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2007.10.19(金)更新
【童貞。イベント・レポート】
青春ドキュメンタリーの新たなる傑作が快進撃中!
松江哲明監督「童貞。をプロデュース」で告白トーク
【童貞。イベント・レポート】
青春ドキュメンタリーの新たなる傑作が快進撃中!
松江哲明監督「童貞。をプロデュース」で告白トーク
ドキュメンタリー映画「童貞。をプロデュース」が大ヒット中の松江哲明監督(写真右)と、トークゲストの森達也監督。「今までの僕の作品と、つくり方は変わってません。でも、ちょっと着地点が違うかな」と松江監督は自作についてコメント
【童貞。イベント・レポート】
青春ドキュメンタリーの新たなる傑作が快進撃中!
松江哲明監督「童貞。をプロデュース」で告白トーク
ユーロスペースのスタッフ・ルームで、和やかに打ち合せ中の森監督と松江監督。世代 は違うが、ドキュメンタリー界に新しい波を起こした同士として、通じ合うものがあ るようだ。両監督とも平野勝之監督の影響を受けている点でも、共通している
【童貞。イベント・レポート】
青春ドキュメンタリーの新たなる傑作が快進撃中!
松江哲明監督「童貞。をプロデュース」で告白トーク
第2部「ビューティフルドリーマー」の主役である梅澤君は、森監督にサインをもらい嬉しそう。純朴キャラの梅澤君だが、「ビューティフル〜」には“美しい国”を唱えた安倍前首相に対する痛烈なメッセージも込められている
【童貞。イベント・レポート】
青春ドキュメンタリーの新たなる傑作が快進撃中!
松江哲明監督「童貞。をプロデュース」で告白トーク
トーク中の松江監督と森監督。最後に森監督が「脚本のある劇映画を撮る気はないの?」と問うと、松江監督は「ドラマには興味ないんです。今はAV女優・林由美香さんのドキュメントを制作中です。来年には公開したいです」と返答
【童貞。イベント・レポート】
青春ドキュメンタリーの新たなる傑作が快進撃中!
松江哲明監督「童貞。をプロデュース」で告白トーク
都内の映像学校の同窓生である“童貞1号”加賀君(写真左)と“童貞2号”梅澤君。第1部「俺は、君のためにこそ死ににいく」の撮影後、“童貞”を卒業した加賀君に対して、バリバリの現役である梅澤君の目はキラキラと輝いているのが印象的
【童貞。イベント・レポート】
青春ドキュメンタリーの新たなる傑作が快進撃中!
松江哲明監督「童貞。をプロデュース」で告白トーク
AV界の巨匠・カンパニー松尾監督。AVの撮影現場から逃げるように去ろうとした加賀君に向かって「人に迷惑をかけない生き方は、ひとりぽっちでの生活しかないぞ」と心に響く言葉を贈った。この言葉に加賀君は覚醒するが…
【童貞。イベント・レポート】
青春ドキュメンタリーの新たなる傑作が快進撃中!
松江哲明監督「童貞。をプロデュース」で告白トーク
監督が対象者を追うのではなく、対象者自身がカメラを持って日常レベルから記録するというユニークなスタイル。童貞目線で見ることによって、テレビや新聞では報道されない現在の日本社会の問題点が浮き彫りにされる
【松江哲明監督プロフィール】
1977年東京都生まれ。日本映画学校の卒業制作として完成させた「あんにょんキムチ」(1999)が山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPPAC賞を受賞するなど話題を呼ぶ。以後、「カレーライスの女たち」「2002年夏休みドキュメント沙羅双樹」(共に2003)、山形国際ドキュメンタリー映画祭で同映画祭史上初のAV作品となった「セキ★ララ(旧題『Identity』)」(2006)などを監督。俳優として、山下敦弘監督作「ばかのハコ船」(2002)などにも出演している。

