督によって1時間前後の中編6本に仕立てた『楳図かずお恐怖劇場』だが、中でも井口昇監督による「まだらの少女」が出色の出来映え。監督業の傍ら、一目見たら忘れられない味わい深い風貌を活かして俳優としても活躍する井口監督。この日も松尾スズキ作・演出によるミュージカル「キレイ 神様と待ち合わせした女」の稽古を終えたところ、インタビューに応じてくれた。

 原作「まだらの少女」は週刊少女フレンドに1965年に発表されたものだが、映画化にあたって楳図氏の意向により現代に置き換えてある。
 弓子(中村有沙)の通う小学校で暴力事件が起き、心配した母親は自分の生まれ故郷である美土路村に弓子をしばらく預けることに。弓子は同い年の従姉妹・京子(成海璃子)とすっかり仲良くなるが、村人たちは「東京からヘビ女が来た」と噂する。そして弓子は古い屋敷で身の毛のよだつ体験をすることに…。

 楳図漫画の怖さがぎゅっと濃縮された不朽の名作だが、映像化に挑んだ井口監督の胸中についてまず聞いてみよう。
「すごいプレッシャーでした。よりによって一番ハードルの高い作品を僕が監督するなんて。そうでなくても楳図さんの原作は映像化は難しいでしょ。今だから『まだらの少女』をやってよかったと思えますけど、撮影に入るまでは不安で不安で仕方なかったです」

 腰が低く、親しみ易さを感じさせる人柄である。また、その話しぶりには楳図作品へのリスペクトが充分に感じられる。しかし、映画監督としては楳図作品と互して闘うパワーと戦術が必要。その点は、どうだったのだろう?
「楳図先生の漫画は怖いだけじゃなくて、思わず笑っちゃうような描写もけっこうあるんですよね。ザザザと這いずる擬音にしても、そのザザザに毛が生えてたりするんです。そんな楳図作品の触感は大事にしたいなと。舞台は現代に置き換わりましたが、少女たちの言葉遣いや衣裳は1960年代の雰囲気を活かそうと脚本の小中千昭さんと決めていました。それと少女が驚く時は、絶対に両手を顔にやるポーズで(笑)。楳図漫画は1コマのインパクトがすごいんで、コマの構図をそのまま活かすのもアプローチのひとつだなと思ったんです。あと、裏テーマとして考えたのが、少女が驚く顔、痛がる顔、苦しむ顔は絶対にアップで撮るということでした。注射のシーンは針が刺さる瞬間だけでなく、抜かれるまでの表情をしっかり追いました」

 井口監督ならではのマニアックな演出だが、その徹底したこだわりによって主演女優2人(成海璃子、中村有沙)の生き生きとした表情を真空パックのごとく捉えることに成功し、映画の魅力になっているのは確かだ。
「思春期の少女の美しい幻想の世界。
映画的なリアリズムを目指しました」


 井口監督らしい細かいこだわりが発揮される一方で、「まだらの少女」では井口監督らしからぬ冒険にも挑んでいる。
 脚本家の小中千昭氏は切ないファンタジーものを書かせるとピカイチな作家。物語を現代に移すことで、社会的なテーマを内包する深みのあるドラマへと押し上げた。また、撮影の喜久村徳章氏は「CURE キュア」(’97)で黒沢清監督、「害虫」(2002)、「黄泉がえり」(2002)で塩田明彦監督と組んできたベテラン・カメラマン。山村の美しい風景が、怖さを引き立てている。特殊造型は“平成ガメラ”シリーズで知られる原口智生氏。一流のスタッフが井口監督を支え、井口監督らしからぬ(ゴメンなさい)“映画らしい映画”に仕上がっている点も注目したい。
「初めて組んだスタッフの方が多かったですね。もう、すごいキャリアのある方ばかりで、僕にはそれもプレッシャーでした(苦笑)。今回、実はもうひとつ裏テーマがありまして、ほんと純粋な娯楽映画をつくりたいなと。楳図さんのちょっとシュールな世界を、映画として分かり易いものにしたかったんです。主演2人の女の子のアイドル映画にもなってると思うし。誰が観ても楽しめる作品になったんじゃないかなと」

 楳図ワールドに欠かせないのが、美少女の存在。楳図作品は怖いだけでなく、思春期の少年少女の内面のうつろいを繊細に描いているのも特徴なのだ。その点も、井口監督はきっちりクリアしています。
「実際に現実の少女を描こうとしたら、生々しいものになっちゃうと思うんです。楳図先生が漫画ならではのリアリティーを追求していたように、僕も映画の中のリアリズムを目指しました。まー、男側の妄想なんですけどね(笑)。現実にはありえない少女同士の美しい幻想の世界です。原作、脚本、監督みんな男性だから描けた世界でしょう」

 妄想パワーで突き進む井口監督の熱い想いに応えてくれたのが、成海璃子、中村有沙という2人の新進女優。難役に挑んだ2人に、鬼才はいったいどんな演出を施したのだろうか?
「僕が12〜13歳の頃と比べてみると、2人とも大人の女性って感じでしたね。2人には常に敬語で話しかけていました(笑)。中村有沙ちゃんには『目を見開いて!』ってずっ〜と言ってました。それと『子役らしい演技をしてください』と。成海璃子さんには『もっとヘビっぽい演技して』『シュ〜ッ、シュ〜ッって言って』とか。成海さんには『私、ヘビ見たことないから分かりません』って言われちゃいました(苦笑)。そうそう! 成海さんが有沙ちゃんを追い込むシーンは、『野獣死すべし』(’80)の松田優作の目をしてくださいと頼みました。成海さんに『私、知りません』って言われたんで、僕が表情つくって見せたんですけどね」

 12、13歳の女の子を相手に汗まみれで演技指導する井口監督の姿が目に浮かびます。でも、その甲斐あってヘビ女と対峙するクライマックスは、“愛とは、愛する人のすべてを受け入れること”という井口美学が結晶化したものに。
「クライマックスのシーン、男性には評判いいんですけど、女性はクールで『笑っちゃったぁ』なんて言われてます(苦笑)。でもですね、現実ではありえない世界だからこそ、映画に撮っておきたいと思うんです。そして、それをやるのは自分の他に誰がいるんだっていう気持ちもありますしね」

「怖くて、まだ楳図先生に感想は聞いてません」と謙虚に語る井口監督だが、実はすでに次回作が決まっている。こちらも楳図かずお原作の実写版「猫目小僧」。市原悦子主演の2時間ドラマ「家政婦は見た!」をホラー・テイストにしたような作品になるらしい。すでに撮影を終え、残すは編集作業という段階。来年の公開を目指しているとのこと。こちらもチョー楽しみ。

 いくつもの類い稀なる才能が、グランドクロス(惑星直列)のように重なりあって生まれた映画「まだらの少女」。楳図漫画屈指の人気キャラ“モクメ”が登場する「ねがい」との2本立て上映(6月25日〜7月1日)は、楳図ワールド史上至高の映像プログラムといつか呼ばれるようになるだろう。

(取材・文/ライター長野辰次)



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