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| 映画「壁男」のティーチインに出席した早川渉監督(右)と堺雅人。名古屋出身の早川監督は、札幌在住のCMディレクターでもある。堺はこれまで「ココニイルコト」(2001)、「壬生義士伝」(2003)、「ハチミツとクローバー」(2006)などの映画に出演している。「宮崎出身なので、冬の札幌での生活は貴重な体験でした」と堺はコメント |
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| 北海道と関東の人間性の違いは?という観客からの質問に対して、堺は「東京は1つ1つの仕事が専門化されている。役者ならお笑いの人、映画にしか出ない人とか。それに比べると北海道はいろいろできる懐の深い人が多いように感じます。早川監督もCMディレクターしながら、映画を制作してますし。面白い人が多かったですね」と北海道ロケを振り返った |
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| 主演の堺雅人と小野真弓以外は、すべて北海道のキャストとスタッフでつくられた。早川監督は「北海道の特性のひとつは歴史がないこと。歴史がない分、しがらみが少なく足を引っ張られることもない。みんな伸び伸びしているのも北海道のよさでしょう」と語った |
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冬の札幌で“壁男”の噂を追うカメラマンの仁科(堺雅人)とレポーターの響子(小野真弓)は、次第に自分と他者、現実と夢を隔てる境界線を見失っていく。 ■「壁男」は2007年秋よりテアトル新宿にて公開 ©2006「壁男」製作委員会 |
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STAFF&CAST 原作:諸星大二郎/監督・脚本:早川 渉/出演:堺 雅人 小野真弓 水戸ひねき(2006/トルネード・フィルム)98分

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壁に潜む“壁男”とは一体何者か? 原作をアレンジした異色サスペンス

漫画大国ニッポンの誇る鬼才中の鬼才、諸星大二郎の原作コミックが映画化された。諸星作品の映画化は、これまでに沢田研二主演「妖怪ハンター ヒルコ」(’91)、阿部寛主演「奇談」(2005)と“稗田礼二郎のフィールド・ノート”シリーズの2作品があるが、今回は『夢の木の下で』に収録されている短編「壁男」。舞台を東京から冬の札幌に置き換えて、北海道在住の早川渉監督が堺雅人主演作として撮り上げた。一般公開は2007年秋の予定だが、第19回東京国際映画祭の「日本映画・ある視点」部門でお披露目上映されたので、ティーチインの模様と合わせて速報レポートしたい。
過去に映画化された「ヒルコ」と「奇談」が諸星作品特有のその土地に根差した土着的なおどろおどろしさをどう映像化するかに苦心していたのに対して、今回の「壁男」は雪に閉ざされた静かで落ち着いた街・札幌が舞台。またNHK大河ドラマ「新選組!」での山南敬介役の印象の強い好感度俳優・堺雅人を主演に迎えたことで、諸星ワールドの雰囲気ががらりと変わっている。
札幌のローカル・テレビ局でレポーターをしている響子(小野真弓)のところに“壁男”にまつわるハガキが送られてくる。そのハガキを元にした響子の番組がきっかけとなり、壁男の噂は次第に広まっていく。響子の恋人であるカメラマンの仁科(堺雅人)も壁男の存在に興味を持つひとり。毎日、街中の壁をカメラで撮影していくうちに、壁の向こうに何者かの存在を感じはじめる。人間には干渉せず、ただ人間の生活をじっと見続ける壁男とは一体何者なのか?
これまでCMやグラビアを中心に活動し、女優としてのキャリアは浅い小野真弓だが、地方局のレポーター役はぴったりの適役。仕事はバリバリできるのに地方都市でくすぶっているカメラマン役を舞台出身の堺雅人が持ち前の演技力で巧みに演じている。諸星作品にときどき垣間見られる、とぼけたユーモア感覚をローカル局の番組内に盛り込みつつ、原作とはひと味違った映像作品になっているのだ。 |
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諸星作品特有の強烈な読後感はそのまま 内面の狂気が覚醒する様をクールに描写