【森達也監督プロフィール】
1956年広島県生まれ。立教大学卒業後、石井聰亙監督や黒沢清監督の自主制作映画に出演。不動産、広告会社などを経て、テレビ番組制作会社に入社し、ドキュメンタリー番組の制作を経験。「放送禁止歌」など放送コード、表現の自由を扱った作品を多数手掛ける。オウム報道に対する見解の違いから制作会社を離れて完成させた「A」(1998)は、ベルリン、香港、バンクーバーなど各国の映画祭で上映され、海外でも高い評価を得る。続く「A2」(2001)は山形国際ドキュメンタリー映画祭で審査員特別賞と市民賞をダブル受賞。「ドキュメンタリーは嘘をつく」(草思社)、「下山事件」(新潮社)など著書も多い。

STAFF&CAST
編集・構成・監督:松江哲明 出演:加賀賢三(童貞1号) 梅澤嘉朗(童貞2号) 峯田和伸 カンパニー松尾 まさみさん(仮名) 加賀の友人たち 企画AV女優Rちゃん 梅澤家の人々 かつて梅澤君との交際を拒否した大木さん 映画制作宣伝ナヲイさん
(2006-2007/チップトップ&SPOTTED PRODUCTIONS)85分
■10月20日(土)〜11月2日(金)大阪プラネット+1にて再上映。27日(土)はオールナイト・イベント実施(ゲスト:松江哲明、加賀賢三、梅沢嘉朗)
■11月23日(金) 新潟シネウインド
※舞台挨拶:松江哲明、加賀賢三、梅澤嘉朗
■11月24日(土)〜11月26日(月) 名古屋シネマスコーレ
※24日(土)/舞台挨拶:松江哲明
■11月24日(土)〜12月7日(金) 広島・横川シネマ
※25日(日)/舞台挨拶:松江哲明
■11月下旬 京都みなみ会館
■12月15日(土)〜12月28日(金)沖縄桜坂劇場
■2008年2月9日(土)岩手さくらホール
>> 公式サイト
>> 【NIPPON EROTICS plus(R18映画最前線)】(10)
「セキ★ララ」公開記念
松江哲明監督インタビュー
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森達也監督とのトークイベント
控え室で和やかに打ち合わせ


 今、童貞が熱い! スティーブ・カレル主演作「40歳の童貞男」(2005)も胸を打つヒューマン・コメディだったが、日本のミニシアター界でも童貞パワーが炸裂したドキュメンタリー映画が話題を呼んでいる。松江哲明監督の「童貞。をプロデュース」がそれ。8月25日(土)に池袋シネマ・ロサで封切ったところ、超低予算のドキュメンタリー作品ながら、口コミで面白さが広まり連日の大入りに。さらに10月6〜19日、渋谷ユーロスペースで追加上映したところ、またまた大盛況。地方での上映も続々と決まっている。くわえ煙草で「ふん、童貞のくせに!」と侮ってはいけないのだ。
 松江監督は“在日だけど、キムチが食べられない”という自分のアイデンティティを題材にした「あんにょんキムチ」('99)、在日のAV女優、AV男優の素顔に迫った「セキ★ララ」(2006)などを発表しているドキュメンタリー映画界の若き旗手。今回の「童貞。」は、憧れの女の子に告白できずにいる童貞1号加賀君(23)をAVの撮影現場に連れていきスパルタ教育を施す「俺は、君のためにこそ死ににいく」、古本屋巡りとゴミ収集を生き甲斐としている童貞2号梅澤君(24)が心酔する80年代のアイドル・島田奈美へのコンタクトを画策する「ビューティフルドリーマー」の2部構成となっている。
 企画だけ聞くと、かつての「進め!電波少年」(日本テレビ系)のようだが、“素人”ゆえの無軌道な童貞ぶりが目を見張る。20歳で引退したアイドル・島田奈美に会うために、梅澤君が廃材を集めてタイムマシンを開発するという自主映画「独立宣言」の映像が流れるが、それこそ童貞でなくてはつくれない超ド級のファンタジー。加賀君が作詞作曲した「穴奴隷」という挿入曲も、エキストラ・バージン・オイルまみれのように油ぎったメッセージ・ソング。小室哲哉は逆立ちしても、つくれないだろう。また、熱き“童貞魂”を持ったミュージシャン・峯田和伸(銀杏BOYZ)が「穴奴隷」をストリートで熱唱するシーンもあるで、ぜひパンクな心を持った人たちもチェックのほどを。


