柔軟な思考で天ぷらの理想形を
描き出す和食界の巨匠

カウンターに並ぶ2つの鍋を巧みに操る近藤さんの天ぷらは、斬新さと繊細さを併せ持つ。厚さ7pの名物「サツマイモ」や、アメ細工のようなかき揚げの「ニンジン」など、丁寧な手つきで仕上げる、鮮やかな天ぷらたち。油の温度と揚げる時間のバランスが作り出す絶妙な食感と、口中にふわっと広がる素材の風味に、思わず顔がほころんでしまう。
「(料理を食べた)お客の反応を見るのが本当に楽しいんですよね」そう語る近藤さんは05年で58歳。18歳の時、御茶ノ水にある「山の上ホテル」で和食の修業を開始、以後才能が認められ23歳の若さで料理長に就任した。文豪や著名人が多く滞在していただけに、ホテルに勤務した25年間には、近藤さんの人生を変貌させる出会いがたくさんあったという。「修業時代、写真家の土門拳さんから突然“味”と書かれた直筆の額が送られてきてびっくりしました。その迫力ある文字をじっと眺めていたら、おいしいものをただ作るだけでなく、おいしいものを作ろうとする“意識”が必要なんだと気づいたんです」素材を追求するようになったのはこの時から。ホテルの用意する食材に納得できなくて、自分の給料を注ぎ込んで素材をまかなったこともあるという。
食通としても名高い作家・池波正太郎氏もまた、修業時代から月に1、2回は顔を出す常連で、誰よりも近藤さんが揚げる天ぷらのファンだった。「独立する場所に銀座を選んだのも、池波正太郎先生が愛した第2の故郷だったからです。独立しようとした時も、励ましの手紙を下さいました。暖簾を一度もくぐらずに他界されてしまったのがとても残念です」その店も1年半前にリニューアル、全面バリアフリーに改装した。「私の天ぷらを一人でも多くの人に食べていただきたい。その思いが、やっと実現したように思います」。最近では車いすのお客さんや90歳を超えるご老人も来店するようになり、連日幅広い層の客でにぎわう。
“近ちゃんの天ぷらは、昼間腹一杯食べても、夜ちゃんとお腹が空くのがいい”と池波正太郎氏も絶賛した近藤さんの天ぷらは、驚くほど衣が薄い。「天ぷらは素材が命。素材の風味を最大限引き出すのに、衣はたくさん必要ありません」。
いい素材があると聞けば、全国どこでも飛んで行くという近藤さんは、アイディアの達人。魚介の天ぷらが主流だった時代に、アスパラやそら豆など野菜を揚げたのも彼が最初だった。「いつも頭の中で、新しいものを追求しています。試作はしません。考えて、考えて、これだと思ったらお客さんの前で揚げてみるんです。私のイメージした通りの反応が、お客さんから返ってきて初めて完成。揚げるに至るまで何年もかかる時もあるんですよ(笑)」。
最近では、ズッキーニの生湯葉射込みなど、和食の枠を超えた天ぷらも評判を呼んでいる。「今度、オリーブオイルで揚げてみようかと話しているんです。月1回オリーブオイルの日を作ったりね(笑)」。
誰よりも柔軟な考えを持った和食の巨匠は、これからも型にとらわれない料理を作っていきたいと語った。

東京大人のウォーカー(7月)
2005年5月26日 発売
銀座グルメ 人気店の秘密に迫る 掲載
最終データ更新日:2008年3月13日
*掲載内容は雑誌掲載時のデータをもとに構成しています。 定期的に更新を行っておりますが、 情報が変更になっている場合がありますので詳細はお店へご確認ください。

てんぷら近藤 店舗情報

基本データ
店名 てんぷら近藤
住所 中央区銀座5-5-13 坂口ビル9F
電話 03-5568-0923
※グルメウォーカーを見たとお問い合わせ下さい
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交通アクセス 東京メトロ銀座線銀座駅より徒歩2分
営業時間 12:00〜13:30(LO)、17:00〜20:30(LO)
休日 (日)、祝日の(月)
駐車場 なし
平均予算 [昼]5250円 [夜]8400円
クレジットカード JCB, VISA, MASTER, AMEX, ダイナース, 他
備考 全席禁煙、数日前から予約を。近藤さんを指定する場合は予約時に
座席データ
総席数 25席
6人
桐花
「桐花」
新人編集部員
のら
「のら」
新人副編集長
R36
「R36」
名物編集長
覚え書き
ぴんこ
「ぴんこ」
新人副編集長
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