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| 「日本の各地を旅しまして、伝統的沿岸捕鯨を調べていくうちに、戦後マッカーサー総帥が捕鯨に対しての規制を解除した事実を知り、面白みを感じました。そこで、色々な日本人がマッカーサー総帥に宛てた手紙を一部入手し、少々手を加え歌にして、映画冒頭や劇中に内容を挿入しました」と、音楽にも“捕鯨”をちりばめたことを明かしたマシュー・バーニー |
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映画終盤の妖美漂う場面写真。公私共にパートナーである(左)ビョークと(右)マシュー・バーニーの愛が画面いっぱいに拡がる。
また、花嫁の衣装はコヨーテの毛皮、帯はシカの皮、外の着物部分は牛の皮で出来ており、花婿の衣装は着物部分は馬の皮、袴は牛の皮、そして男女共に長襦袢はエルクの毛皮が使用されている。これは映画のモチーフに用いられている“鯨=海に住む哺乳類”に対して、花嫁・花婿は“西洋の客人=丘の上に住む哺乳類”を強調するために、あえて毛皮を用いたそうだ |
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(上)満席状態のトークショー会場。丁度マイクをもっている人を見ることができるだろうか。
その人は、バーニーがこだわっていた捕鯨船“日新丸”での撮影を可能にするために尽力したその人だ。バーニーが暖かい笑顔を持ってお礼を述べていた姿が印象的であった
(下)トークショー会場に入れなかった人々が美術館内に設置されたモニターで、トークショーの様子を見つめている。4個用意されたモニターはすべて20人ほどの人々が集まり、バーニーの言葉を熱心に聴いていた。中でもメモを取っている人々が数多くいたことにおどろかされた |
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| 「会場風景」映画の世界を彫刻にしたものが展示されている。どの作品も映画の中で見たシーンが多く再現されており、映画鑑賞後会場を巡った筆者は、感動してその場を動けなくなること、しばしば。写真は伊勢神宮の式年遷宮をモチーフにした作品 |
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本展覧会をあわせて楽しんで欲しいアイテム2点
(上)本展覧会の公式カタログ。このトークショーでスライドに使用したバーニーのメモや資料などが事細かに掲載
(下)音楽界のシャーマン、ビョークが全面的に関わった音楽を収めたサウンドトラック「ミュージック・フロム『拘束のドローイング9』」[c]UMKK |
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マシュー・バーニーPROFILE:1967年米生まれ。1989年イェール大学で医学を修めた後、美術と体育を学ぶ。フットボール選手の特待生やファッション・モデルなど多彩な経験を経て、1991年サンフランシスコ近代美術館での個展以降、映像と彫刻を中心に、活発な制作活動を展開。整形用の強化プラスチックやシリコン、ワセリンなど独特の素材を用いる作品が多い。また映像作品においては代表作「クレマスター」シリーズ1〜5に見られるように、重厚で壮大な雰囲気の作品を制作。今世界で最もカリスマ性の有る現代美術家
【拘束のドローイング展】
■開催日時:〜8月25日(金)
10:00〜18:00 ※(金)(土)は20:00まで
■「拘束のドローイング9」上映時間:
10:00/14:00/18:00〜20:30(終)
■会場:金沢21世紀美術館 ■問い合わせ先:076-220-2800
【公式カタログ】
「MATTHEW BARNEY DRAWING RESTRANT VOLII 2005」
■仕様:カバー、プラスチック特殊仕様、本文166頁
■本体価格:¥3,000(税込¥3,150) ■発売時期:8月上旬
■特典:特製ステッカー付き ■発売・販売:UPLINK
【サントラ詳細】
「ミュージック・フロム『拘束のドローイング9』」
■発売日:7月21日(日本先行発売) ■価格:2,548円
■Total Time:52:08 ■発売・販売元:ユニバーサル
■収録曲:
1.グラティテュード/2.パール/3.アンバーグリース・マーチ/4.バス/5.ハンターヴェセル/6.注連縄(しめなわ)/7.ヴェセル・注連縄/8.ストーム/9.ホログラフィック・エントリーポイント/10.シテイシャ/11.アンタークティック・リターン
Matthew Barney "Drawing Restraint 9" (2005) Production Photograph.
[c]2005 Matthew Barney. Photo: Chris Winget. Courtesy Gladstone Gallery, New York [c]2005 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa, all rights reserved

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円盤型の近未来的美術館に 世界が注目するマシュー・バーニー現る

バーニーが表現活動を始めた最初期から取り組んできたテーマ「拘束のドローイング」は、身体へ大胆な不自由(=拘束)を与えドローイングを行い、人間の身体やそれを取り巻く世界、身体内の活動や、エネルギー問題を提示する連作アート作品だ。金沢21世紀美術館にて、8月25日(金)まで開催されている展覧会「拘束のドローイング展」は、この連作アートシリーズの“拘束のドローイング1〜8”のインスタレーションの展示と、バーニー最新作映画「拘束のドローイング9」(以下DR9)を上映。中でも、最新作映画「拘束のドローイング9」は、“拘束”をベースに日本の文化である“捕鯨”や“茶道”をテーマに加え、バーニー独自の解釈を映像化したおとぎ話のような壮大な映画であること、さらには公私共にバーニーのパートナーであるビョークが共演&全面的に音楽を手がけていることで大きな話題を呼んでいるのだ。
展覧会初日の7月2日(土)、バーニーによるスライドを用いてのトークショーが開催されるとの一報を受け、前作「クレマスター」シリーズで心を打ちぬかれ、全国鑑賞行脚を敢行した過去を持つ筆者は、「これは行かねば!」とはやる気持ちを抑えながら会場へ向かった。 |
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「自分自身の考えなどが 一番うまく表現できるところは捕鯨船である」

