是枝裕和監督の新作はなんと異色時代劇!! 仇討ちのため上京した若侍の顛末が描かれる

「誰も知らない」(2004)の是枝裕和監督が、新作に選んだ題材はなんと時代劇!! しかも主人公は“へっぴり侍”という、異色な感じもする仇討ち物語「花よりもなほ」。そこで、本作に込めたメッセージを是枝裕和監督に聞いてみた。
時は元禄15年、仇討ちに藩が賞金を出していた時代。父の仇討ちのため上京した青木宗左衛門(岡田准一)は、機会を待ちながら貧乏長屋で暮らす若い侍。だが、実は彼、剣の腕はまるでダメ、逃げ足だけは早い“へっぴり侍”だった。しかも人情味あふれた貧乏長屋の生活は居心地が良く、彼は仇討ちしない人生があることも知ってしまう。 |
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「時代劇は好きでよく観るのですが、葛藤しながらも最後は主人公が敵を討つ物語が多く『なんだ結局殺すのか!』と思っていたんです。そこで、殺したり、殺されたりすることにカタルシスを求めるのではない物語が作りたくて、仇討ちをしない侍の話が浮かびました。実際に調べてみると、仇を討ったことにして全然別人のされこうべ(どくろ)を持っていったり、まげだけ切って持っていってお金を貰ったなんて話が結構あるんです。『そういうのが人の知恵だよな』とすごくうれしくなりましたね。
舞台となっている元禄時代というのは、戦国時代が終わってから100年ぐらい経った時代なんですよ。戦いを語れる人間はみんな死んでいるし、日本刀を差しているものの形骸化している。(劇中に登場する)赤穂浪士にしても、人を斬ったことのある人間はほとんどいなかったですし。そうなると、むしろ殺すことに悩む方が自然だし、主人公のような人間が出てきてもいいのではと思ったんです。
荒唐無稽とは思いますが、全く真逆な選択肢を選ぶ侍が、同じ長屋に暮らしているのは面白いと思ったので、赤穂浪士を主人公と同じ長屋に住まわせています(笑)」 |
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「常に全体を考えながら役を作っている 非常に心強かったです」(是枝裕和監督)

本作の主人公・宗左衛門を演じるのは、「東京タワー」「フライ,ダディ,フライ」(2005)など、常に印象的な役どころで観るものを魅了し続ける岡田准一。初タッグを組んだ是枝監督も彼に対して惜しみない賛辞を送る。
「宗左(宗左衛門)は、相当演技力が要される役なのですが、繊細な芝居をする岡田くんならと思いオファーしました。彼は、想像以上に素晴らしい俳優で、『悩むのが趣味なんです』と言うぐらい、撮影中いろいろ考えていました。1シーン、1シーンに流れる感情や心情の変化を、深いところで理解し、表現してくれるので、より複雑で陰影の深いものになったと思います。彼の場合、映画全体のバランスを考えながら喜怒哀楽を表現しているんです。結末にたどり着くまでの物語の中で、笑顔ひとつとっても、どのくらいの笑顔なのかを考えている。仇討ちの敵を見つけて刀を抜くシーンにしても、角度や刃の長さなど微妙な部分まで考えている。普通は、そういうことは監督が考えるものなのですが(笑)、そこまで考えてくれているので心強かったし、楽しかったですね」 |
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「宗左衛門はとても魅力的な男の子」 とコメントをくれた岡田准一が魅力をPR

「みんなは宗左(宗左衛門)のことを弱くてへっぴりだと言いますが、悩みながらも、ちゃんと受け入れる強さを持っている。とても人間らしい魅力的な男の子だと思います。是枝監督は、変化を楽しむ余裕と自由さを持った方で、スゴイの一言です。そんな監督の作品に参加できたのはうれしかったです」 |
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「どうやって人を殺そうか考えている侍が、日々どう生きるかを考えながら貧乏長屋に暮らす住人たちとのふれあいを通じて、変化していく様を楽しんで観て欲しい」とアピールする是枝裕和監督が撮りあげたのは、軽快なリズムでつづられた愉快で痛快な娯楽作。これはやっぱり見逃せない!
(取材・文/ライター大西愛) |