 ユーロスペースでの上映も佳境に入った10月16日(火)、松江監督と森達也監督のトークイベントが上映前に行なわれるということで、渋谷区円山町に出掛けた。森監督はオウム信者への長期取材に成功した「A」('98)、「A2」(2001)で知られる気鋭の映像作家だ。イベント開始20分前に劇場のスタッフ・ルームを訪ねると、両監督は和やかに談笑中。せっかくの機会なので、トークイベント前の打ち合わせの様子とトーク本番の模様を共にレポートしよう。重複する部分があるが、トークイベントのメイキングとして楽しんで欲しい。

森「今日のトーク、何を話そうか?」
松江「森さん、僕の作品はちょくちょく観てくれていますよね」
森「うん、『カレーライスの女たち』(2003)は大好きだよ」
松江「そのへんの話から、ドキュメンタリーとフィクションの関係について語るのはどうですか? 僕もお客さんに、そのへんを意識して観て欲しいし」
森「これまでのトークゲストは、誰が来てるんだっけ?」
松江「山下敦弘監督、漫画家の花くまゆうさくさん、根本敬さん・・・」
森「山下君ねぇ(笑)」

 ここでしばし、今や「リンダ リンダ リンダ」(2005)、「天然コケッコー」(2007)で青春映画の巨匠となった山下監督が、いつ“卒業”したのかの話が弾む。
森「山下君、トークで告白しているんだ。松江も、奥手だったんだよね」
松江「えぇ、『あんにょんキムチ』の頃はまだ童貞でした(笑)。森さんに初めて会ったときも、童貞だったんです。『A』の試写室で僕はテープ交換したんですよ。平野勝之監督の『流れ者図鑑』('98)に比べると、俺の絵はガタガタだと森さんが言っていたのを覚えてます」
森「そうか、『A』の試写のときにいたんだ・・・。こういう話をトークですれば、よかったね。でも、一度話すとやりにくいなぁ。あまり、しっかり打ち合わせはしない方がいいね(苦笑)」
松江「司会者にネタを振ってもらわないと、自分たちからは話しにくいですよね」

 打ち合わせ中に、もうひとりゲストが到着。第2部「ビューティフルドリーマー」に主演している童貞2号こと梅澤君が、森監督の著書「ドキュメンタリーは嘘をつく」を手にスタッフルームに現れた。松江監督は「ブックオフで手に入れたの? それとも拾ったの?」とツッコミを入れるが、森監督からサインをもらった梅澤君は何ともいえないイノセントな笑顔を浮かべた。トークショー開始直前の心和むひとときだった。
“童貞”スピリッツよ、永遠なれ。
作品の中でこそ童貞は、光り輝く


