近年、大人のコレクターズアイテムとして注目を集めるミニチュアアートの世界。その人気はSNSだけに止まらず、各地でミニチュア教室や展覧会が開催されるなど広がりをみせている。今回は「あったらいいな」「行ってみたいな」と思わせる、おいしそうなカフェごはんなどのミニチュア作品を制作しているミニチュア作家・fraiseさんにインタビュー。作品作りへのこだわりや、ミニチュア作品の魅力を教えてもらった。
「おいしそう」を伝えるためのこだわりは“本物”を観察すること
ーーfraiseさんの作品は、どれも本物のようなおいしさが伝わってきます。「おいしそう」に見えるために工夫していることはありますか?
【fraise】食パンの質感や厚み、中に挟んだ具材の色味や質感は何度も作り直しています。
一日置いて作品に客観的に見て違和感がないか、拡大してもちゃんと本物のように見えるかを確かめるのもポイントですね。
ーーこれまで制作した中で、もっとも反響があったのはどんな作品ですか?
【fraise】2017年4月1日に投稿した三色サンドイッチの作品ですかね。これはパンのメーカーさまにオファーしていただき作ったものです。
【fraise】メーカーさまのアカウントでもご紹介していただいたのですが、「かわいい!」「初めて見た!」などと感想をいただけたのはすごくうれしかったですね。迷いながらも一生懸命やってきたことで、見ている人の感情を揺さぶったんだと思うと泣けてくるくらいに。
ーー制作する際にこだわっている点があれば教えてください。
【fraise】本物をよく観察すること、なるべく写真より実物を見るようにということを心がけています。絵を描くときもそうなのですが、モチーフを目の前に置いて粘土を成形したり、着色をしたりしているんです。
【fraise】あとは、パンと挟んで見えなくなるトマトの断面であったとしても細かく作ってからサンドしたり、瓶に入れるスプーンも結局はジャムに埋もれて見えなくなることがわかっていてもしっかりと削って作るようにしたり、ちょっとしたこだわりを積み重ねています。
ーー見え方にこだわっているということは、写真を撮る際にも気を付けていることもありますか?
【fraise】レンズを通して見る作品がすべてなので、撮影してみて気になる箇所が出てきたときには、もう一度やり直すことも少なくありません。完成したと思っても、レンズを通して見てみると、全く違った仕上がりになっていることも多々あるんです。
【fraise】でも、出来上がった作品を写真撮影する時間は本当に幸せですね。時間をかけて作成した作品が完成した様子を見れるのは至福の時間だなと感じます。
ミニチュア制作で難しいのは”素材選び”
ーーお話を聞いただけでも、かなり細部まで拘っているのだろうなという印象を受けるのですが、だいたい1つの作品を作るのにどのくらい時間がかかるのですか?
【fraise】大きさにもよりますが、例えばプレートを1つ作るとしたら約1か月ほどというところですかね。食べ物は樹脂粘土で成形していますが、お皿や瓶などはプラスチック製のものを使って成形しているので、素材選びも込みで考えると時間がかかってしまいます。
ーー素材もそれぞれ変えているんですね。
【fraise】そうですね。木やレジンやはんだを使うこともあります。素材選びや制作方法を1から考えるのは、ミニチュアを制作する中で最も難しさを感じるポイントですね。
ーーご自身のお気に入りの作品はどれでしょう。
【fraise】瓶入りのオレンジシロップですかね。
【fraise】この作品は蓋も瓶も自分で作ったのですが、実は3〜4年ほど瓶を作りたいけど思うように作れないと言う期間を経て完成したものだったんです。いろんな方にアドバイスをいただいて、やっと作れるようになった時の嬉しさは私の人生の中で忘れられないものとなりましたね。
ミニチュアの魅力は「思い描いた世界を作り出せること」
ーーfraiseさんは2010年ごろから、ミニチュア作品を作り始めたそうですね。きっかけはなんだったんでしょうか?
【fraise】幼少期のころからミニチュア玩具で遊ぶのが好きでした。また、絵を描くことも大好きだったので、美大に進学しました。その時に画材屋さんで見かけるジオラマの材料や樹脂粘土に出会って、粘土作品をマネて作ってみたのがきっかけです。
ーーミニチュアの中でもカフェごはんを題材にされているのはなぜですか?
【fraise】カフェでいただくランチ、そして”空気感”をビジュアル化してみたいと思ったからです。さらに言うなれば、定番の食事風景というよりも、その時の気分で新しいものを取り入れていきたいということは毎回考えて制作しています。
ーーfraiseさんにとって、ミニチュア制作の魅力とはなんですか?
【fraise】作品を見て笑顔になってもらえることが励みですね。作ることそのものも楽しいのですが、それ以上に「小さくなって、そこのパン屋さんへ行きたい!」と言っていただいたときに、作ってよかったと思います。自分が思う空間を自由自在に作れるのは、ミニチュアの魅力の1つですから。
ーー今後の目標、これからの活動予定などについて教えてください。
【fraise】各地で行われるイベントに参加して、作品を販売したり、ミニチュアが好きな方とお話しできたりしたらいいなと思っています。また、見ていただいている皆さんにはSNSなどでの発信を通して、展覧会にお出かけしたかのように写真をご覧いただけたらうれしいです。子供のころを思い出したり、おいしそうだなと思ったりと楽しい気持ちになりながら楽しんでください。