10月22日、TOHOシネマズ 六本木ヒルズでの上映終了後に早川渉監督と主演の堺雅人が登場してのティーチインが行なわれた。近年ユニークな作品が揃う「日本映画・ある視点」部門のプログラミング・ディレクターである矢田部吉彦氏の司会のもと、2人は次のように諸星作品の映画化について語った。
早川「諸星さんの原作『壁男』は1997〜98年頃に読み、『あ、これは面白い。次回作はこれを撮りたい』と思ったんです。前作(『7/25【nana-ni-go】』)を撮り終え、1999年頃に札幌から諸星さんに電話をしたところ、すぐに映画化を快諾していただきました。諸星さんはすごくいい人で、年賀状に毎年『楽しみにしています』と温かいひと言が添えてあり、やがて『焦らず、ゆっくりやってください』に変わり、最後にようやく『おめでとう』に変わったんです(笑)」 堺「ボクは原作よりも脚本のほうが先でした。ホラーというよりファンタジー的作品だと思います。観て『うわ〜、怖い!』という作品ではなく、観終わってふと考えさせられる内容です。撮影の行なわれた札幌は初めてでした。実際に札幌に足を踏み入れウィークリー・マンションで生活したことで、映画での仁科という男が分かってきた部分が大きかったように思います」
原作ファンとしては、ほとんどマスメディアに姿を見せない諸星先生はどんな人物なのか気になるところ。早川監督、諸星先生宅にお邪魔しての打ち合わせの際に映画化についての注文などはありました? 早川「いや、注文は一切ありませんでしたね。当時、実写映像化された諸星作品は、『ヒルコ』と『復讐クラブ』(フジテレビ系『世にも奇妙な物語』)ぐらい。諸星さんは大変な映画ファンで、原作者として原作をそのまま映画化されると面白くないと言われたんです。映画化する以上は、もう監督のもの。好きに料理して欲しいと言われました。途中のシナリオ・チェックなどもまったくされませんでした」
なるほど、今回の「壁男」が映画としてのオリジナル性があるのには、原作者との間でそんなやりとりがあったからか。では、お2人に質問。諸星ワールドの魅力はどんなところでしょう?
早川「手塚治虫賞を受賞した初期の『生物都市』を小学生の頃にリアルタイムで読んだんです。当時からすごい漫画家が現れたと思いました。いろんな分野の作品を描いており、ストーリーテラーとしてもSF作家としてもすごい人ですね。ボクが諸星作品に感じるのは、こちら側とあちら側という境界線をめぐって異界とせめぎあい、交流するという独特な世界観。このことは今回の映画でも描いているつもりです」 堺「諸星さんの作品はたくさんありますよね。ボクはそれほど読んでいるわけではないですが、読み終わっても目に焼き付いて離れない、粘着質というか強烈な読後感があります。今回の映画化では、その粘着質の部分をちょっと乾かしたものになってると思うのですが。でも、そのまとわり付くような感覚が、原作の魅力でしょうか」 早川「堺くん、それは適確な意見だね(笑)。諸星ファンならご存じでしょうが、諸星さんの漫画は東京か南の国を舞台にしたものが多いんです。今回のように雪が積もっている景色の出て来る作品はほとんどないように思います。そういう意味では、諸星ファンにとっては従来のイメージとは違うかもしれません。でも、堺くんが言ったように湿度のない北海道を舞台にしたことで、今までの日本のホラーとも、これまでの諸星作品とも違った映画になったんじゃないかと思うんです」
映画「壁男」の仁科は壁男の正体を追ううちに、やがて追い掛けている自分は何者なのか?という脳内迷宮へと迷い込む。モンスター系ホラーというより、純文学的匂いのするサイコ・サスペンスとなっている。 塚本晋也監督の「ヒルコ」のようなスペクタクル感、CGを駆使した「奇談」のようなストレートな分りやすさはないかもしれない。しかし、諸星大二郎のような異色漫画家のコミックを映像化する上で、新しいアプローチを試みている点は高く評価したい。漫画大国ニッポンには、まだまだ映画化の可能性を秘めた傑作コミックが数多く眠っていることを証明した1本といえるだろう。
(取材・文/ライター長野辰次) |
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