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2006.5.29(月)更新
【NIPPON EROTICS plus(R18映画最前線)】(10)
「セキ★ララ」公開記念〜松江哲明監督インタビュー
「セキ★ララ」6/3(土)21:00〜シネマアートン下北沢にてレイトショー公開。何と毎回(!)ゲストトーク有り。
6/2(金)までは「あんにょんキムチ」「カレーライスの女たち」もリバイバル上映中。(連日21:00〜)
詳細は公式サイトを。
公式サイト:http://seki-lala.com/
■松江哲明“AV”WORKS・自選ベスト5(順不同)
1.Identity(HMJM)
2.天宮まなみ・赤裸々ドキュメント(h.m.p.)
3.双子でDON!(HMJM)
4.高学歴の女たち(TMA)
5.ハメ撮りの夜明け(HMJM)
(C)2005 ハマジム
1:ご存じ6/3から公開される「セキ☆ララ」オリジナル・ヴァージョン。
2:単体女優ものながら、松江ならではの手法が存分に見える傑作。ラストに起こる「小さなサプライズ」とその瞬間の天宮の「ちょっと良い表情と仕草」に心を打たれる。
3:一卵性双生児のAVギャルでかつての代々木忠ばりの男優騙しを敢行する傑作。ターゲットは「セキ★ララ」にも出演の花岡じった。
4:松江哲明が監督史上最も相性が悪かった女が登場するというオムニバス作品。
5:カンパニー松尾が設立したAV製作プロダクション「ハマジム」の会社案内的作品が、後半「音楽」の登場と共に松江ワールドへと変貌する。松江が初のハメ撮りを敢行した記念碑的作品。 *最新作はこちら「24 REAL SEX」
http://www.av-open.com/charenge/c_entry009.html
(C)V&R Planning Co., Ltd.
■影響を受けたAV5本
1.SEXレポートNo.1 美人キャスターの性癖 (V&R/平野勝之)
2.東京漂流 あなたのお部屋で犯らせてくれませんか? (V&R/バクシーシ山下)
3.2001年・テレクラの旅(V&R/カンパニー松尾)
4.結婚してみませんか(V&R/高槻彰)
5.毒虫(G-Media/インジャン古河)
1:台風の真ん中でセックスを撮るという無茶苦茶な企画で不倫相手を連れて南の島に行く平野。しかし台風が一向に来ない、女の子は鬱に陥りブツブツ言い出し、ひたすらSMに突っ走る2人。結局何もないまま都内に戻ったのだが、そこに何と戦後最大の台風がやって来て…!という映画的スペクタクルが詰まった傑作。
2:「カレーライスの女たち」のアイディアとなった、バクシーシ山下の異色作。女優やスタッフの家にただ泊めてもらってるだけのシンプルな構成が魅力。
3:カンパニー松尾のハメ撮りロードムービーだが、これは「俺は何でAV撮ってんだ」とかAVに疲れた姿が垣間見えて面白い。
4:高槻彰が造ったAVドキュメンタリー史上に残る怪作ドキュメント。
5:もはやAVの枠を越えた3本組6時間強の壮大なるビデオ作品。 目隠し連行でマサイ族とセックスするなど、AV版「jackass」とも言える悪意に満ちた衝撃の世界。
*ちなみに松江監督の一般映画でのベスト3本は「キッズ・リターン」「インディアン・ランナー」「悪魔のいけにえ」とのこと。
【松江哲明(まつえ・てつあき)監督プロフィール】
1977年生まれ。東京都出身。99年日本映画学校卒業制作として在日コリアンである自身の家族の肖像を綴った「あんにょんキムチ」を監督。国内外の映画祭に参加し、韓日青少年映画祭監督賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPAC特別賞などを受賞。2001年にはOV「ほんとにあった! 呪いのビデオ」シリーズを演出する一方、舞台「ハルモニの夢」の脚本も担当した。その他の作品に「カレーライスの女たち」「2002年の夏休み ドキュメント沙羅双樹」(共に03)、「童貞。をプロデュース」(06)などがある。また、役者として「ばかのハコ船」(02・山下敦弘監督)、「手錠(原題:ロスト・ヴァージン やみつき援助交際)」(02・サトウトシキ監督)、「花井さちこの華麗な生涯」(05・女池充監督)といった作品に出演している。
公式BLOG:http://d.hatena.ne.jp/matsue/
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SPOTTED PRODUCTIONS
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いきなりV&R
――いきなりですが、松江さんの所謂「AVドキュメンタリー」というスタイル確立までの経緯をお聞かせ願えれば。最初からドキュメンタリー志望だったんですか?
