映画 情報 新作 試写会 上映スケジュール
ようこそ!   メンバーページ
占い
グルメWalker WeddingWalker 宅配 /  エンタメ /  ショッピング /  ケータイ /  占い
>> 関東エリア映画館リスト 神奈川県/横浜市神奈川県東京都千葉県
埼玉県茨城県栃木県群馬県
RSS配信一覧
2008.8.1(金)更新
【インタビュー】
このおぞましい現実から目を背けるな!
阪本順治監督と江口洋介が衝撃作「闇の子供たち」を語る
【インタビュー】このおぞましい現実から目を背けるな!阪本順治監督と江口洋介が衝撃作「闇の子供たち」を語る
「本人の考えは別にして、江口くんとはまた難解なものを一緒にやりたいと思っている」と阪本監督。すると江口は「撮影が終わったときは、(あまりに過酷な現場だったから)正直なところ、阪本さんとは当分仕事はしたくないって思いましたね(笑)。でも、時間が経って、阪本さんのような(挑戦的な)監督が少ないなってひしひしと感じて。今はぜひ、またご一緒したいなと思っています」
【インタビュー】このおぞましい現実から目を背けるな!阪本順治監督と江口洋介が衝撃作「闇の子供たち」を語る
撮影中「俺は映画を撮ってるんだろうか? という錯覚に陥ったときもあった」と阪本監督。「それに、毎日確かめてないとこのテーマが危険なものになりかねないし、タイで何をしているのかを見失いそうな気がして。つまり1本の映画として繋がったときにどう受け止められるのか? 僕は自分のことを社会派とは思いたくなくて、あくまでも劇映画の監督で、だからこそ何か間違っていないか? とか自問自答を繰り返したし、果たして映画って何だろう?って、そこまで行きましたよね」
【インタビュー】このおぞましい現実から目を背けるな!阪本順治監督と江口洋介が衝撃作「闇の子供たち」を語る
「この作品ではいつもと違って、自分がどう映るのか?っていうイメージがなかった」と江口。「だから、ずっと僕を見ている監督の目線を100%信頼していました。僕がNGを出すと監督が『はい、もう1回、南部でお願いします』って言うんだけど、どんな言葉よりもそれがいちばんズシンと来た。何しろ、何十テイクもやった後、すごく冷静に言ったりしますからね(笑)」

スタイリスト:島津由行/ヘアメイク:中嶋竜司
【インタビュー】このおぞましい現実から目を背けるな!阪本順治監督と江口洋介が衝撃作「闇の子供たち」を語る
タイで日本人が臓器移植手術を受ける事になり、提供者の子供が生きたまま臓器をえぐり取られるという衝撃の事実を知った記者の南部(江口洋介)。彼は社会福祉センターで働く恵子(宮崎あおい)とともに、姿を消した少女の行方を探っていく
【インタビュー】このおぞましい現実から目を背けるな!阪本順治監督と江口洋介が衝撃作「闇の子供たち」を語る
江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡らが、タイのロケで体を張った熱演を繰り広げている!
■「闇の子供たち」は8月2日(土)より、シネマライズほか全国順次ロードショー
(c)2008映画「闇の子供たち」製作委員会
【阪本順治監督】
1958年、大阪府生まれ。生家の向かいが映画館だったことから、幼少時より映画に親しむ。大学在学中から、石井聰亙監督、川島透等監督の撮影現場にスタッフとして参加。「どついたるねん」('89)で監督デビューを果たし、芸術選奨文部大臣新人賞をはじめ、数々の賞を受賞する。主な監督作に「鉄拳」('90)、「王手」('91)、「トカレフ」('94)、「顔」(2000)、「KT」(2002)、「ぼくんち」(2003) 、「この世の外へ クラブ進駐軍」(2004)、「亡国のイージス」 (2005)、「魂萌え!」(2007)などがある。本作のほか、「カメレオン」も7月5日(土)より公開

