子供たちからの人気だけでなく、大人のコレクターズアイテムとしても人気を集めるドールハウスやミニチュア。近年では、全国でミニチュア制作のワークショップなども開かれ、コレクターだけでなく作り手側にも広がりを見せている印象だ。そこで今回は、ミニチュア作家・mihanada miniaturesさんにインタビューを実施。ヴィンテージ家具から日用品など多彩なジャンルを手掛けているmihanada miniaturesさんにミニチュア制作へのこだわりを聞いた。
題材選びのポイントは「ミニチュア目線」と「コンセプト」
ーーmihanada miniaturesさんとミニチュアの出会いを教えてください。
【mihanada miniatures】最初に作り始めたのは、小学生のころです。魔女の宅急便の舞台を作ったり、昭和初期の家を作ったり、夏休みの自由課題で毎年ミニチュア作品を提出していました。
ーー毎年!作り始めたきっかけはなんだったんでしょうか?
【mihanada miniatures】手先が器用な父の影響です。小さいころから紙や粘土で一緒にミニチュアを作って遊んでいました。
ーーSNSを見るといろんなミニチュア作品がありますが、mihanada miniaturesさんは幅広いジャンルの作品を作っている印象です。題材選びの基準を教えてください。
【mihanada miniatures】基準と言っていいかはわかりませんが、大事にしてるのはミニチュア制作目線で物事を見るということです。
例えば、日々の生活の中で「かわいいな」「素敵だな」と思うものに出会えたとしたら、ミニチュア化するなら、どうやって作るか、どんなアイテムと合わせたらかっこよくなるかを考えて、次回のコンセプトを決めています。
ーーなるほど。コンセプトを決めてから制作しているのですね。
【mihanada miniatures】毎回必ずコンセプトを決めてから制作に入るのはこだわっているポイントの1つですね。骨格があるとスタートからゴールまでが明確になる気がしています。
リアルな懐かしさの秘訣は「本物の錆(さび)を発生させていること」
ーーご自身の中で、お気に入りの作品はどれでしょう?
【mihanada miniatures】8年前に作った地下廃墟のミニチュアです。もともと朽ちたものが好きで、剥き出しの廃墟の美しさをミニチュアで、しかもじっくりというより力を抜いて静かにぼんやりと眺めてもらえるような作品を作りたくて作成したものでした。
華やかさはないのですが、静謐(せいひつ)な佇まいの中に郷愁のような懐かしさを感じてもらえたらうれしいです。自分にとってターニングポイントになった作品です。
ーーこの作品もそうですが、mihanada miniaturesさんの作品といえば、アンティーク調な雰囲気がリアルなところも魅力的です。どのように再現されているんでしょう?
【mihanada miniatures】ありがとうございます。錆(さび)を再現する方法には、素材に重きを置いていて、塗装で表現する方法もありますが、私の場合は金属の持つ質感を大切にするために、本物の錆(さび)を発生させています。
ーーまさか本物の錆(さび)を意図的に発生させているとは!驚きです!これまで制作をしてきた中で、最も反響があったのはどの作品ですか?
【mihanada miniatures】“色から始まるミニチュアづくり”をコンセプトに作った4つの作品です。
黒・緑・赤・青の4つの色が持つイメージからミニチュアを制作していきました。次に何が出てくるのか見ている方が楽しんでいただけてたみたいでうれしかったです。
ーーミニチュアを制作している過程で、どのような部分が難しいのでしょうか?
【mihanada miniatures】ミニチュアのアイテムを土台に配置するときですかね。初めにイメージしていた場所にミニチュアを置いてみると、想像と違うことがあるので。
間隔や角度を少しずらしただけでも景色や情景が変容するので、いろんなパターンの配置を検討しながら決めています。難しくも楽しい時間ですね。
「おばあちゃんになっても作り続けたい」
ーー今は子育てをしながら、ミニチュア制作をしているとのことですが、どのようなタイミングでミニチュアを制作しているのですか?
【mihanada miniatures】これについては絶賛模索中です。ミニチュアを作りたい気持ちと、我が子の成長を側で見守りたい気持ちとの狭間で心が揺れています。
ただ、ずっと頭の中にある目標は「おばあちゃんになっても作ることを続けていくこと」なので、ミニチュア制作は続けていきたいですね。
ーーmihanada miniaturesさんをそこまで引きつけるミニチュアの魅力とはいったいなんなのでしょう?
【mihanada miniatures】覗き込むと瞬時に、自分がそのミニチュアの中の主人公になれるようなところですかね。特別な魅力があると思っています。
ミニチュアを覗き込む楽しみは、小さな冒険だと思うんです。だから、なかなかお出かけができない状況の中、いろんなクリエイターの方が作っているミニチュアを見て、ミニチュアの世界を旅してもらいたいですね。
(文・於ありさ)