日本映画学校に入ったのが96年とかで、北野武とか周防正行とか石井隆とか好きだったんで、最初はやっぱり劇映画やりたいと思ったんですよ。ところが講師の安岡卓治さん(「由美香」('97)「Little Birds」('05)などで知られるプロデューサー)に観せられたのが「水戸拷問」('92)(監:平野勝之による過激なAVドキュメント)とかで。とんでもないものを18歳の頃に体験してしまって。最初っからドキュメンタリーっていうかそのへんの所謂V&Rプランニング(社長の安達かおるを筆頭に、平野勝之やバクシーシ山下、カンパニー松尾、高槻彰ら作家性の強い刺激的な作品を生み出して来たAV製作会社)でがつーんと来て、それが面白くてドキュメンタリーをやろうと。原一男さんの「ゆきゆきて神軍」('87)とかも観てもちろん面白かったけど、そっちを観てドキュメントをやろうとは思えませんでした(笑)。
――なるほど、いきなり「AV」の洗礼があったんですね(笑)。その他影響を受けたものは…? 例えば松江さんはピンク映画も結構観てますよね。
ピンクも観ましたね〜。映画学校入った直後がちょうど(ピンク)四天王ブームで。「雷魚」('97)とか。瀬々さん、トシキさん、それからいまおかさんとかも。ピンクって女性が主人公で「物語」じゃないじゃないですか。商品としてセックスシーンがあったりして、ストーリーよりキャラクターに依存するっていうのありますよね。セックスシーン入るとストーリーって止まるじゃないですか。面白いピンクとかAVってそのキャラクターが立つ。だから僕のドキュメンタリーも、「童貞。をプロデュース」('06)(ガンダーラ映画祭出品作品。傑作!)とかみたいに、童貞うじうじしてるだけなのに、キャラで見せることができるのではないか、とか。そういう発想からできてます。とにかく人が活き活きしてるものとか、そういうのが好きですね。V&Rだとカンパニー松尾さんとかバクシーシ山下さんかな。
フィクションから学ぶこと
――そういったピンク映画、更にはヤクザVシネから一般公開される洋邦問わない映画までかなり映画を観てると思うんですが、そういったフィクションからの影響はありますか? 映画的な瞬間がたくさんありますよね、松江さんのドキュメンタリーは。
そうですね、でもそんなに観てないですよ、映画。ゴダールとか観てないし(笑)でも、逆にドキュメンタリー観てドキュメンタリーの参考にするってのはあんまり無いんですよ。全然違う劇映画を観たりして設定おもしろいな、とか。
――なるほど。具体的な例はありますか?
そういう話でいうと、青山真治監督の「ユリイカ」('00)とか観て、映画自体は好きではないんだけどあの「シチュエーション」が好きで、俺ならああしてこうして、と作り方の参考にしたり。あと、神代辰巳監督も大好きで。あの音楽の使い方は凄いですよね! 悔しいのはあれはアフレコでしょう? ドキュメンタリーでやってみたいけどできない(笑)でも。カット割りどうこうじゃない演出とか、参考になりますよね。あと、黒沢清監督のVシネ「勝手にしやがれ」('95〜96)シリーズとか「復讐」('97)とか。銃撃戦を同ポジで切ってるのとか観て面白いなーとか思って。
「水曜どうでしょう」
――逆にドキュメンタリーで参考にしたものは無いですか?