【江口洋介 プロフィール】
1968年、東京都生まれ。1987年にデビューし、「東京ラブストーリー」('91)や「ひとつ屋根の下」('93)など数々のドラマで一躍スターに。その後、「白い巨塔」(2003)、「新選組!」(2004)など、話題作への出演を続けながら、映画界でも活躍。主な映画出演作に、「戦国自衛隊1549」(2005)、「となり町戦争」(2007)、「アンフェア the movie」(2007)、「憑神(つきがみ)」(2007)、「少林少女」(2008)など。また、2008年はケラリーノ・サンドロヴィッチの「どん底」や劇団☆新感線の「五右衛門ロック」といった舞台にも出演。映画では「GOEMON」(2009)が待機中。

【STAFF&CAST】
監督・脚本:阪本順治 出演:江口洋介 宮崎あおい 妻夫木聡 プラパドン・スワンバン プライマー・ラッチャタ 佐藤浩市(2008/ゴー・シネマ配給)138分

>> 公式サイト
予告編[闇の子供たち]
>> 「闇の子供たち」上映スケジュール
MovieWalkerレポート TOPへ

 「闇の子供たち」はタイのアンダーグラウンドで実際に行われている子供たちの臓器売買と幼児売買春、そこに日本人が深く関わっているおぞましい現実を暴いた梁石日の同名小説を、「亡国のイージス」(2005)、「魂萌え!」(2007)などの阪本順治監督が映画化した渾身の作品。これこそ阪本監督が撮るべき、阪本監督にしか撮れなかった問題作で、監督の勇気と決意に賛同し、江口洋介が衝撃の事実に立ち向かう主人公の新聞記者・南部役に扮して、宮崎あおいや妻夫木聡とともに本作に挑んだ点も見逃せない。
 そんな中、ちょうど1年前、地図上では日本からわずか数十センチの位置にある灼熱のタイで、ともに戦った監督と主演俳優の対談が実現! その言葉からは1本の映画にかけた彼らの情熱と想い、細やかな配慮と壮絶な撮影の裏側が浮かび上がってきた。
「阪本監督とは仕事をしたいと思ってたけど、
そこで足踏みする一瞬の迷いがありました」
(江口洋介)


