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| 作品に関して語り始めるとかなり饒舌になる行定監督 |
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| 2004年も話題作が目白押しの、今最も多忙をきたしている監督だ |
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| ■3月20日(土)よりテアトル新宿ほかにて公開 |
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| 旬な若手スターの共演も楽しみ |
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STAFF&CAST 脚本・監督:行定勲 出演:田中麗奈 妻夫木聡 伊藤歩 柏原収史 三浦誠己 石野敦士 松尾敏伸 池脇千鶴(2004/コムストック)110分
【プロフィール】 1968年、熊本生まれ。「ひまわり」(2000)で劇場公開デビューを果たし、第5回釜山国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。その後「閉じる日」(2000)、「贅沢な骨」(2001)を監督し、「GO」(2001)で日本アカデミー賞最優秀監督賞など国内の映画賞を総なめする。そのほか「ロックンロールミシン」(2002)、オムニバス映画「Jam Films」の「Justice」(2002)、「Seventh Anniversary」(2003)などを監督。2004年は「世界の中心で、愛をさけぶ」や「北の零年」という大作が待機中

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「言葉は“演技の武装”です。でも今回は関西弁だったから簡単にはいかず、その分彼らはマインドで補おうとしたんです」

「GO」(2001)で国内の映画賞を総なめにしてからも、決して自らのテンションを落とすことなく、果敢に創作を続けている行定勲監督。インディーズ系、メジャー系に関わらず、常に自ら撮りたい題材を吟味し、絶妙な塩梅で人生の陰影をつむぎ出してきたところはさすがである。そんな妥協のない姿勢を尊重した上で、メガホンのオファーが殺到するのだから作家冥利に尽きるというものだ。 田中麗奈、妻夫木聡、伊藤歩、柏原収史、池脇千鶴といった旬な若手スターを迎えた最新作「きょうのできごと」も、一見ごく普通のオールスター・キャストの群像劇に思えるが、人間関係の微妙な心のひだをきちんと表現した新鮮な映画に仕上がっている。とり立てて大事件などは起こらないが、それぞれが過ごす1日という限られた時間が、実にリアルに綴られていて、人生そのものの豊かさを浮き彫りにしているのだ。そんな最新作について、行定監督にたっぷりとインタビューをしてみた。
「きょうのできごと」は、原作である柴崎友香の同名小説に惚れこんだ行定監督が自ら脚本を手がけた映画である。舞台は京都ということで、役者たちが自然体で関西弁を話しているのが印象的だ。 「小説を読んだ時に、文字がこぼれ落ちるくらいのパワーを感じました。読んでいるうちに関西弁の台詞を音読してみたくなり、その衝動が映画化につながりました」 当然ながら、出演者は関西弁の猛特訓を受けて役作りに挑んだ。たとえ役者の演技は申し分なくても、方言指導者からのOKが出なければ容赦なくNGにしたというこだわりぶりだ。でもその結果、思わぬ演技が引き出されたりもしたという。 「言葉は“演技の武装”なんです。役者は言葉によって芝居をしようとするけど、今回はそう簡単にはいかなかった。だからその分彼らはマインドで補おうとするから、余計に情感が出る。そういう意味ではすごく正解でした」 ちなみに、監督自身がいちばん心配だったのは、柏原収史の関西弁だったとか。 「柏原の関西弁がすごく違和感があったんです。こもったしゃべり方をするから、どうしようって思っていたんだけど、意外にも指導者の方からはいちばんいいって言われました。いわゆる吉本っぽい関西弁ではなく、普通の関西人が話す言葉に近いものだったらしくて。意外でしたね」 |
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「僕は曖昧な物の方が好きなんですよ。自分だけが知ってる幸せの方が嬉しいと思いませんか」

方言の特訓のかいあって、劇中の会話劇は本当に生き生きとしている。ささいな日常がリアルにつむぎ出されているという感じだ。 「今作では日常の豊かさを描きたかったんです。たとえば山田洋次さんの『男はつらいよ』シリーズや、成瀬巳喜男、小津安二郎の映画などもそうですが、人間や生活の豊かさやその中にある悲しみや哀愁を表現したかった。そんな映画を山田監督くらいの年齢の方しか撮れない状況はどうしたものかと思ってね。だから今回は設定をとるに足りないある一日に絞り込んだんです。 映画って欲張れば欲張るほど、オーバー・ワークになるんです。あれも撮りたい、これも撮りたい、終いには竜巻が来たら最高だねって思ったり(笑)。でも今回はそんなことを全く排除しました。豊かさを作るのはそういうことじゃないし、家の中でもできることなんです。はっきり言って、劇中の人たちにとっては別に素晴らしい1日でもない。どちらかというと何も変わらないけど、それでも心の中は少しずつ動いています。そう、それは地球の地軸が少し動くくらいのものなんですけどね。だからある意味すごく贅沢な映画なのかもしれませんね」
映画を観れば、改めて日々の生活の中にもきらめきがあることを実感させられる。それはごく小さなものだけど、ふとした瞬間そのものが尊く思えるのだ。見方を変えれば、全員が主役の映画でもある。 「この映画では別に何の答えも出していないけど、その中で小さな幸せを見つける人もいるし、そこがいいんです。僕は曖昧な物の方が好きなんですよ。形にならない感じがね。大きな幸せ、たとえば誰もがうらやむような幸せって『ウソでしょ』って思ってしまいます。自分だけが知ってる幸せの方が嬉しいと思いませんか?」 確かに行定監督は、わかりやすいハッピー・エンドな展開のものよりも、どちらかというアンハッピーな中に見出したひと筋の光をつむぎ出してきた監督だ。でもどの作品も、観終わった後に爽やかな清涼感のような余韻を与えてきた。きっと監督は人間という素材自体を面白がり、同時にとても慈しんでいるのだろう。
そんな監督のメガホンさばきに惚れこんだ映画人は数多い。ご存知のとおり、この後も片山恭一の泣けるベストセラーの映画化「世界の中心で、愛をさけぶ」、そして吉永早百合主演の大河ロマン「北の零年」と2作のメジャー作品が待機中だ。前者はともかく、後者は監督にとってはこれまでに経験したことのないジャンルの映画だし、ケタはずれな大作だが、これらの作品にも「きょうのできごと」と通じるものはある。 「僕は作品を選ぶ時、自分の人生とどこか重なっているものや、もしくはたとえ自分と距離があっても、その被写体や登場人物の何かが自分の身の丈クラスのものとつながっているものじゃないとできないです」 そう、たとえ作品の規模やカラーは違っていても、監督はいつも数あるオファーの中から、着実に自分が表現したいものを描いてきた。その徹底したルールを守っているからこそ、今のポジションを築けたのだろう。かといって、もちろんその地位に甘んじている監督ではない。行定勲は、2004年も更なる躍進を予感させてくれる、最も頼もしい監督といえる。
(取材・文/編集部・山崎伸子) |
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