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| 渋谷HMVで行なわれた石坂浩二著「金田一です。」出版記念トークショー。石坂浩二と一瀬隆重プロデューサー(右)とは26年来の付き合いとなるそうだ。この2人と縁の深い市川崑監督とのトロイカ体制で、リメーク版「犬神家の一族」はつくられたのだった |
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| 市川崑監督の人柄を語る石坂。「素直じゃない人(笑)。三谷幸喜さん脚本、松嶋菜々子さん出演の『古畑任三郎ファイナル』を観てるのに、三谷さんにはそのことは言わないで、『君、なんで出演してるの?』なんて言う人なんですよ。ボクもへそ曲がりだから、監督とは丁々発止でやりとりしてます」 |
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| 若手時代には「夢みるように眠りたい」('86)、「帝都物語」('88)などを手掛けた一瀬隆重プロデューサー。「リング」('98)シリーズの印象が強いため、「市川監督からは『もっとホラーっぽくした方がいい?』なんて尋ねられましたが、『いや、前作の通りに』と答えました(苦笑)」 |
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| 石坂浩二の新刊「金田一です。」(角川メディアハウス/税込1680円)。金田一耕助の役づくりなどについてじっくり述べている他、リメーク版「犬神家の一族」のスチール写真、オフショット写真も満載。肩の凝らない内容になっている。石坂が市川監督につくっていた料理についても触れてある |
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一瀬Pを映画業界に導いたのは、 石坂浩二と「細雪」の現場だった

本名・武藤兵吉、愛称・へーちゃん、カレーパン・マニア、「横浜人形の家」館長、特撮ドラマの金字塔「ウルトラQ」「ウルトラマン」の名ナレーター、視聴率56.3%を記録した人気ドラマ「ありがとう」で水前寺清子のご主人を演じた人、元劇団「四季」演出部所属、リアル路線を目指した4代目「水戸黄門」、リメーク版「日本沈没」(2006)で非業の死を遂げる日本国総理大臣、芸能界一のうんちく王……etc. 名探偵・多羅尾伴内のごとく実にさまざまな顔を持つタレント、石坂浩二。しかし、何と言ってもいちばんのハマリ役は、市川崑監督と組んでの金田一耕助だろう。30年ぶりにリメークされた正月映画「犬神家の一族」の公開を記念して、石坂浩二のエッセイ本「金田一です。」(角川メディアハウス)が出版された。これまでにも小説、画集、翻訳本など多種多彩な書籍を出している石坂だが、新刊「金田一です。」は99年の「コンビニおかずでキュイジーヌ」(光文社)以来の出版なのだ。
12月18日、渋谷HMVにてリメーク版「犬神家の一族」の一瀬隆重プロデューサーとのトークショーが行なわれた。一瀬プロデューサーはJホラー・ムービーの仕掛け人で、ハリウッドで「リング」や「呪怨」などをリメークし、大ヒットをさせたらつ腕ぶりで知られる人物。石坂浩二と一瀬プロデューサー、そして市川崑監督とは「犬神家」もびっくりするような不思議な縁で結ばれているのだ。本や映画のPRに留まらず、映画業界の内幕についての面白トークとなったので、ダイジェストで再現してみよう。
まずは2人の出会いを中心にトークはスタート。
一瀬「オリジナルの『犬神家の一族』('76)を高校1年のときに観て、あまりに面白かったので毎日のように観に行きました。高校時代には自分が金田一耕助を演じて8ミリ映画をつくったりしたんです。当時は痩せていたんで(笑)。それから大学に入って、8ミリで『ウルトラQ』を自主製作しました。5歳の頃にテレビで観た円谷プロ製作の『ウルトラQ』が映像初体験だったんです。その番組のナレーターをしていたのが石坂さん。俳優事典に石坂さんの自宅の住所が掲載されていたので、『無料でナレーターしてください』って手紙をダメもとで送ったら、石坂さんから『OK』という返事の手紙が来たんです。映画業界に入ったきっかけは、石坂さんとの出会いです」
石坂「いろんな出会いがあるよね。あれ、電話したんじゃなかった?」
一瀬「この間、古い手紙を整理していたら、石坂さんからの手紙が出てきました。ディズニーの便せんでした(笑)。それで大阪から東京に来て、石坂さんにいろいろ撮影現場にも連れていってもらったんです。最初に覗いたのが、市川崑監督の『細雪』('83)でした。市川監督が怒っていたのが、すごく印象に残ってます」
石坂「『ウルトラQ』のナレーション、簡単だろうと思って引き受けたら、一瀬くんは歩きながら録音したいと言い出したんだよね。ナレーションを暗記しなくちゃいけなくて大変だった(苦笑)。その次の『理想郷伝説』という自主製作作品には出演もさせられた。完成を楽しみにしていたら、一瀬くん『ボクは監督に向いてないことが分りました。あの作品は封印します』と観せてもらえなかったんですよ」
人気俳優・石坂浩二を自分の自主製作映画にノーギャラで出演させていたとは。ハリウッドも押し切る一瀬プロデューサーのらつ腕ぶりは学生時代からだったらしい。その後、一瀬青年は石坂浩二のすすめもあって、関西学院大学を中退して、上京。石坂の事務所を経て、映画プロデューサーへの道へと進むことになる。