 すべては「スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ」(2007)などを手がけたセディックインターナショナルの中沢敏明プロデューサーが、「闇の子供たち」の企画を阪本監督に投げたところから始まった。
阪本「ちょうど『魂萌え!』の後、自分は次にどこに行くのか?って考えていたときだったから、原作を読んで、極端だけど、また違った自分を作り直さなければいけないっていうところに喜びみたいなものを感じたんですよ。ただ、いざやるとなると、神経を使うことが多くて。自分たちの恥を、自国を舞台に描くなら、批判を受けようが直接喧嘩すればいいんだけど、今回は他国に行ってやるという点で、やはりその国や国民を傷つけるものにならないだろうか? とか、そういう心配はありましたね。ただ、1回現実を知ってしまったら、それは避けては通れないし、“僕たちは”って敢えて言いますけど、現地でボランティアとして一生過ごすわけにはいかないし、カメラを持ち込んで劇映画としてそれを撮ることしかできないんだなと。タイで撮影という時間を過ごした後、結局帰ってきちゃうわけだから、それで何を残せるのか? どういうカメラの向け方をすれば上手く伝えられるのか? そういう方法論で随分悩みましたね」
江口「僕も阪本さんから声をかけてもらってから、やろうと決心するまで、やはり何日か日にちはかかりましたね。この問題に取り組む阪本監督みたいな人がいたら、そこに役者として参加する意味は必ずある、と頭では分かっていても、内容がすごく遠いことのように思えたんですよ。それで、阪本さんから様々な資料を見せてもらうようになって。それはネットからプリント・アウトしたものだったり、この映画に出てくる人間に近いような犯罪者や人身売買、臓器売買にまつわる記事だったりしたんですけど、その中でいちばん衝撃的だったのが、日本でも子供を買えるルートが検索ひとつで出てくるっていう現状だった」
阪本「そこには子供を縛ったものやスーツケースで持ち帰った子供の写真などがアップされていて。映画の中では8歳ぐらいの女の子だけど、たぶん5歳とか6歳ですね。それを持ち帰って、どういうことをしたかが書いてあるんだけど、そういうのが100件ぐらい出てくる。それをスタッフと見たときは、自分たちの人格も変わっていくような恐怖を覚えたよね」
江口「それは本当に家に置いておけないような資料なわけですよ。だから、阪本監督とは絶対に仕事をしたいとは思ってるんだけど、このテーマに自分がどうハマるのかイメージできなくて、そこで足踏みする一瞬の迷いがありましたよね」
阪本「江口くんとは飲み会で何回か会ってて、彼自身どっかで自分を変えたがってるという匂いを感じていたんです。ただ、変えるといっても、ここまで極端な提示をされるとは思ってなかったでしょうけどね」
江口「でも、そこを乗り越えるときに、自分を変えたいという勢いでやったかっていうと、まったくそうではないんですよ。人身売買などで傷つくのが無垢な子供たちだって知ったことが、僕の中では大きかったかもしれない。子供の未来が奪われてしまうことが、いちばん心に響いた。それは仕事であるとか、もしかしたら自分が役者であるっていうことも一瞬超えた衝動かもしれない。でも逆に、役者だからこそ、この問題が伝えられるのかもしれないという考えが自分の中にすごく跳ね返ってきたんです」
 その衝動は江口自身が子供を持つ父親であることとも関係あるのか?と問うと「それはあまり意識してなかった」と振り返る。
江口「ただ、映画の中にタイの街中を歩いていて、子供に電話をするシーンがあるんだけど、そこを撮ったときは実際に子供に1ヶ月間会ってないことと、自分がこの映画で頭がパンパンになっていることがシンクロしちゃって。ヘタしたら、子供のことを忘れているときもあったし、でも帰れないし。それで、現実と演じた南部の心の闇がグッチャグチャになってしまったんです。そういうリアルな感覚には陥りましたね」
「声が出なくなったときは東京から別の監督を
呼んで、続きを撮ってもらうことも考えたよ」
(阪本監督)


 撮影の終盤にはついに最悪の事件が勃発した。阪本監督の声が突然出なくなったのだ。そこには、「闇の子供たち」の準備の段階で、阪本監督がこの問題に詳しい恵泉女学園大学の齋藤百合子先生に取材と協力を申し出たという背景がある。当初「こうした犯罪に興味を抱く輩を新たに発生させる」などを理由に、齋藤先生は映画化を反対したが、「これはタイの可哀相な子供たちの映画ではない。日本や先進国の児童買春する者と彼らを創り出す社会を告発する映画なのです」という阪本監督の信念に突き動かされて“条件付き”で映画化を許諾した。
 その条件とは、1.暴力シーンは極力描かないこと。2.子供たちの非力や無力を強調するのではなく、醜い買春者らの表情や身体を画像に出すこと。3.子供たちが本来持つ生命力を表現すること。4.子供たちの力強い眼差しを撮ること。5.役者となる子供たちの精神的な側面も配慮することなどなど。
 一方で、阪本監督は目を背けたくなる現実をリアルに伝えるため、子供たちが買春者の部屋に入っていくシーンで終わる思わせぶりな表現ではなく、虐待シーンなどを生々しく映し出すことにこだわった。そのふたつのバランスをとる細やかな気遣いがストレスとなり、監督の声を奪ったのかもしれない。
阪本「子供たちの虐待シーンをいよいよ明日撮らなきゃいけないってときに、自信はあったんですよ。子供たちともちゃんと会話してきたし、(そのシーンを撮ることが社会的に大きな意味を成すということも)伝わっている。子供たちには絶対大人の裸を見せないように、カットを割って撮影する方法も考えた。でも、明日のシーンを想像していくうちに、寝れなくなるし、食べ物が入らなくなるし、結果、なぜか朝から声が出なくなって。それで何カットか、損しましたよね(笑)」
江口「僕も監督がデリケートになっていることはもちろん知っていたけど、声が本当に出なくなったのを見たときには、これはただごとではないなと思いましたね。とりあえず日本のスタッフに『栄養ドリンクなんかを持ってきた方がいいんじゃないの?』って言って(笑)。そういうことじゃないんだけど、それぐらいしか思い浮かばなかった」
阪本「なんか、いろんな人がいろんなものをホテルの部屋に持ってきてくれたよ(笑)」
江口「僕は撮影が止まるんじゃないかなっていう恐怖感がありましたよ」
阪本「6時間ぐらい止まったからね。だけど、タイを発つ日も、東京のロケのスケジュールも全部決まってたんで、1日延ばすってわけにはいかない。しかも、翌日が最後の集会の群集シーンだったんですよ。だから俺はあっ、これは終わったなと思って。東京からあの監督かあの監督に来てもらって、続きをやってもらわざるを得ないか?って考えましたよ(笑)」

