【第25回】2017年で創業100周年!大正時代から変わらぬ味の中華そばが食べられる「丸デブ 総本店」

東海ウォーカー

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ユニークな店名は、もともと創業者のあだ名だったとか


1917(大正6)年に創業し、2017年でちょうど100周年を迎えた岐阜・柳ヶ瀬の中華そば屋「丸デブ 総本店」。メニューは創業当時から変わらず「中華そば」と「わんたん」のみ。ラーメンがまだ支那そばと呼ばれていた大正時代の味を今も頑固に守り続けている。

東京にあった「来々軒」の流れを汲む


【写真を見る】現在の店舗は1981(昭和56)年に改装されており、歴史こそ古いが清潔感は十分


明治から昭和10年代にかけて、東京の浅草に日本向け中華そばの草分けといわれる「来々軒」という店があったことをご存知だろうか。岐阜の柳ヶ瀬にある中華そば屋「丸デブ 総本店」は、その「来々軒」の流れを汲む店だといわれている。

店内に飾られている写真。右側の手前に写っているのが創業者の神谷房治さんだ


創業者は岐阜県出身の神谷房治(ふさじ)さん。「大正時代の岐阜の人間が、なぜ東京の浅草に行ったのか。そのあたりの経緯はよくわからないのですが、ともかく『来々軒』で習った味を地元に持ち帰ってきた。それが当店の始まりだと聞いています」と話すのは、房治さんの孫にあたる3代目店主の神谷房昭(ふさあき)さん。弟の利夫(としお)さんと力を合わせて店を切り盛りし、すでに40年以上を数える大ベテランだ。

3代目店主の神谷房昭さん


創業は1917年。屋台の引き売りから始めて、戦前に最初の店を構えた。その後、1944年に現在の場所に移転するも、終戦間際の空襲で全焼。戦後にあらためて店を再建したという。

こちらは1944(昭和19)年の店舗開店時に撮られた記念写真


現在は、房昭さんと利夫さんの兄弟2人のほか、母の笑子(えみこ)さんと房昭さんの妻である康子(やすこ)さん、息子の友規(とものり)さんの5人による家族経営。近所の常連客が来ると、たちまちにぎやかな世間話が始まる。まるで懐かしい昭和のテレビドラマを見ているようだ。

創業からまったく変わらない味


メニューは今も昔も「中華そば」(400円)と「わんたん」(400円)の2種類のみ。どちらのツユも、鶏ガラでダシをとった昔ながらの醤油味だ。「うちは創業のときからこの味。まったく何1つ変えていません」と利夫さんは胸を張る。

調理場で腕を振るう利夫さん


「中華そば」の麺は、初代から付き合いがあるという製麺所で特別に作ってもらったものを使っている。驚くべきは、丼ぶりからあふれんばかりの麺の量。「戦中は特に食べ物が不足していたので、せめて店に来てくれたお客さんにはたっぷりと食べてもらいたかったんだろうね」と房昭さん。この量の多さも昔から変わっていないという。

チャーシューとカマボコとネギをトッピングした名物の「中華そば」(400円)


一方の「わんたん」はすべて自家製。小麦粉を捏ねてから足で踏み、手を使って丁寧に伸ばしていく。手が透けるくらいに薄く伸ばしていくのがこだわりだ。

「わんたん」(400円)もトッピングは「中華そば」と同じ。こちらも丼ぶりにたっぷりと入れてくれる


どちらも量こそ多いものの、ツユがあっさりしているので食べやすい。常連客にはツユまで飲み干してしまう人も多いという。

昔からの味を守り続けたい


1日あたりの来客数は120人ほど。麺もワンタンも1日に出せる量が限られているため、早い日は夕方を待たずに暖簾を下ろしてしまう。それでも後から後から客が顔を出し、「すみません、今日はもう終わりなんです」「いいよいいよ。じゃあ、また来るから」という会話が何度も交わされる。いかに店が地域に溶け込んでいるかを実感させられる光景だ。

年季の入った釣り銭箱。使い過ぎてすり減ってしまったボタンもある


「ここ10何年かは、祖父の代からの古いお客さんや地元の方ばかりでなく、わざわざ遠方から足を運んでくださる新しいお客さんも増えてきています。本当にありがたいことですね」と房昭さん。これからも多くの人に求められる“丸デブの味”を守り続けていきたい、と話してくれた。

(左から)房昭さんの弟の利夫さん、妻の康子さん、息子の友規さん


大正時代の人たちが食べていた中華そばと変わらない味を今に伝える「丸デブ 総本店」。どこか懐かしい、一度食べたら絶対に忘れることのできないおいしさだ。【東海ウォーカー/藤原均】

藤原均

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