 ユーロスペースの劇場内は、若い観客で満席状態。後方は、立ち見客が並んでいる。松江監督、森監督がステージ上から挨拶をし、トークが始まった。
森「おー、(観客が)入ってるね。すごいね。完全にもう俺は抜かれたね(笑)。『A』のプロデューサーの安岡卓治が、日本映画学校の講師で、その教え子が松江監督なんです。松江監督、『A』の試写を手伝ってくれたんだよね」
松江「はい、チラシとかも配ったんですよ」
森「その後、彼は『あんにょんキムチ』を完成させ、セルフ・ドキュメンタリーの新しい流れをつくったと注目されます。でも、ドキュメンタリーって、どれもセルフ・ドキュメンタリーなんです。自分自身を撮っても、カルト教団の信者を撮っても、『天皇を殺せ』なんて叫んでる頭の線の切れたオッサンを撮っても。正直、『あんにょんキムチ』は実力以上に評価された作品だよね」
松江「森さんはどう感じました?」
森「ちょっと、まどろっこしいよね。松江自身の持っている不確実さみたいなものが作品に出ていると面白いんだけどね。『あんにょんキムチ』では、計算が多少空回りしてる部分があるよね」
松江「はい、確かに芝居をしてました」
森「芝居してもいいんだけどね。その後の『カレーライスの女たち』は映画的な空間が素晴らしかった。そして『セキ★ララ』、今回の『童貞。』になるわけだ。僕は第1部が好き。どうなるのか分からない面白さがある」
松江「よくあるドラマ的なものを、ドキュメンタリーとしてやってみたかったんです。いろいろな仕掛けを用意して。僕としては第2部が好きなんです。作っていて、やったーという手応えが感じられたんです。もちろん第1部ありきで、第2部でそれを壊したかった。それが今回はできたかなぁと」

 トーク時間は15分限定ということで、森監督は唐突に例の話題を振る。
森「松江監督は、もう童貞ではない?」
松江「はい、童貞じゃないですよ。何で急にそんな質問を(笑)」
森「だって、他に聞くことないんだもん」
松江「地域社会とか格差社会について語りましょうよ。森さん、パンフレットにもそのこと触れていたじゃないですか」
森「実はパンフレットのコメント、映画を観ないで書いたんだよ」
松江「え〜!」
森「観る時間なくてさ。ネットを幾つか見て、まぁこのへんだろうと(笑)。さすがに今日はトークということで、ちゃんと観たよ」
松江「あはは、ひどいなぁ。僕が森さんに初めて会ったのは19歳でしたが、童貞でした。『あんにょんキムチ』の頃も、まだ童貞でした。森さんは“童貞”をこじらせた方ですか?」
森「どうなんだろう。どれが失った日かはっきりしないんだ。え〜と、話題を変えましょう」
松江「まだ、時間は大丈夫ですよ(笑)」

森「ドキュメンタリーは、もちろんフィクションです。でもフィクションですが、事実でもあるんです」
松江「そうです、そこを気にして観て欲しいですね」
森「僕は『ドキュメンタリーは嘘をつく』という本を出しました。これは煽情的な狙いで付けた題名ですが、この“嘘”という言葉は、言い換えるとフェイクでもあり、フィクションでもあり・・・」
松江「演出でもあるわけですよね」
森「そう、そこがドキュメンタリーの淡い部分であり、面白さでもあるんです。何かを撮ろうとすると、その瞬間から“虚構”が発動するんです。後は、松江がどれだけ作品に出てくるか。これは出演するという意味ではなく、松江の面白さが作品に出ているかどうかということ。さっき童貞のことを尋ねたけど、どこか作品には撮影している自分自身が投影されているもんなんです」
松江「そう思います。『童貞。』は出演者にカメラを持たせたセルフ・ドキュメントですが、僕自身のセルフ・ドキュメントにもなっていると思います。加賀君は過去の頭でしか考えることの出来なかった自分ですし、梅澤君は『もし、自分が童貞を捨ててなかったら』という可能性としての自分なんです。『童貞。』は自分自身のドキュメンタリーとも言えますね」


 観客がもう少し聞きたいと思うところで、トークは終了。最後は梅澤君がステージに上がり、「(スクリーンの中の)かわいい僕を観てください」と挨拶をして、上映前のイベントは幕に。簡単な打ち合わせから、本番のトークを弾ませていくあたりは、さすが両監督。臨機応変さが求められる現場を仕事場としているだけのことはある。
 笑いとサプライズに満ちた上映の終了後には、ロビーで梅澤君がきれいな女の子たちから写メールを求められ、照れながら対応している姿があった。この瞬間、彼は世界一モテモテの“童貞”だった。
 進め、全国の童貞諸君よ。童貞の前に道はない。童貞の後に道ができるのだ。

(取材・文/ライター長野辰次)

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