 映画の主人公・南部には、原作にはないある秘密が隠されていている。多くは書けないが、それこそが阪本監督が「闇の子供たち」でいちばん頭を悩ませ、自らの強い意志を注ぎ込んだ大いなる挑戦だった。
阪本「今回自分で脚本を書くときに、最初に決めたのが南部の結末なんですよ。ラスト・シーンだけど、あそこを起点に、そこから遡って全シーンを作ってるんです。それはなぜかというと、観終わったときにこれが(自分とは関係ない)遠いところの話じゃなくて、すべての人じゃないかもしれないけど、観た人に返ってこなきゃいけないという想いがあったからです」
 劇中には「俺たちは観たものを伝えるのが仕事だ」と言い放つ南部と同じ新聞記者(豊原功補)が登場するが、阪本監督の姿勢はそれとは明らかに違う。
阪本「あれはジャーナリズムだと思うんですよ。僕らがやっているのは劇映画だから、最終的にドキュメンタリーとは違う“作為”を作り込んで、告発というものに留まらない表現をしなきゃいけない。告発とは自分が関知しない事件を世に問う行為だけど、そこに自分たちが関知する“作為”を込めることが、結局、劇映画でやる意味なのかなと思ってるんですよね」
江口「この映画を観たら、誰もが『これはいけない!』って大声で訴えたくなると思うんですよ。でも、世の中の事情だったり、ボランティアはできないなどの現状があって、すぐに行動に移せる人は少ない。南部の闇みたいなものが、そういう、分かってるけど羽交い絞めになっていて動けない人の心に繋がるのかなと。ラストで綺麗さっぱり解決してしまったら、逆に残り方がちょっと違うんじゃないかな? と、映画を観たときにそれは思いましたね」

 取材当日の夜には、大学生を中心とした同世代の人たちを招いた本作の試写会が開かれ、上映後に齋藤先生の司会で阪本順治監督と江口洋介を交えたティーチ・インも行われた。その席で、参加者のひとりの「私たちは何をしたらいいでしょう?」という質問に答えた阪本監督のメッセージを最後に記したい。
「観ていただいて、すぐにアクションを起こしてくださる方もいるでしょうけど、この映画はそれを強要しているわけではないんですね。僕自身がそうであったように、まずたじろいでもらいたい。そして映画館の外に出たときに、たぶん日本の風景が違って見えたり、若者たちや子供が違って見えると思うんですよね。そんなふうに、この映画をきっかけに、何か見えるものが変わってくれればいいなと思います」
 とにかく、まずは「闇の子供たち」を観ることから始めて欲しい。最近の映画が忘れていた強靭な“力”が、あなたの心を揺り動かすのは間違いないから。

(取材・文/イソガイマサト)

(C)KADOKAWA X MEDIA ALL RIGHTS RESERVED.