ドキュメンタリーで参考にしたものは……「水曜どうでしょう」(笑)。ドキュメントっていうよりバラエティでおもしろがられてるんですけどね。今の時代はビデオカメラ回しっぱなしでダラダラ撮れるでしょう。1カットでダラダラ撮ったり、呼吸を置いてみたりとか。でもそれが嫌いで、逆に僕はどんどん詰めて詰めてどんどんスピード感出してるんですけど、「水曜どうでしょう」を観て同ポジでどんどん切っていくのが面白くて。かつての「電波少年」もそうですけど、あのスピード感と、間。そういうバラエティ番組を観慣れている人達にドキュメンタリーの面白さを知って欲しいなと、思ってます。
――それは平野さんの作品などにも通じますね。「編集」と「構成」でどんどん面白くなるという。
ドキュメンタリーの醍醐味ですよね。とにかくドキュメンタリーを自己表現のためだけで作っちゃダメだと思うんですよ。そういう人が多過ぎる。何かを訴えるとか。
――従来のドキュメンタリーにはそういうイメージが強いですよね。
そうそう、だから何気なく観ちゃった人を何だこりゃーと思わせるものを作らないと。ピンクでも女池さんとかいまおかさんのってそうだと思うんですよ。そういう人好きですね。ピンクのお客さんはもちろん、ピンク映画を面白くしよう、果てはもっと世の中を面白くしようっていうレベルで作ってる人が。
音楽の意識
――先ほど神代辰巳の話ではないですが、松江さんの作品は音楽の使い方も印象強いですよね。「音楽」も出演者の1人、みたいな印象と言いますか。音楽への意識は何かありますか?
そうですね。ありますあります。バックミュージック的に使ったのは今までだと「呪いのビデオシリーズ」とかくらいで。あれは雰囲気を作らないといけないから。あとはできるだけ本編とかぶらないようにしてる。「セキ★ララ」も合間の黒みにしか出してないし。例えば車の移動のシーンは最初からもう「ここは音楽」って意識で、作ってます。
「作る」ことへの疑い
――松江作品は、平野作品などからの影響はあるといえ、あの抉るような引きずり出すようなパワーに満ちた作品とは全然違いますよね。「セキララ」自体、問題を曖昧にすることで安心する…」云々と宣言しているし(笑)世代の違いもあると思うんですが、そのへんどんな風に考えますか。
そうですね。僕の場合、突っ込んでかないですもんね(笑)「セキ★ララ」で出演の相川ひろみと韓国ロケというアイディアがあったんだけど、女の子に「行かない」って言われたら「わかった」って(笑)。
――そこで平野さんなら行くんでしょうね(笑)。
そうそう(笑)。僕はね、作るってことに対して疑いがあるんです。平野さん…もっと上で言えば原一男さんらの、抉るような演出は面白いけど、「カメラに映ったら別物になってる」っていう意識があるんですよ。そうやって何か撮れたとしても、それを観客がまた全然違う見方をしてしまうんじゃないかっていう。僕自身、前に出て抉ったとしても、映ってる物がもし抉れたとしても「外すな」っていう危険も感じるんですよ。実は「あんにょんキムチ」でも60時間撮ってて、母親をわざと泣かせようっていう演出でインタビューもやったんだけど……あれをやって、何か作りたい物と違うなっていうのがあったんですよね。あと、ビデオっていうのがそういうのが向かないっていうのがある。フィルムはより大きなアクション、抉り方でもフィルターを通して観るっていうことでフィクションぽく見えると思うんですよ。ビデオでやると痛々しいんですよね。でもそこを逆手に取ったのがまた平野さんで、痛々しいものを撮ったとしてもコメディにしちゃうっていう(笑)。それがあの人のすごいところなんですけど。
僕の場合は「演出してない」「自然に撮れてる」とか言われるんだけど…大きなアクションとか大きなリアクションよりもむしろ小さな物の変化の方に興味があるんですよね。大きな喜びよりもくすっと笑うような小さな喜び。そっちの方にこそ普遍性があるんじゃないか…なんて思います。
――なるほど。そういう部分のせいか、松江さんのドキュメンタリーは、対象となる人に観客側もすんなり向かい合えるような気がするんですよね。
一歩引いてる、ってわけではないんですけどね。手法的なところで言えば、僕が喋ってるところを全部同ポジで切ってるんですよ、だからすごい人が活き活き喋ってるように見えるっていうのはあると思います。間をつめる演出+自分の喋ってるところを切って。女の子の目線とかで僕がいること自体はわかるし、僕の立ち位置はそれぐらいでいいんだって思ってます。
「ハメ撮り」について
――ああ、なるほど。それで松江さんは所謂「ハメ撮り」的なものではなく、カメラマンを配置するんですね。逆に、カンパニー松尾さんの影響もあるであろう松江さんにとって「ハメ撮り」とは?
