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−セックス・シーンが多いにも関わらず、全体的にいやらしい印象を与えない、どちらかというとコミカルな作品に仕上がっていますが、それは意図的なことですか?

「“エロス”っていうテーマを聞いた時に、多分自分がやってもエロスにはならないだろうなという、不安というか予感はあったんですけど、まぁ自分ができることをやるしかないと思ったので。だったら、以前から作りたいと思っていた“青春映画”というかたちにしようと。だから、この映画がエロいかエロくないかって言われたらエロくないですよね(笑)。今回はヒロイン役の江口のりこさんが何の照れもなく堂々と演じてくれて、カメラマンさん(安田圭)もかなり最初の段階からセックス・シーンに関しては『もう思い切りやりましょうね』って言ってくれていたんです。江口さんの姿勢はやっぱりカメラマンとしてはうれしいことであって、そういう、スタッフと役者間の相互作用が、すごくいい感じで作品に出ている気がします。それと、江口さんは脱いでも全然下品にならない方なんですよ。だから『絶対真山役は江口さんで』っていうことはずっとプロデューサー(東康彦)に言い続けていました。彼女には面白いエピソードがあって、映画の撮影は5日間だったんですけど1日だけ朝のみ撮影の日があって、早朝に江口さんがセックス・シーンだけやって『おつかれさまでした!』って言って帰っていったり(笑)。あれは面白かったですね」

−セックス・シーンのシチュエーションもユニークでしたね。

「セックス・シーンは、とにかく見ためが面白いシチュエーションをあれこれと考えて撮りました。例えばジュースの自動販売機の前でのセックスだったら、セックスの最中にジュースのルーレットが当たったら面白いんじゃないかなとか。白昼のヒロインの部屋でのセックス・シーンは、カメラマンさんの『大学生は昼間も割と暇だし、昼間の方がいかにも情事っぽい雰囲気が出るんじゃないかなあ』というアイデアから。スタッフもいろんなアイデアを出してくれて本当に助けられましたね。そのうち、『あと、どの体位やってないっけ?』とかいうノリになってきちゃって(笑)。そんなノリで撮っていくうちに『別に全然エロくなくていいんじゃないの?』って思えて来ました。それなのに“R-18”になりかけたという…(笑)」

 

−劇中、ヒロインが、主人公の書いた官能小説を読んだ時に「もっと匂いに敏感な少年にしたらどうか」というアドバイスをしていますよね。私はこの“匂いに敏感”といった赤裸々な表現にドキッとさせられたのですが、こういったアイデアはどこから出てきたのでしょうか?

「まぁ参考にしたというと大げさですけど、幸田文の※『台所のおと』('62)という小説からヒントを得て“匂いに敏感な”という表現をセリフに入れました。『台所のおと』は文学作品だし、まったくエロスな内容ではないんですけど、その小説を読んだ時に性的な描写がまったくないにも関わらず、研ぎ澄まされた五感の描写が巧みに表現されていて、なんてエロティックなんだろうと、衝撃を受けたんです」

※『台所のおと』
病床で、妻が台所でたてる音に耳をすませる小料理店の主人の鋭い五感を通し、男女の心の機微を繊細に描き上げた短編小説。(講談社文庫)

−普段、官能小説を読まれたり、官能映画をご覧になったりすることはありますか?

「いいえ、あんまり。官能小説は、この映画を撮影するようになってから少し読んだぐらい。そもそも、人が生きていくうえで性的なことが関わってくるのは普通のことだと思っているので。これまでも、とりたてて官能映画だから観ようという感覚は、少なくとも私にはないんです。だから結局、“エロス”っていう題材を隠れみのにして自分の言いたいことを言える作品にしたいなぁという思いで取り組みました」

−主人公の男の子(田所)は、ヒロイン(真山)とは対照的な女性(茜)と付き合いますが、彼女とのデートの最中に「真山とはどこにも行ったことがなかったけど、すごく楽しかったなあ」と不満をもらすようになりますよね。すごく意味深なセリフだと感じました。こういう男女間のリアルなエピソードから、恋愛について深く考えさせられる作品だと思ったのですが。

「田所が茜ちゃんと楽しくおさまれば全然問題ないはずですよね。彼女かわいいし。別に彼女が間違っているわけではないし、好きな人といろんなところに行きたいという気持ちは誰にでもありますよね。でも、どうして楽しくないんだろうと葛藤する田所もいるわけです。それは、“恋愛と性欲の間で悩むことってみんなはないのかな”っていう私の問いかけでもあります。また、そういう問いかけを、観る人がどう思うのかということ。まぁ、今回の作品では恋愛というよりも人と接することで、葛藤したり、自分が正しいと思うことだけで人は生きていけるのかなぁとかいう私の疑問がきっかけでしたが。今後も、そういう問いかけとして映画作りに取り組んでいければなぁと思っています」
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「盲獣」

一言で言えば、本気のエネルギーです。体温上がります。 セリフも突っ込みどころ満載なんですが、増村保造という人の半端ではない人間好きなところが伝わってきてシビれます。それに緑魔子のリアルな体つきが本当にエロく、魅力的です。美術も素晴らしい。この感覚は観た人としか共有できませんので、ぜひオススメしたい一本です。

STAFF&CAST●監督:増村保造 原作:江戸川乱歩 出演:船越英二 緑魔子 (4935円/販売元:徳間ジャパンコミュニケーションズ)
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