あえて肩書きを外し
“ワインと料理の両方が主役”の店を作る
単価の低いレストランほど出店しにくい土地柄、銀座にはおいしいイタリア料理店が少ないという印象があった。しかし最近は気軽に本場のイタリア料理を楽しめるお店が増えている。権田さんがシェフを務める「イル・パラート」もその中の一つだ。
とにかくサラリーマンになりたくなかったという権田さんは、調理師学校へ進学し“ワイワイ騒いでお酒が飲める”イタリア料理を志した。
就職先は昔ながらの職人気質の店で、調理の基本を厳しく叩き込まれた。その後23歳で上京し、トラットリアスタイルのイタリア料理店での下積みを経て、32歳で渋谷「リストランテアロマ」の副料理長に。2年後料理長に昇格した権田さんは常連客から紹介を受け、ワインバーの先駆け的存在であった神宮前「レクイエムk626」のオーナーソムリエ玉置昌久さんと知り合う。玉置さんはワインバーをリストランテに改装するため、シェフを募集していた。2人はワイン好きということで意気投合し、2001年に改装された「アリエッタ」で一緒に働くこととなる。その後、04年8月銀座へ店を移転し、「イル・パラート」(イタリア語で“口蓋”もしくは“味覚”の意味)と名付け、アラカルト専門のスタイルを取っている。「プリフィクス(料理を選べる一定価格のコース)にしてしまうと、調理法に限界があるんです。1人前にするために、お肉はどうしても小さく切らないとなりません。大きく切って豪快に焼いた方が旨味も残りますし、見た目にも楽しいじゃないですか」
14席という小さな店にしたのも、権田さん自身が厨房から客席を見渡し、それぞれの客に合わせて調理できるようにしたかったからだ。テーブルに出される瞬間が料理の最高の状態であるよう最大の注意を払い、さらに客のワインの進み具合を見て料理の味に変化をもたせるという。
「イル・パラート」には常連客が多い。安心してワインをオーダーできる、玉置さんというソムリエの存在も大きな要素だが、それに加え客は厨房からの無言の気配りを無意識に感じ取っているに違いない。この店の食事の楽しさは、ワインをこよなく愛するソムリエと料理人の2人のコンビネーションによって生み出されているのだ。
権田さんもできる限りワインを知ろうと、イタリアのワイナリー経営者との交流などを積極的に行っている。「ここはリストランテでもビストロでもありません。ワインと料理、五分五分の店が作りたかったんです。イタリアには食べ歩きに行ったことしかないですけど、留学できたらよかったかどうかはわかりません。実際、この店みたいにワインと料理の相性を本当に考えた店はイタリアでも数少ないと、イタリアのワイナリーの人にお褒めの言葉をいただくこともあるんですよ」
ワインを料理に合わせるプロと、料理をワインに合わせるプロが、料理のおいしさを引き立てるワインと、ワインのおいしさを引き立てる料理を出す店。イタリアワイン好きなら行ってみない手はないだろう。
東京大人のウォーカー(7月)
2005年5月26日 発売
銀座グルメ 人気店の秘密に迫る 掲載
最終データ更新日:2008年3月13日
*掲載内容は雑誌掲載時のデータをもとに構成しています。
定期的に更新を行っておりますが、
情報が変更になっている場合がありますので詳細はお店へご確認ください。