バーニーの登場を前に老若男女入り混じる観客たちの間にピンとした緊張感が張り詰めるなか、ラフな服装に身を包んだバーニーが登場。
前作「クレマスター」5部作は、ヨーロッパ諸国を舞台に繰り広げられた物語であるのに対し、本作DR9は日本が舞台で“捕鯨”をテーマとした作品。捕鯨文化そのものに着目した理由について、以下のように語った。
「私が製作する彫刻作品に使用するワセリンは石油が原料なのですが、このワセリンはそもそもどんな物質で、どのような歴史があるのかということについて、自分が今まで取り組んでいなかったということが頭にありました。そこで、本作を手がけるにあたり考えていると、鯨油が原油に置き換えることが出来ることに気が付きました。そこで日本の捕鯨について詳しく調べていくうちに、自分自身が持っている彫刻家としての物語性や、材料への思いなどが一番うまく表現できる場所は、解体から精油までが可能な捕鯨船(=日新丸)であると、思い至ったのです」。
また「鯨はロマンティックな側面を持つ生物」と別に表現しながら、決して捕鯨自体を否定せず
「日本の捕鯨やそれにまつわる様々な伝統と言い伝え、神話などを内包的に一体化させていくことで、自分自身をそこに重ね物語っていきたいと思った」と、捕鯨に対する負のイメージに惹きつけられたのでは無いことを強調。
そして劇中とても重要な鍵“茶道”をについて
「お茶席というものは(バーニーとビョーク扮する)西洋の客人が正式な関係を結ぶ場として有効ではないかというのがまずあり、そして茶器はお茶という液体を入れる容器であり、捕鯨船もワセリンを積んだ容器であるという重なり合う関係性を考えていったのです」と、日本の茶婚式を目的としながら、背景に“茶器=器=船”という関係性を築いてから物語を組み立てていった経緯を明かした。
スライドでは「伊勢神宮の式年遷宮」「出島」「真珠」「竜涎香(鯨の腸内に出来る結石)」など、日本古来の文化にまつわる写真やイラストが次々と写し出され、彼の頭の中で綿密に絡み合い、どの場面に反映させたかを説明。
ここでどのように反映されたかを書くとネタばれになるので内容は割愛したいが、ここまでの話を聞くにつれ、前作「クレマスター」5部作は肉体にまつわるエピソードを掘り下げた作品との印象を受けたのに対し、DR9は物事が横に繋がっていっている点が大きく異なる作風だなと、ふと気付いた。
「前作『クレマスター』は、己とは何者であるかを深く掘り下げた作品でした。本作は別々の物と物との関係性を描いていて、過去の作品とは全くの対極に位置していると気が付いた時、自分自身でとても興奮した」と、当時の心境を振り返った。常に進化を求めるバーニーは、この映画で大きく前進したのだ。 |
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「今の世界の状況でどうやって生きていくべきか 最後の花の場面に強い希望を込めている」

物語についてのバーニーによる説明が終わった後、観客の「この映画への個人的感情は?」という質問に、彼はしばし空を見つめ、ゆっくり
「(映画の)最後に花が登場します。それを通じて見えてくるものは希望である、ということが私の考えです。今の世界情勢に直面している我々がどうやって希望を持っていくことが出来るのか、そういったことを考えながら、花の場面に込めた希望を、観ている人々に汲み取って欲しい」
と、穏やかな表情をたたえながら答えた。妖美漂う最終場面に、そのような強い希望が込められていた事実を明かしたこの発言が終わったと同時に、会場は大きな拍手に包まれた。その場に拡がる大海原のような感動の渦に筆者も大きく飲み込まれ、手が痛くなるまで拍手。
これから鑑賞する人は、8月上旬に発売される公式カタログ「MATTHEW BARNEY DRAWING RESTRANT VOLII 2005」を事前に熟読して欲しい。バーニー本人が、映画の製作段階でイメージを固めるために描いたドローイングや、映画のスチールなどが多数採録されており、トークショーで使用された画像も採録されているので、このカタログを読み、映画を鑑賞するとより理解が深まるはず。
さらに、本作のサウンドトラック「ミュージック・フロム『拘束のドローイング9』」は、映画で共演し、プライベートでもパートナーであるビョークが全面的に手がけた音楽が収められている。台詞の様に映画を彩るサウンドは、雅楽器や能楽など馴染み深い音が現代的になり、音楽だけで聞いても大変すばらしいのでこちらも必聴ものだ。
今回の作品のテーマで有る“拘束”は左記写真(5点目)のカタログ表紙に描かれたフィールドが象徴とされている。「フィールドを横切る棒が外れたり元に戻されたりすることで、成長を遂げていることを示唆している」と語っていたバーニー。深い感動はもちろんのこと、日本人の愛国心が薄れていっていると危惧されている今だからこそ、皆に観てもらいたいと心から思わずにいられない。鑑賞後には、あなたの中で何かが成長しているはずだ。
(取材・文/MovieWalker編集部 浅沼祐希) |
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