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2005.7.3(日)更新
【イベント・レポート】
若松孝二監督の最新作「17歳の風景」に
“ガンダム”シリーズの主人公の叫びを聞いた!
【イベント・レポート】若松孝二監督の最新作「17歳の風景」に
“ガンダム”シリーズの主人公の叫びを聞いた!
若松孝二監督、10代に向かって大いに語る。「オレがなんで映画を始めたかと言えば、やっちゃいけないことを映画の中でやってやろうと。警察官が大嫌いで、殺してやろうと思ってたんだ。本当に殺しちゃうと捕まっちゃうだろ。でも映画の中なら、何をやっても自由なわけなんだよ」
【イベント・レポート】若松孝二監督の最新作「17歳の風景」に
“ガンダム”シリーズの主人公の叫びを聞いた!
この日の司会進行を務めた社会学者の宮台真司氏(左)は、過激だった‘70年代の若松監督の活躍をリアルに体感した世代。「10代の頃、ずっと若松監督の映画を観てたんです。『あぁ世界中に僕の心情を分かっている人が少なくても1人はいるな』と感じてました」
【イベント・レポート】若松孝二監督の最新作「17歳の風景」に
“ガンダム”シリーズの主人公の叫びを聞いた!
ポレポレ東中野の1階にあるスペース&カフェ・ポレポレ坐に、約20人の10代が集まった。ベテラン監督のトークショーというよりは、風変わりなオッサンと若者たちとが車座になって率直に語り合うという場でした
【イベント・レポート】若松孝二監督の最新作「17歳の風景」に
“ガンダム”シリーズの主人公の叫びを聞いた!
「17歳の風景」の撮影現場。デジタルカメラを使い、最少人数のスタッフで撮り上げられた。カメラマンの辻智彦氏はドキュメンタリー出身で、若松監督作「完全なる飼育 赤い殺意」(2004)に続いての参加
【イベント・レポート】若松孝二監督の最新作「17歳の風景」に
“ガンダム”シリーズの主人公の叫びを聞いた!
事件そのものの経緯も、主人公の心情を語る説明的な台詞もほとんどない。ただ少年が自転車とともに旅をする様子をカメラが追う。自然にさらされ、様々な人たちと出会うことで、少しずつ少年の表情が変わっていく
【若松孝二監督プロフィール】
1936年宮城県出身。高校2年のときに家出して上京。菓子職人見習い、新聞配達、ヤクザ、テレビ映画の助監督と職を転々とする。1963年に成人映画「甘い罠」で監督デビュー。ピンク映画と名付けられた新しい分野で、次々と異色作、問題作を発表する。1971年にはカンヌ映画祭に招待された帰路、脚本家の足立正生とともにパレスチナに渡り、パレスチナ解放人民戦線のドキュメンタリー「赤軍−PFLP・世界戦争宣言」を撮影。内田裕也主演「水のないプール」(’82)で一般映画に進出。以後、「われに撃つ用意あり」(’90)、「寝盗られ宗介」(’92)、「シンガポール・スリング」(’93)など一般社会からは逸脱しながらも自分の信念と情熱に対して忠実に生きる男の姿を描き続ける。監督した作品数は100本を越える。大島渚監督「愛のコリーダ」(’76)等のプロデューサーとしても知られる他、高橋伴明、磯村一路、行定勲ら数多くの監督、脚本家ら映画人を輩出してきたことでも有名。

STAFF&CAST
監督:若松孝二 脚本:山田孝之 出口出 志摩敏樹 撮影:辻智彦 音楽:友川カズキ 出演:柄本佑 針生一郎 関えつ子 小林かおり 井端珠里 不破万作 田中要次 鳥山昌克 丸山厚人(2005/シマフィルム配給)90分

■「17歳の風景 少年は何を見たのか」7月30日(土)よりポレポレ東中野で公開。以降、大阪、岡山、名古屋ほか全国ロードショー

★イベント情報
若松vs.10代〈ガチンコトーク〉は、7月6日(水)、13日(水)にもポレポレ東中野1Fのスペース&カフェ・ポレポレ坐にて午後5時より「17歳の風景」上映後に開催。司会は21世紀型活弁士の山田広野氏。7月16日(土)には〈ガチンコトーク〉スペシャル!!として、ポレポレ東中野にて午後3:30より作品上映後に開催。司会は宮台真司氏。全イベントとも参加資格は10代であることで、参加料は無料。君も映画、そして人生の疑問を若松監督にぶつけてみよう!
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“親殺し”というヘビーなテーマの作品に
10代の若者たちは、どう反応するのか?


