おにぎりの具材で目や鼻をつけた“顔おにぎり”をはじめ、みそ汁に蕎麦を入れた“みそ汁蕎麦”や、わざわざ「揚げずにからあげ」を使って作った“揚げてしまったからあげ”など、87歳の「おばあ」が作るユニークな料理が大人気の「おばあめし」。
その魅力をさらに伝える月イチ連載では、前月のおばあめしを細かく紹介。今回は、新年に登場した新顔のおにぎりと料理を総ざらい!おばあらしい大胆なおにぎりをはじめ、手作りのおせちやおばあめしでは珍しいこってり料理などもピックアップ。おばあの孫である大迫知信さんにメニューを振り返ってもらった。
おばあと仲良く大晦日!のはずが…
ユニークおにぎりと奇抜な料理で2021年を駆け抜けたおばあ。2021年を締めくくる大晦日は、静かに新年を迎えたという。「食卓には、おばあが作ってくれたすき焼きが並んでいました。大晦日らしい豪勢な晩ご飯でしたね」
そして除夜の鐘が聞こえる時間までゆっくり食事を楽しもうとすると、おばあが信じられない行動に出たという。「今からすき焼きに手を付けようという時に、おばあが『もう今日は寝るわ』と言い残して寝室に行きました。いろんな料理を作ってくれていたので疲れていたんでしょう。だから、除夜の鐘はしんみり1人で聞きましたね」
そして迎えた2022年。高齢のおばあのため大迫さんが料理の買い出しや家事をするようになったものの、1月からしっかり斬新なおにぎりや料理がラインナップしている。まずは、おにぎりからご紹介!
2022年の新トレンドは「埋め込みおにぎり」!
何年もの間、あの手この手でいくつもの創作おにぎりを生み出してきたおばあ。そんなおばあが2022年早々に握ったのが、大迫さんも思わず「そうきたか!」とつぶやいた「とり天埋め込み天むす」。大迫さんが買ってきた惣菜の鶏の天ぷらをぶつ切りにして、おにぎりに埋め込んだひと品。
「表面だけでなく、中にも鶏天がぎっしりと詰まっています。天ぷらを埋め込もうという発想がおばあらしいです。天むすみたいな感じでおいしかったですよ」。この“埋め込みおにぎり”は最近のおばあのマイブームらしく、手当たり次第とも思える手際の良さであらゆる具材を埋め込んでしまう。
その証拠に、もう1種埋め込みおにぎりが。一般的には酢味噌をつけて食べる、ボイルしたホタルイカも大胆に埋め込み!
「以前“貼り付けおにぎり”としてホタルイカを使ってくれたことがあって、『またあれを作ってほしい』とリクエストしたんですよ。すると、今回は貼り付けるんじゃなくて器用に埋め込まれていました。白いご飯とホタルイカのマリアージュは、ぜひみなさんにも試してほしいですね」
さらに埋め込み系が続く。「パック焼鳥 埋め込みおにぎり」は、惣菜売り場で販売されている焼き鳥を串から外し、大胆にもおにぎりに埋め込んでいる。
「インパクトでは、今のところ2022年1番と言えるんじゃないでしょうか。埋め込み過ぎて表面から見えるほどの量が入ってますからね。味はもうご想像の通り、最高でした!」
見た目の奇抜さばかりではなく、味の追求に余念がないのもおばあのすばらしさ。大迫さんがひと目見ただけで「絶対おいしいやつやん!」と言ってしまったのが、きゅうりのキューちゃんの小粒タイプ「こつぶキューちゃん」を使った「こつぶキューちゃん 混ぜ込みおにぎり」だ。
「食べやすいように小粒タイプを使用しているのがおばあの優しさですね。それにしても、キューちゃんをおにぎりに混ぜ込んで、海苔で巻くだけでどうしてこんなにうまいんでしょうね。仕事にも通じるかもしれませんが、『奇道ではなく王道を極めよ』というメッセージも感じました(笑)」
王道のおいしさを追求したかと思えば、おばあらしいミステリアスなおにぎりも登場。一見すると「のりたま」を使ったおにぎりだが、ひと口頬張ってみると少し違和感があったという。
「食べる前は『のりたま』だと思ったんですが、口に入れた瞬間に『これは僕が知っているふりかけじゃない』と気づいたんです。よく見てみると、海苔の形は違うし、鰹節らしきものも混ざっていました。たぶん、僕らが知っている『のりたま』ではありません。でもおいしかったので1つの文句もありませんね。絶対的なおいしさと不思議が残ったおにぎりでした。後日『かつたま』という鰹節とたまごのふりかけだと判明して、『そんなんどこで見つけてきたんや!』とさらに驚きました」
バラエティに富んだおにぎりに負けず劣らず、料理のほうは感動あり、サプライズありの充実メニューが登場!
今年も素敵なお正月をありがとう、おばあ!
大晦日は除夜の鐘の音も聞かず年越しそばも食べず、先に寝てしまったおばあ。やはり年齢のせいもあって、今年はお正月らしい過ごし方は難しいと思っていたが、元旦にはしっかりおせち料理がお目見え。
「酢ゴボウとレンコンはおばあが作ってくれたものです。今年で88歳ですから、無理はできないとわかっていながら『おせちはあるのかな』と思っていたので、本当にうれしかったですね。味付けも手作りらしいやさしい味わいで完璧でした」
インタビューの際、大迫さんは話しながら目をこすっていた。「泣いてないですよ(笑)」とは言っていたが、もしかすると、おせちのことを思い出して感極まったのかもしれない。それぐらいうれしさがこみ上げた元旦メニューだったようだ。
揚げ物欲を満たした孫に、おばあもにっこり
年齢を重ねると、揚げ物や肉料理よりもあっさりとしたメニューを好んでしまうもの。80歳を超えるおばあももちろんそうだ。そんななか大迫さんが「揚げ物を食べたい」とお願いしてみたところ、「これならどうや!」と言わんばかりの1品が食卓に並んだ。
「昔、仕事で訪れた台湾の屋台で食べたダージーパイそっくりの揚げ物がありました。大人の顔ぐらいある巨大なチキンカツです。揚げ物を食べたいとは言いましたが、まさかこんなにデカイやつを買ってくるとは思いませんでしたね」
巨大チキンカツを前に、腰を抜かしそうになるほど驚いたという大迫さん。しかもチキンがあるのに、食べ応えのあるカンパチも並ぶ。大迫さんがあまりにも驚いている様子を見て、おばあも笑顔を浮かべた。
さずがに1枚全部を食べ切ることはできなかったそうだが、揚げ物欲を十分に満たしたという大迫さん。「当分、揚げ物は食べなくても大丈夫ですね」と満足そうに話してくれた。
新年らしい豪勢なメニューが続々と登場した今回のおばあめし。次回はおばあめし史上最大のインパクトを誇るおにぎりが登場予定。そして“孫めし”も?乞うご期待!
取材・文=橋本未来