シンガーソングライター、Baby Kiy「もっと心に寄り添う曲を作りたい」

東京ウォーカー(全国版)

EP『Silent moon』を発売したBaby Kiy

曲はもちろん、ファッションや生き方でも、10代、20代の女の子を中心に熱い支持を得ているシンガーソングライターの「Baby Kiy」。3月17日にEP(ライブDVD付き)『Silent moon』を発売した。EPには、2020年にリリースされたデジタルシングル、『Daisy girl diary 』『君のしぐさも』の2曲と2021年2月に先行配信された『Silent moon』、そして新曲の『Secret』の4曲が収録されている。そんな彼女に話を聞いた。

【写真】10代、20代の女の子を中心に熱い支持を得ているシンガーソングライターの「Baby Kiy」

人の心にもう一歩近づくようなものを作りたいなと思って書いた4曲を収録

――今回、CDというパッケージ作品でリリースされるEP『Silent moon』は、コロナ禍のなかで作られた新曲が収録されていますね。コロナ禍という状況での曲作りで変わった部分はありますか?

【Baby Kiy】曲調など、私らしい部分は変わっていないと思いますけど、このような状況でみんながどういう曲を聞きたいのかなと考えたところはあります。多分明るくて元気な曲じゃないな、もっと心に寄り添うような曲を聴きたいんじゃないかなと思って。

アーティストやミュージシャンって、キラキラした世界にいるように思われがちだけど、ステージに立てるのは限られた機会でしかないし、曲作りをしたり、歌詞を書いたり、他の時間は結構地味なんです。人前でパフォーマンスする場が無くなってしまったこともあって、どんなメッセージを伝えたらいいのかなと考えた時に、人の心にもう一歩近づくようなものを作りたいなと思って書いた4曲が収録されています。

人の心にもう一歩近づくようなものを作りたいなと思って書いた4曲が収録されています

――CDとしてのリリースは1年半ぶりになりますね。
【Baby Kiy】そうなんです。この1年半の間に、新型コロナウイルスの影響が大きくなってしまって。自分もいろんなことを考えました。今後の生き方とか。大なり小なり、みんなも考えた時期だったと思うんですけど、そのいろいろと考えを巡らせた時間のなかで、自分が一歩成長したなと思う時があったんです。

今回のCDでは、それを伝えられたいいなと思っています。今までとはガラッとイメージを変えた夜っぽいイメージのジャケ写にしたり、表題曲になった『Silent moon』のMusic Videoもモノクロで、いつもと違う表情を見せたり。今までのサウンドは残しつつ、新しくいろんなことに挑戦できたらいいなという思いを込めたEPになっています。

――たしかに『Silent moon』は、これまでとはまた違った印象を感じました。
【Baby Kiy】そう言ってもらえると嬉しいです。『Silent moon』は恋人やパートナー、相手を月に例えて書こうと思ったのが始まりなんです。あと日本語の部分にはこだわりました。今までの歌詞は日常で使うような言葉をわざと選んでいたんですけど、今回は“さまよう”とか、ちょっと小説に出てくるような言葉を入れてみようかなと思って。

あと、SNSの話題のなかで、本当の自分が分からないとか、よく聞くようになってきたので、そういった部分も歌詞に入れたいなと。人の本質に近づきたいなという思いが頭にあったので、本当の自分にフォーカスするような、そんな歌詞になっていると思います。

新しくいろんなことに挑戦できたらいいなという思いを込めたEPになっています

誰かの心に寄り添えるなら、それもいいなって。今後はそういうところも見せていきたい

――ほかの収録曲はいかがですか?『Secret』は、ちょっと大人っぽい感じですよね。
【Baby Kiy】一番好きな曲です。ずっと大人な夜のイメージの曲を作りたかったんですけど、私のイメージって『Lazy Boy』のようなビーチガールみたいな感じで、CDにするなら名刺代わりになるようにと思っていたこともあって、こういう大人っぽい曲は、これまであえて避けていた部分もあったんです。でも、コロナ禍のなかで考えたことや自分が成長を感じるなかで、大人っぽい曲もいいのかなと。

本当の自分にフォーカスするような、そんな歌詞になっていると思います

自分の作りたいものとして自由に、という部分が一番出ているかもしれない。いつもはチームで、今回のCDにはこういう曲を入れようという感じで進んでいくんですけど、この曲は最初アルバムに入れる予定じゃなくて。自分が作りたいように作ったら、思った以上によかったから収録しようとなりました。夜のドライブとかに流してほしいなと思う、心地よさを目指した曲です。

――書きたい曲や伝えたいことも少しずつ変わってきているんですね。
【Baby Kiy】本当は前からそうだった部分もあるんですけど、今回のEPに入っている曲にはそういう部分が大きく出ているのかなと。どっちも自分なんですけどね。違う面の自分も見てほしいという思いがありました。

私はよく「太陽キラキラ」みたいな明るいイメージをもたれることが多いんですけど、実は月のような一面もあって。たしかに、人より明るい、太陽みたいな部分も多いけど、その分、反対の部分も多い。人間、誰しもそうなのかなとも思うんですけど、自分はこれまでの活動のなかで、そういう部分は見せてこなかった。でも、今は逆に見せたいなと思うように変わってきたんです。
シンガーソングライターって、普段何をしているのか分からないじゃないですか。意外と苦しんで曲作りをしているんだとか(笑)。そういう部分もさらけだすことで、誰かの心に寄り添えるなら、それもいいなって。今後はそういうところも見せていきたいです。

違う面の自分も出していこうという思いがありました

――それはコロナ禍で自宅にいることが多かった影響もあるんでしょうか?
【Baby Kiy】そうですね。もともと家という自分だけの守られた空間が好きだったので、家にいることは苦痛ではなかったんですけど、いつも以上に自分の心と向き合う時間が増えたのかなと思います。

私はジュエリーのプロデュースもしていて、職人さんが一つ一つ手作業で作っているとか、そういう本質を求めたいなと思っていました。自分が作る曲も、自分自身も本質をもっと極めていきたいんです。そのなかから生み出すクリエイティブというのは、また変わったものになると思うし。自分の痛みや経験を作品にするので、人より深く考えるのは職業病なのかな。それもあって、気持ちの切り替えはうまい方だと思います。

「太陽キラキラ」みたいな明るいイメージをもたれることが多いんですけど、実は月のような一面もあって

――最後にメッセージをお願いします。
【Baby Kiy】今回のCDは、2019年のライブ映像もDVDとしてセットになっているんですけど、今見るとすごくエモくて。こんなふうにライブができる日はいつ来るんだろうと思うくらい、奇跡の映像だなと。ステージから見るファンの方の笑顔や声援から、皆さんの気持ちを感じて元気を届けたいなといつも思っていたので、こういう状況で皆さんに会えないのはすごくさびしいです。

でも、今回のリリースの告知や「ライブができるよ」というお知らせに、今までと変わらずに「チケット買ったよ」とか言ってくれるのが本当に嬉しくて。今後、自分が何をしたいのか、向き合った時にやっぱり人に何か影響を与えるものを伝え続けたいと思ったので、今の時期だからこそ、心に寄り添える作品を届けていきたいです。

撮影・取材・文=野木原晃一

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