 キング・オブ・キングスのお出ましである。若松孝二監督、67歳。これまでに撮った監督作だけを数えても、100作を越える。凄いのは、もちろん数だけではない。「水のないプール」(’82)、「われに撃つ用意あり」(’90)、「寝盗られ宗介」(’92)など、法律や社会的モラルにとらわれずに、自分の信念や情熱に基づいて生きる男の姿を一貫して描いている。低予算だろうが、スケジュール難だろうが、トラブルを抱え込んだ撮影現場だろうが、お構いなしで次々と問題作を作り上げていく、監督の中の監督なのだ。

 肺がん手術を乗り越えた若松監督が、最新作に選んだ題材は2000年に岡山で起きた17歳の野球部員による母親撲殺事件。事件後、少年は自転車に乗って、東北へ1300キロに及ぶ逃避行を続けた。
 映画「17歳の風景 少年は何を見たのか」は、主人公の少年役に柄本明の息子・柄本佑を起用し、彼がひたすら自転車を漕ぎ続ける姿を追ったロード・ムービーだ。
 ドラマ性を排したこの手のドキュメンタリー・タッチの作品は、どうしても睡魔に襲われがちだが、「17歳の風景」はスクリーンから緊迫感がひしひしと伝わり、少年が本州の最北端に辿り着くまでを一気に観せる。旅の終わりに見せる少年の表情がなんとも言えない。

 一般公開に先駆けて、若松監督から「10代の若者が、この作品をどう感じるのか知りたい」という申し入れがあり、ポレポレ東中野の1階・ポレポレ坐にて『若松vs.10代〈ガチンコトーク〉』が開催された。6月27日、ポレポレ坐に集まった10代は約20人。「若松作品は観たことないけど、なんか凄い監督らしい」という認識の参加者が多かったようだ。
 10代とのフリー・トークの前に、社会学者の宮台真司氏と若松監督とのトークがひとしきり行なわれた。

若松「なんで、この映画をつくったかというと、あの少年が野球部で面白くないことがあったということで、なぜオフクロさんを殺したのかオレには分からなかったから。じゃあ、映画をつくることで自分なりに事件を追い掛けてみようと思ったんだ」
宮台「今の社会は“上手く生きること”ばかり奨励してますよね。本来、子供ってケンカしたり、いろんな軋轢に揉まれて育つのに、免疫がないまま大きくなっている。そうすると、大したことでもないのに恨んだりするようになるんですよね」
若松「オレが子供の頃なんか、オヤジをぶっ殺してやろうと何度も思った。でも、オヤジの方が強くてかなわなかったし、オフクロがカバーしてくれた。君たち(会場の若者たち)のお父さんお母さんの世代は“上手く生きることが一番”だと学んできた世代。汗水流した経験がないだよね。君たちも、あんまり怒られたことないんじゃない? あの少年、切れて爆発するエネルギーがあったなら、何だって出来たと思うんだ」

 2人のトークが、ひと段落したところで、いよいよ10代との“真剣しゃべり場”スタートである。
巨匠は、若者たちに優しく語り掛ける
「旅に出よう。自分の足で歩こうよ」


 果たして“こわもて”監督に質問、感想をぶつける10代はいるのか? 傍の心配を他所に、若松監督はごく自然に、近くに座っていた男の子に「君、なんかない?」と声を掛ける。
「あの〜、実験的な映画だと聞いて来たんですが…、もっと、いろんなことをやればいいのにと思ったんですが」
 恐れを知らない、なんともストレートな感想に、若松監督も苦笑い。
若松「うーん、この映画は自分にしか撮れない実験映画だと思っているんだ。オノ・ヨーコは女性のお尻ばかり撮って実験映画だと言った。でも、実験映画ってなんだろうね。映画って、どれも実験なのかも知れない。この映画もね、プロデューサーを騙してお金を集めさせて完成させた、一種の実験映画だと思うんだけどね」

 中学生の頃、人間関係に悩んでいたという女の子からは「なぜ級友殺しではなく、親殺しを題材に選んだのか?」という質問。
若松「題材はなんでもよかったんだ。たまたま、ああいう事件が起きて感じたものがあったから。今の若い子って、みんな親を尊敬してるんだよね。でも、親を尊敬していると何も出来なくなっちゃう。親を否定することから人生は始まるんじゃないかと思うんだ。親を否定するからこそ、尊敬するという気持ちも生じるようになるんじゃないかな」

 その後も次々と手が挙がり、ガチンコトークは約1時間にわたって続いた。必ずしも白熱したクロストークに展開したわけではないが、参加した10代たちは両親や学校の先生とは違った人種、自分のやりたいことをとことん突き詰めて生きている大人と出会ったことには新鮮な刺激を受けていたようだ。イベント終了後には、監督に自作の小説を「読んでください」と手渡しする若者もいた。

 JR東中野駅に向かう途中、「17歳の風景」と同じテイストを持つ作品をごく最近観たことに気付いた。駅のホームで作品名を思い出した。富野由悠季監督のアニメーション映画「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」だ。
 Zガンダムの主人公は権力サイドの横暴に怒りを覚え、自分の感情に従い反対勢力に身を投じる。その結果、両親を死に至らしめる。
 生まれ故郷を捨てて、旅に出ることでわずかな希望を見い出すことでも共通している。ただ乗り物が両親が開発したモビルスーツか、母親が買い与えたマウンテンバイクかの違いなのだ。

 劇場版「Zガンダム」について富野監督は「(悲劇的な終わり方をした)20年前のTVシリーズとは違う、肯定的なものに構成し直したい」という内容のコメントを発している。「親を否定することから、人生が始まる」と言った若松監督の言葉と、富野監督が劇場版「Zガンダム」に込めたメッセージはとても似ているように思う。車窓を流れる夜景を眺めながら、そんなことを考えた。

(取材・文/ライター長野辰次)



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