「原作はピンクの表紙だし、俺じゃないなと(笑) でも読んだら敏子はまさに俺自身 だったんです」(阪本順治監督)

夫を亡くし、現実を突きつけられた妻が、平凡な日常から脱却していく姿を描いた「魂萌え!」。人気作家・桐野夏生の小説を映画化したのは、「亡国のイージス」(2005)の阪本順治監督。そこで主人公の主婦・敏子役を演じた風吹ジュンと阪本順治監督にインタビューを敢行! 作品のこと、撮影のこと、そして人生について、ユーモアを交えながら語ってくれた。
「原作者の桐野さんとは以前から親交があったので、この『魂萌え!』も読んでいました」と明かす阪本順治監督。
「まあピンクの表紙だし(笑)、これは俺(がやるテーマ)じゃないなと思っていたのですが、「亡国のイージス」が終わった虚脱状態の時に読んだこともあって、突然選択肢を突きつけられた敏子さんの選びきれない姿に自分を重ねていったんですね。敏子さんに『しっかりしろよ』とツッツミを入れつつ、『それは俺もやろ!』みたいな(笑)。これは、俺が映画化すると面白いかもしれないと思いました」 |
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「映画の中で描かれていない敏子さんを 意識して演じてました」(風吹ジュン)

一方、主演の敏子を演じた風吹ジュンは、
「オファーを頂く前のことなんですけど、風呂婆ぁを演じた加藤治子さんと電話で話している時に、『こういう作品があるんだけど、どうしてこういう仕事に挑戦しないの!』と渇を入れられまして、あわてて本を買いにいったんです」と、本作との出会いを教えてくれた。原作を読んだ時、自分の経験とも重ね合わせ共感したことも多かったんだそう。
「敏子さんの年齢は59歳ですが、団塊層としての意識というよりも、母や妻としての心の部分に共感するものがあって。ただ、表現する上では、年齢に見合う役作りができるかが最大のテーマで『できるかなぁ?』と加藤さんに相談したら、『あなた女優でしょう?』と言われまして、『そうでした』と(笑)」チャーミングな笑顔を見せた彼女。
その役作りは、「できるだけ自分に構わないようにすること」から始まった。「仕事を意識するとどうしても身なりを失礼のないよう構ってしまうんです。髪型やメイクもヘアメイクさんに相談しながら、スクリーンで観て、いちばん自然に見えるよう研究しました。後は、旦那様が生きていて主婦をしていた頃の、映画の中で描かれていない敏子さんを意識して演じていました」 |
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加藤治子の独特の存在感が光る! 「最初に決まったのが風呂婆ぁだったんです」(阪本順治監督)

三田佳子、寺尾聰、豊川悦司、常盤貴子など共演陣も超豪華。なんといっても、風呂婆ぁを演じた加藤治子なくして、この物語を語ることなんてできない。なぜなら、風吹ジュンをこの映画に誘い、監督が真っ先にひらめいたのは、加藤治子=風呂婆ぁなのだから。
「たまたま別の映画の試写会でお会いして『風呂婆ぁだ!』と(笑)。加藤さんと風吹さんは何度もテレビで共演しているだけあって、抜群のコンビネーションなんですよ。基本的には、加藤さんの演技に対して風吹さんがリアクションを返していくのですが、気がつけばリアクション大会。撮っていて本当に面白かったですね」
と教えてくれた監督。ちなみに監督がいちばん手に汗握ったシーンは、三田佳子演じる愛人と敏子が初対面する仏壇前でのシーンなんだそう。
「彼女が仏壇前でチーンと鳴らすおりんの音を、敏子はどこで耳にし、どんな表情をするのか、用意されたざぶとんに三田さんが座るのか横にずらすのか、敏子がお茶を持って来る時に、おぼんにはお菓子がのっているのかいないのか、そのお菓子はなんなのか、お茶は入れて持っていくのか急須ごとなのか・・・、そこがいちばん考えた所です。最後の対決シーンになると、あれは格闘技。いちばん得意なシーンでしたよ」 |
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劇中、敏子は第2の人生をイキイキと歩み始める。そこで、吹雪ジュンの考える第2の人生を語ってもらった。
「私はまだ60代を経験していないんですけども、どの年代でも9という数字が手前にあたって、いつもそれまでに何をしようかと思うんです。59は、崖っぷちで先は落ちていくというイメージがありますけど、飛んでみると楽しかったと思える気がして、それが「魂萌え!」の“萌え”だと思うんです。海外の映画祭では、気づき、悟るを意味する「awaking」と訳されていて、フィットしていると思いました。敏子さんは、夫を失うことで表に立たされて、新しい出会いとコミュニケーションの中で、自分が見えてきた。先は分からないけど、そんな気づきがあれば、新しい自分を発見して、見えなかったものが見えてくるんじゃないかな。この役を演じて“年をとるのもまんざらでもないな”と思うようになりました」
年齢を重ねることって悪くないな、素敵なことだな、と思ったインタビュー同様、映画も素敵な仕上がり。きっと何かに気づきを与えてくれる映画「魂萌え!」で、まずは心萌えることをオススメしたい! |
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(取材・文/ライター 大西愛) |