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2005.11.11(金)更新
【動画・絵看板除幕式レポート】
時代に翻弄された映画人を描いた「カーテンコール」
藤井隆、伊藤歩らが参加しての心温まる除幕式に
【動画・絵看板除幕式レポート】時代に翻弄された映画人を描いた「カーテンコール」藤井隆、伊藤歩らが参加しての心温まる除幕式に
銀座四丁目にある「シネスイッチ銀座」に飾られた「カーテンコール」の絵看板。除幕式のために看板師の久保板観さん、劇中で幕間芸人を演じた藤井隆、芸人を探し歩く取材記者役の伊藤歩が出席した
【動画・絵看板除幕式レポート】時代に翻弄された映画人を描いた「カーテンコール」藤井隆、伊藤歩らが参加しての心温まる除幕式に
ロープを引っ張り、除幕する瞬間。除幕後はしばらく3人ともカメラの存在を忘れて、じっくりと絵看板に見入っていた。「昔の看板って、確かにこうでしたねぇ」と藤井は手描きの温かみを味わっていた
【動画・絵看板除幕式レポート】時代に翻弄された映画人を描いた「カーテンコール」藤井隆、伊藤歩らが参加しての心温まる除幕式に
看板を見た感想を求められた藤井は「今にも動き出しそう。実物よりカッコよく描いてもらい光栄です」。「映画に自分の人生を重ねて観てもらえるなんて、それだけ素敵な作品に仕上がったんだなと改めて思います」と伊藤
【動画・絵看板除幕式レポート】時代に翻弄された映画人を描いた「カーテンコール」藤井隆、伊藤歩らが参加しての心温まる除幕式に
青梅市内にある久保板観さんの工房。中学生のときに映画看板に魅了されて以来、独学で画法を修得した。「東京の映画館に自分の絵看板を飾ること。それがボクにとってのカーテンコールだね」と笑顔で語った
【動画・絵看板除幕式レポート】時代に翻弄された映画人を描いた「カーテンコール」藤井隆、伊藤歩らが参加しての心温まる除幕式に
「半落ち」「チルソクの夏」で知られる佐々部清監督の最新作「カーテンコール」。下関にぽつんと残った「みなと劇場」の歴史を調べることで、取材記者の橋本香織(伊藤歩)は自身の生きがいや家族について考えるようになる
■「カーテンコール」は11月12日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

(c)「カーテンコール」製作委員会


STAFF&CAST
原案:秋田光彦 監督・脚本:佐々部清 出演:伊藤歩 藤井隆 鶴田真由 奥貫薫 津田寛治 橋龍吾 田山涼成 粟田麗 伊原剛志 黒田福美 福本清三 田村三郎 水谷妃里 井上堯之 藤村志保 夏八木勲(2005/コムストック)111分
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青梅市の名物・映画看板師が
密かに抱いていた長年の夢とは?


 久保板観(くぼ・ばんかん)というひとりの絵師をご存じだろうか? 東京都郊外の青梅市在住の板観さんは、現在64歳。今や数少なくなった映画看板師だ。看板に写真をスライド投影して模写するというスタイルではなく、縦横2mを越えるベニヤ板に和紙を張り、自分の好きな構図、好きな色合いでフリーハンドによって描いている。画材も5色の“泥絵の具”を雨風に耐えられるようニカワで溶いて塗るという昔ながらのやり方だ。

 板観さんは映画全盛期の1950〜1960年代には青梅市の映画館全3軒の絵看板を手掛け、多いときには年間400本近く描いていたそうだ。しかし、テレビの普及とともに仕事は減り、1973年に青梅市最後の映画館が閉館すると映画看板を描く機会を失い、商業看板に転じた。
 板観さんの絵が再び脚光を集め出したのは、1993年から。青梅市の町おこしの一環として新たに描き出したレトロ看板が評判になったのだ。現在ではJR青梅駅を降りると、青梅市の商店街のあちらこちらに板観さんが描いた時代劇やハリウッドの往年の名作の看板が誇らし気に並んでいる。板観さんの手描き看板によって、青梅市の商店街はぬくもりの感じられる個性的な街に変わっていったのだ。

