知的好奇心をくすぐり、新たな発見の場となるのが、1つのテーマに重点を置いた「ワンテーマ博物館」。1989年に、トヨタ自動車株式会社創立50周年を記念してオープンした「トヨタ博物館」もその一つ。世界的な名車約140台が展示され、自動車の歴史や現代の自動車技術まで、楽しく学べるのが特徴だ。今回はそんな「トヨタ博物館」を自宅でも楽しめるよう、現在臨時休館中の同館の協力のもと、貴重な展示車両の写真とともにその魅力をご紹介!
オーバルな外観が特徴の「クルマ館」は、1〜3階の展示フロアで構成。トヨタ初の生産型乗用車「トヨダ AA型乗用車」(1936年レプリカ)と、建設当時の挙母工場のレリーフを展示する1階にはじまり、2階では自動車の黎明期から日本車の誕生までの歴史を紹介。さらに3階では、1950年代から現代にいたるまでの世界の自動車の進化と課題への取り組みが紹介されている。展示されている車両約140台のほとんどが、走行可能な動態保存というから驚きだ。
初めて訪れる人はその展示車両の多さに圧倒されるが、なかでも見逃せない3台を広報の伊田さんに教えてもらった。最初に紹介するのが「パッカード トゥエルヴ (ルーズベルト大統領専用車)」だ。
アメリカが誇る「パッカード」は、アメリカ大統領やロシア皇帝をはじめ、世界各国の王室や元首に愛用された名車。展示されている車両はルーズベルト大統領専用車で、厚さ3センチの防弾ガラスをはじめ、装甲車並みのボディを持つのが特徴だ。
歴史的に貴重な車両をもう一台。「ロールスロイス 40/50HP シルバーゴースト」は、ロールス・ロイス社の最高傑作と言われる名車で、幽霊のように静かに走ったことから「シルバーゴースト」と名付けられたのだとか。実際にタイ王室が使用した車両が展示されていて、その優雅なたたずまいと華やかな雰囲気にはうっとりと見とれてしまうほど。
続いて紹介するのが、少し変わった経歴を持つ「イスパノスイザK6」。フランス製の超高級車だが、1935年に旧佐賀藩主・鍋島家の13代当主、鍋島直泰公爵がベアシャシー(ボディがない状態)でフランスから輸入。約半年かけて、自邸敷地内の小屋で自らデザインした2ドアクーペボディを日本人職人に製作・架装させたジャパンメイドの一台だ。
撮影禁止の博物館が多いなか、「トヨタ博物館」は自由に写真撮影できる博物館としても人気。館内では、フォトジェニックな車両を前に、さまざまな角度から撮影する人の姿が多く見られる。開館30周年を迎えた2019年にオープンした「クルマ文化資料室」では、クラシックなスタイルが魅力の「ローバー6HP」と「スイフト9HP」に乗車して記念撮影もできる。
ほかにも「クルマ文化資料室」には、世界初の自動車雑誌「La Locomotion Automobile」をはじめとした雑誌や自動車カタログ、ポスター、カーマスコットなど、約4000点の文化資料が展示されている。
日本で自動車が一般化した1960年代から今日まで、自動車を取り巻く環境は目まぐるしく変化を遂げている。トヨタ博物館でその変遷を体感してみよう。
■トヨタ博物館
住所:愛知県長久手市横道41-100
電話:0561-63-5151
時間:9:30~17:00 (入館~16:30)
休み:月曜(祝日の場合翌日)
料金:大人¥1200、中高生¥600ほか
駐車場:320台(無料)
交通アクセス:名古屋瀬戸道路・長久手ICより車で3分
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当面の間休館中。
再開館後も一部サービスの変更、中止の場合あり。詳しくはHP参照
画像提供=トヨタ博物館