石坂「一瀬くんには東京に出てこいと言いました。大学にいても仕方ないだろうと。当時の一瀬くんは、いわゆるオタクなんだけど、今のオタクとはちょっと違う。淡々とした中にも、プロになるだろうなという匂いを感じさせましたね」
石坂の横で神妙に聞いている一瀬プロデューサーの顔つきが印象的だった。すご腕プロデューサーも、業界に導いてくれた恩人には頭が上がらないらしい。 |
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撮影3か月の予定が4か月に延長 恐るべし、市川組の現場は常識はずれ

トーク後半は市川崑監督の演出や「犬神家の一族」の撮影エピソードとなり、会場に詰めかけたファンを喜ばせた。
石坂「金田一シリーズ以外にも『細雪』('83)『おはん』('84)『ビルマの竪琴』('85)など市川監督の作品にはいろいろ出してもらっているんですね。それで、久しぶりだった『犬神家の一族』の撮影では過去のダメ出しされた記憶が頭に渦巻きました(苦笑)。今回は『台詞をゆっくりね』と言われたぐらいでしたけど。市川監督は基本的に、そううるさくダメ出しされる人ではないんです。映画はキャストで70%が決まると言っている人ですから、キャストが決まった時点で、芝居がダメみたいなことは言いません。でも、スタッフには厳しいですね。照明やカメラ・アングルは、時間をかけてじっくりと決める。1つのセットに照明を30〜40基使って、その分だけ照明スタッフがいましたから。日本映画のいい時代を知っている監督ですから、いい時代の撮り方だったんです」
一瀬「石坂さん、自分の出番がない時も現場に来てましたね。大広間のシーンは最初に撮ったんですが、みなさん緊張してました。松嶋菜々子さんによると、ある男優は緊張のあまり手が震えていたそうです。市川監督、キャストにはうるさくいわないですけど、若い俳優さんに対しては、20〜30テイク撮り直ししてました。そういう現場を石坂さんが上手くリラックスさせて、いいムードをつくってくれてましたね」
石坂「大広間の台詞が重なるシーンは難しいんだ。あのシーンの俳優は大変だった。大広間のシーンには、1週間かけてましたからね」
犬神3姉妹(富司純子、松坂慶子、萬田久子)の台詞が被るシーンは、撮影1週間! ここで会場中のファンはしきりに頷くのだった。
石坂「市川崑監督が怒る時は、すごい。特にステッキなしの時は怖い。ステッキなし監督に気を付けろ〜と言ってましたから(笑)」
一瀬「床が壊れるかと思うくらい、ドンドンドーンって叩くんですよね」
91歳の怒れる市川崑監督を静められるのは、長年の付き合いの石坂浩二ならでは。
石坂「毎日、午後3時にヤクルトを現場のみんなに配ってました(笑)。市川監督も『ヤクルトは腸にいいんだ』とにこやかに飲んでいたよね」
一瀬「長野県の山奥まで、毎日ヤクルトが届けられてきたのには驚きました」
石坂「ヤクルトおばさんって、全国津々浦々にいるんだね(笑)。撮影所のレストランは美味しくないから、市川監督の料理はボクが作っていたんだけど、監督は魚がダメなんで、いつもステーキっぽい肉料理を用意してました。少しでも野菜を食べさせようと、キャベツも炒めたりして。もう保育園の先生みたいなもんですよ(笑)。金田一の服装って、すでに汚れているから調理しても平気ですしね」
1時間にわたるトークの最後は、石坂と一瀬プロデューサーとでエール交換する形で締めくくられた。
石坂「プロデューサーという職業が日本に根付くか、今がターニングポイント。一瀬くんがたくさん儲けてくれれば続く人が増えると思うので、なるべく苦労を顔に出さないで頑張ってください。米国に住まいも移すそうだけど、たまには日本にも帰ってきて、年に1〜2本は日本映画もつくってください」
一瀬「市川監督との今回の仕事は、大変勉強になりました。日本映画の全盛期を知っている監督ですから。撮影期間3か月の予定が、4か月になった。今の監督では考えられない。ふつうなら、すぐ首ですよ。若い監督たちには、もっとわがままになって欲しいですね。市川監督とは、また仕事がしたいです。その時は石坂さんも一緒にいてください。現場が険悪な雰囲気になった際には、やわらげてもらいたいので(笑)」
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現在公開中の「犬神家の一族」だが、市川崑監督を敬愛しているのなら何故、新作を撮らせてあげなかったのかと思うファンもいるかもしれない。しかし、30年前に社会現象にまでなった大ヒット作のセルフ・リメークだからこそ、話題づくりに成功し、しっかり予算を組むことも出来たというのも事実。10億円という予算がなければ、撮影期間に4か月を掛けることも、照明30〜40基を用意することも不可能だったろう。リメーク版「犬神家」は現代の日本映画界でも充分素晴らしい“絵”をつくれることを証明した。石坂浩二が見い出した一瀬プロデューサーが、今後の日本映画界に大きな影響を与えることは間違いないだろう。
(取材・文/ライター長野辰次) |
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