 大好きな映画の看板を描き、みんなに楽しんでもらうという中学生の頃からの夢を再スタートさせた板観さんだが、もうひとつ叶わなかった夢が残っていた。10代〜20代は青梅でしっかり修行を積み、いつかは東京の都心の大きな劇場に自分の絵看板を飾る、という夢だ。
 レトロな筆使いに合わないという理由から今では新作映画は描かないと決めていた板観さんだが、商店街の人から勧められて観たのが佐々部清監督の新作「カーテンコール」。映画全盛期に上映と上映の合間に形態模写や弾き語りを披露していた“幕間芸人”を題材にした物語だ。「カーテンコール」を試写で観た板観さんは、幕間芸人・安川修平(藤井隆)が映画をこよなく愛し、無報酬で働く姿、時代の流れに翻弄される様子に「この人は、自分自身だ」と感銘を受け、新作映画の看板を手掛けることを思い立った。
 板観さんの映画に対する想いは、配給会社や劇場側にも伝わり、ついに板観さんの“最後の夢”が叶うことになった。
駆け付けた藤井隆、伊藤歩の祝福に
最良の日を迎えた映画看板師の笑顔


 「カーテンコール」の公開(11月12日)に先立ち、11月10日、「ニュー・シネマ・パラダイス」(’89)をはじめ数々の名作を上映してきたミニシアターの老舗「シネスイッチ銀座」のエントランスに板観さんの新作看板が高々と掲げられた。シネスイッチに絵看板が飾られるのは、11年ぶりで、リニューアル後は初めて。板観さんの看板が映画館に飾られるのは、なんと30年ぶり。
 映画に人生を捧げたひとりの絵師の長年の夢の成就を祝うために、「カーテンコール」に主演した伊藤歩と藤井隆も劇場前で開かれた除幕式に参加した。

 「自分が絵看板になるなんて、初めての体験。感激ですね〜!」とワールドツアー中の多忙なスケジュールを調整して駆け付けた藤井隆は、この日の主役である板観さんをカメラの立ち位置の真ん中になるように誘導するなど、いつものように性格の良さをにじませながら挨拶。
 幕間芸人を探し求める取材記者役の伊藤歩は「作品の中にも懐かしい絵看板が出てくるんですが、看板に大きく描かれた昔のスターが羨ましかったんです。自分も絵看板に描かれるなんて、一生に一度の経験ですよね」とコメント。配給、劇場側の板観さんへの粋な計らいに二人ともニコニコ顔である。
 司会者が「これで二人とも、映画スターの仲間入りですね」と向けると、藤井と伊藤は「やったね♪」とハイタッチしてみせる、なんともほのぼのとしたイベントとなった。

 除幕式の数日前、青梅市内にある板観さんの工房で制作を終えた直後の板観さんに話を聞く機会があった。いやらしいなと思いつつも、絵看板を描いていた頃のギャラを尋ねた。
板観「中学を出たばかりで実績がなかったので、無料でいいから描かせて欲しいと地元の映画館に頼み込んだんです。その後、3館描くようになりましたが、もらったのは材料代程度。看板を描く合間にポスター張りやペンキ塗りをして生活費を稼いでたんです。いつか腕を上げて、ギャラを上げてもらって東京でバリバリ稼ぐぞという考えだったんですけどね(苦笑)」
 町おこしとして始めたレトロ看板も、やはり材料費のみで引き受けているとのこと。そして今回も、お世話になった人々への恩返しということで無償で描いているそうだ。
板観「生活は惨めなもんでしたが、でもねぇ、お金をもらうことよりも、映画看板を描くこと、そして看板をみんなに楽しんでもらうことが何よりもうれしいんですよ」
 板観さんは2005年4月に前立腺がんの手術を受け、現在も抗がん剤による治療を続けているそうだ。あまり長居し過ぎないように工房を失礼したが、絵筆を持って看板に向かった際の板観さんの笑顔がとても印象的だった。

 藤井隆や伊藤歩と一緒に除幕のためのロープを引いた板観さんは「昭和30年代は生活は苦しかったけど、夢のある楽しい時代でした」と感慨深げに語った。多分、この言葉はどんな著名な映画評論家の洗練されたコメントよりも、映画「カーテンコール」の内容を適確に語っているはずだ。
 幕が外された絵看板を前にして板観さんは、ずっと笑顔で立っていた。体は辛いはずなのに。これも夢を持つ者のパワーなのだろうか。

 板観さん、「最後の夢が叶った」なんて言わないで、もっともっと絵看板を描いてくださいよ。折しも、最近の日本映画は60〜70年代を舞台にした作品が多いことですし。板観さんの温かみのある手描き看板をもっともっと東京中の映画館に飾ってくださいよ。

(取材・文/ライター長野辰次)



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