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| 「枯渇化している社会に、一滴の涙のしずくを落としたい。そういう潤いのある作品にしたかった」と話した奥田瑛ニ監督 |
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| 愛情を知らない杉浦花菜演じる幸と緒形拳演じる松太郎が、旅を通して心を通わせていく姿は胸を打つ |
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| 「映画監督を天職と考えるならば、天職に恥じない監督にならなければと思って、『長い散歩』を撮ったんだけれども、やっぱり変わったね。変なことできなくなった。いい意味でストイックになったしね」と明かす監督 |
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| 松太郎と幸が、旅の途中で出会う青年ワタルを演じた松田翔太も好演 |
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| 「人の琴線に触れるような映画で、エンターテインメントとして成立する映画を撮り続けたい」と口にする映画監督、奥田瑛ニの躍進に注目だ! |
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【奥田瑛二監督 プロフィール】
1950年愛知県生まれ。藤田敏八監督の「もっとしなやかにもっとしたたかに」(’79)で主演デビューを果たす。以後、映画、テレビ、舞台と幅広く活動。「海と毒薬」(’86)で毎日映画コンクール主演男優賞を受賞し、「棒の哀しみ」(’94)では、ブルーリボン賞をはじめ主演男優賞を総なめにする。実力派俳優としての地位を確立する一方で、初監督作「少女 an adolescent」(2001)が、第17回パリ映画祭、第16回AFI映画祭でグランプリを受賞するなど高い評価を受ける。本作「長い散歩」では、モントリオール映画祭でグランプリを含む3冠を達成。待機作に「風の外側」(2007年公開予定)がある
【STAFF&CAST】
監督・原案・企画・出演:奥田瑛二 脚本:桃山さくらほか 歌:UA 出演:緒形拳 高岡早紀 杉浦花菜 松田翔太 木内みどり 原田貴和子 津川雅彦(2006キネティック)136分
■12月16日(土)より、Q-AXシネマほか全国順次公開

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今度のテーマは“幼児虐待” 「いちばん撮りたかったのは優しさ」

監督デビュー作「少女 an adolescent」(2001)では“援助交際”を、2作目の「るにん」(2006)では“生と死”を題材に男女の純愛を撮りあげてきた奥田瑛ニ監督。3作目となる「長い散歩」で彼が挑んだのはなんと“幼児虐待”。先のモントリオール映画祭で、グランプリを含む3冠を達成するという快挙を成し遂げた彼に、本作への思いを語ってもらった。
「この映画でいちばん撮りたかったものは優しさです」と、作品への思いを口にした奥田瑛ニ監督。映画「長い散歩」では、連日のように報道される“幼児虐待”を題材に、初老の男と少女の旅をファンタジックに映しだし、心温まる物語に仕立て上げた。
「『こんな日本に誰がした!』じゃないですけど、本来、日本人が持っていた情緒感を大切にしたいなと思ってこの映画を撮りました。愛ひとつとっても、柔らかい愛から硬質な愛までいろいろ使い分けていたはずなのに、今では全部一緒になっている。だから、もっと日本の良さを分かろうよ、思いやりを持とうよというのが、テーマになっています」 |
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「手を差し伸べる勇気が大事だと思う それでひとつの命が報われるのだから」