「ハメ撮り」をやるまでは、相手(女の子)の視線がカメラから外れるのが嫌だったんですよ。インタビューシーンだと僕を観てるのに、セックスシーンになると男優の方を観ちゃうんです。カメラに目線が来ない。それがイヤだったです。セックスする前までは主観だったのに突然、第三者の視線みたいになっちゃって。「天宮まなみ・赤裸々ドキュメント」('05)なんかも、最初は信頼してるカメラマンの近藤龍人(「リアリズムの宿」('03)「くりいむレモン」('04))君に頼んで撮ってもらって。それでいてラストでは自分で撮るって決めて、カメラの力関係が変わる効果を狙ったり。撮る時に一番考えるのはその被写体の「視線」ですね。
「悶絶」と「どんでん返し」
――なるほど。そんなわけで「セキ★ララ」なんですが、最近の人って「人間」に対する興味が薄いと思うんですよね、みんな。そういう人に観てほしいですよね。1人1人の人間を見つめる機会が希薄な人たちに。
うん。ちゃんと「人」を観てほしいって思いますね。例えば「三丁目の夕日」('05)とか人が描けてない気がするんですよ。キャラクターは(サザエさん的に)わかりやすい設定だけど記号的で。例えば白い役、黒い役、赤い役、黄色い役…っていう色分けでしかなくて。本当は白黒も赤黒もあって人間っていろいろいると思うんですよ。いろんな色が混ざったりするでしょう。あれは、悶絶もどんでん返しもしてない映画。あ、こないだ観た神代辰巳「悶絶!!どんでん返し」('77)が逆に素晴らしくって(笑)。大きな何かじゃなくてもいいから、小さな悶絶や小さなどんでん返しがあって、それにお客さんがそれぞれに共感したり、感動したり。そういうところまで持って行くのが演出だなって思ってます。(満面の笑み)
松江作品は所謂一般の人が思う「ドキュメンタリー」を想像すると、随分柔和な印象がある。僕らが「観やすい」ということは、平野勝之や原一男をリアルタイムで経験した世代からすれば「ひ弱」な印象でもあるだろう。しかし、その映像は「こう思う」という押しつけもなく、とにかく映し出される人々を見つめることで、観る側に小さな疑問や興味を生み落としてゆく。松江監督は、過激なV&RのAVドキュメンタリーから、ある種のずる賢さやテクニックをきちんと吸収しつつ、「電波少年」「水曜どうでしょう」などに影響を受けたTV世代のライト感覚も持ち合わせた、今の時代ならではの存在である。面白いものであればヤクザVシネだろうとピンク映画だろうとAVだろうとTVだろうと何だろうとどんどん吸収できる。そんなフットワークの軽さは松江監督だけでなく、観る側の同時代を生きる僕らの曖昧さでもあり、逆に強みでもある。是非、肩の力を抜いてこの「セキ★ララ」をはじめとした松江流ドキュメンタリーを(できればリアルタイムで)御覧になって頂きたい。劇映画顔負けの魅力的な「キャラクター」達が織り成す「悶絶」と「どんでん返し」はきっとあなにとって、ささやかな「宝物」になるはずだ。
(インタビュー・文:直井卓俊
/SPOTTED PRODUCTIONS)
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