6月10日(木)から新宿・紀伊國屋ホールにて開幕する舞台『新・熱海殺人事件』に出演する元乃木坂46の能條愛未。つかこうへい氏の代表作『熱海殺人事件』を新たな演出で上演する本作で、ヒロインの婦人警官・水野朋子役を向井地美音(AKB48)とWキャストで演じる。伝説とも呼ばれる名作に挑戦する思いを聞いた。
――まずは、本作への出演が決まったときの思いから聞かせてください。
【能條愛未】歴史ある作品を数多く生み出している、つかこうへいさんの作品で、しかもこれまでいろんな方が演じている『熱海殺人事件』に、自分がまさか出演できるとは思っていなかったのですごくうれしかったですし、光栄だなと思いました。
――プレッシャーよりも期待のほうが大きい感じでしょうか。
【能條愛未】そうですね。つかさんの作品は、女優なら誰しもが憧れるというか、やってみたい役だと思うので私も挑戦できるんだ!と思うと、すごくワクワクしました。
――今回はAKB48の向井地さんとのWキャストとなりますが、演じる水野朋子は、どんなキャラクターですか。
【能條愛未】 (向井地)美音ちゃんが演じる水野は子供っぽい印象で、私が演じる水野は、色っぽい女性というキャラクターになっています。演出の中江(功)さんがわかりやすく別々の形に色付けしてくださったので、役作りもしやすいなと思っていて。色っぽさのなかにも、刑事としての凛々しさやカッコよさを出せるように演じていきたいです。
今までもいろんな方がやってきた役でもあるので、これまで観たことがある方にもまた新しい水野を感じてもらえるような私なりの水野を作り上げていければと思います。
――能條さんと似ている部分はありますか。
【能條愛未】それが全然ないんですよ(笑)。普段の私とは全く違うので、ちゃんと自分のなかでスイッチを切り替えないと務まらないなと思っています。お芝居をするとき、いつもは役を自分に近づけるというやり方をしていたんですけど、今回は自分から役に向かっていくスタイルじゃないとダメだなと。そこも今回は挑戦ですね。
――Wキャストで同じ役を演じることについてはいかがですか。
【能條愛未】Wキャストでやるのは久しぶりなんですけど、今回は全く違うキャラクター設定なので、お稽古していても相手のお芝居を楽しんで観てしまっています。いつもは、どういうふうに演じるのかな、じゃあ私はこういう感じにしてみようとか考えてしまうんですけど、今回は白と黒くらい全然違う設定なので。お客様も全く違う、別の作品を観ている感覚で観てもらえるのかなと思います。
――乃木坂46を卒業して約2年半。気持ちに大きな変化はありましたか。
【能條愛未】そんなに自分のなかで大きく変わった思いはないんですけど、“乃木坂46の能條愛未”から単なる“能條愛未”になったので、よりいっそう気を引き締めていかなくちゃというか。全てが“能條愛未”の評価になってしまうので、しっかりと第一線で活躍されているほかの女優さんたちと戦えるレベルに追いつかなくちゃとは思っています。
――お話を聞いていると、今回の『新・熱海殺人事件』にも女優としての強い意気込みを感じます。
【能條愛未】今回はかなり気合が入っているので(笑)。でも、いつの間にか職業病っていうんですかね。昔は単純にお芝居が楽しくて演じていたのに、いつしか変な邪念が入ってきて「失敗しちゃいけない」「お客様からお金をいただいているんだから、もっとうまくならなくちゃ」と考えてしまうようになってしまっていて。変に力が入っていたなと思うんです。
だから、今回はそういう意識も大事だけど、根本的な「お芝居が好き」という気持ちを大切に。そこをもう一度取り戻したいなとも思っています。本当にシンプルなことなんですけど、余計なことを考えず、ただ役としてステージで生きる。周りのセリフをちゃんと聞いて、そのときの感情で動けるように。初心に返るというのが、今回の自分のテーマです。
――最後にメッセージをお願いします。
【能條愛未】今回は自分のなかで、かなり挑戦だなと思っている作品です。歴史あるものに参加するというのはもちろんそうですし、これから女優として頑張っていきたいという大きな決意表明、覚悟のようなものにしたいと思っています。それくらい気合が入っているので、それをしっかりと見届けてほしいです。
撮影・取材・文=野木原晃一