本作の主人公・松太郎(緒形拳)は、亡き妻への贖罪の念を背負いながら孤独に生きている初老の男。引越し先のアパートで、いつも天使の羽をまとっている少女・幸(杉浦花菜)と出会った彼は、彼女が母親(高岡早紀)から虐待を受けていることを知る。心を痛めた松太郎は、幸を連れて旅に出ることを決意する。
「この物語を書いたのは3年前なのですが、最近、似たような事件が毎日報道されてますよね。『その根っこにあるものはなんだろうか?』と考えた時に思うのは、周囲の人も知っていただろうし、見ていたということ。確かに、松太郎のしたことは犯罪だけど、誰かが手を差し伸べることによって、ひとつの命が報われて閉ざされた心が開いていく。いまの世の中に一番足りないのは、やっぱり人を信頼することだと思うし、信頼すれば優しさや思いやりも自然と生まれてくると思うんだよね」
と奥田瑛ニ監督は真摯な眼差しで語ってくれた。
主演は「武士の一分」(公開中)でも圧倒的な存在感を残す実力派俳優・緒形拳。撮影中から彼は「これは僕の代表作になる予感がする」と話していたとか。それでも撮影開始の頃は「毎日が闘いだった」と振り返った監督。
「最初の頃は、言葉こそ丁寧ですけど、それこそ連発で緒形さんにもダメだししていました。『今の芝居は、テレビ・ドラマで何回も見た芝居なのでいりません』と言うと、彼はむすぅっとする。でも、ダメな理由をきちんと説明すると、少しうなってから『分かった分かったごめんごめん』となるんですよ。役者をやっていたから、役者の気持ちも分かるし、芝居のイメージも伝えやすい。そこは、役者をやってきて良かったなと思う所ですね。それにしても、緒形さんの眼差しは本当に強烈なので、平静を保つのが大変でした(笑)」
その緒形拳を筆頭に、母親役の高岡早紀も、旅の途中で出会うワタル役の松田翔太も、心に痛みを抱えているキャラクターを躍動感たっぷりに演じているのが印象的。すると監督は、こんなエピソードを教えてくれた。
「撮影前の翔太は『親父や兄と違ってテレビとか映画とか関係ない!』と言っていた。ところが撮影が終わったら僕の所に来て『反省しております。僕、映画俳優になります』って言ったんだよ(嬉)。みんな僕の撮影現場を経験するとそういう風になっていくんだよね」
ちなみに高岡早紀は、その虐待母ぶりもさることながら、名古屋弁も見事に披露。「『なぁにぃやっとるのぉ』がもう自然だよねぇ」と彼女の名古屋弁に監督も大満足のようだった。 |
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「今撮らないとだめだと思った 日本的な景色はやっぱり素晴らしいよね」

物語の舞台となったのは、監督にとってゆかりのある土地ばかり。そこには、何か狙いがあったのだろうか?
「今から7年前、風通しの悪い町を探している時に偶然お墓参りで地元に戻って来て、瀬戸市を訪れたら『ここにあった』と『少女〜』を撮った。なぜか『長い散歩』の時も、ここで撮りたい気持ちになって、お隣、多治見市で撮ることになった。監督としては“してやったり”なんだけど、反面切ないですよ。映画というフィルターを通して故郷を見ると、訪問者だから分かるうすら哀しさがある。でも、それが映画として映るとイキイキしてくるんです。そういう狙いはありましたね」
続けてこうも話す。
「過去には隆盛を極めた商店街も、立派な数寄屋造りの建物も、現在ではシャッター街となって、全部閉ざされているんです。それは町に蓋をしているようなもので、風通しも悪いから真空状態になってしまう。町全体が酸欠を起こしているから、犯罪へとつながってしまう。でも、蓋をとれば風光明媚な景色もあるし、鳥も飛んでいる。川には魚が泳いでいる。その日本的な景色を今おさめておきたいって思ったんです」 |
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「るにん」の取材時に「映画監督を天職とするなら3本目の作品選びが大切」と言っていた奥田瑛ニ監督。次作も既に撮影が終了しているそうで、その創作意欲はつきることがない。そんな彼が、自信を持って贈る「長い散歩」は、殺伐とした世の中に、希望という名のほのかな灯火をともす老人と少女の物語。緒形拳の代表作となるとともに、小さな大女優・杉浦花菜の誕生作にもなったファンタジー。監督&緒形がふたりして“小さな悪魔”と目を細める彼女の演技にも注目したい作品だ。
(取材・文/ライター 大西愛) |
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