原案は蒼井優? 「家族はつらいよ2」大阪上映会に監督キャスト集合

関西ウォーカー

「熟年離婚」をテーマに家族のドタバタ劇を描いた「家族はつらいよ」(2016年3月公開)のシリーズ2作目「家族はつらいよ2」が、5/27(土)から公開。その先行上映会が5月5日、大阪・難波「なんばパークスシネマ」で開催され、上映後に出演の橋爪功、吉行和子、小林稔侍、そして山田洋次監督が登壇し、舞台挨拶が行われた。

大きな拍手で迎えられた4人。山田監督は「今日は先行上映会にこんなに沢山来てくださって、本当に有難うございます。お礼を言わなければならないと思って駆けつけました」と第一声。

橋爪は「本来なら平田家一同ここへ来なくてはいけないはずなんですが、勝手なやつばっかりでね。若いやつなんかゴールデンウイークで自由を謳歌しているみたいで結局、吉行さん、僕、小林稔侍さんとロートルばっかりが来ました。本当にまとまりのない家族です」と笑いを誘った。

続いて吉行は「本当にまとまりのない家族なんですけれど、でもすごく心は通じ合っていて、会うとニコニコしてしまうという不思議な関係の家族でございます」と笑みを浮かべた。

最後に小林は「前回も出していただいたんですけれど、今回またヅメさん(橋爪功)と同級生という違う役で出させていただきました。最後の『はい、お疲れ!』と言う時の感動がほしくて、早く終わればいいなと思いながら撮影に臨み、監督の鞭の元になんとか今日を迎えました」と挨拶した。

2作目の制作を決定した時期について山田監督は、「折角できたアンサンブルをこのまま壊してしまうのはもったいない」という思いから、1作目を制作中に既に構想を練っていたと言う。ちょうどそう思っていた時に、仕事の合間にお茶を飲みながら蒼井優から「知り合いの老人で銀杏が好きな人がいて、亡くなった時に棺桶に銀杏を沢山入れたら、それが炉の中でパチパチはじけて、みんながびっくりしたという話を聞いたんです」と言い「人の死というのはとても重たいことなんだけれど、それでも笑っちゃうってこともあるんだなと思って『もしかするとこれが次の映画の核にならないかな。そしたらできるんじゃないかな』と思いました」と2作目のテーマのヒントを得たことを明かした。そして「なのでこの作品は、原案、蒼井優でスタートしたんです」と言うと、会場中から拍手が巻き起こった。

撮影の合間の待ち時間について橋爪は、一人一人緊張しているため、あまり集まってワイワイ騒ぐことはなかったと言い「変なことをすると監督にやりすぎと怒られるんですよ。もっとちゃんとやれとか」と明かすと、吉行は「監督はすごく優しい雰囲気は出してはいらっしゃるんですけれど、それがひたひたひたとこっちに来る時は、なんかすごく気迫が伝わってきて、それで怯えちゃうんです」と現場での山田監督の雰囲気について語った。続けて「そこにいらっしゃるから、よいしょしている訳でないんですけど」と前置きした上で「本当に一緒にいられるっていう空気が嬉しくなっちゃうんです。それで私はとても楽しい撮影でした」と撮影当時を振り返った。

今回劇中で亡くなってしまうという役柄を演じた小林は「年齢が年齢ですので、今回ほど意味深い死をいただきまして、棺桶の中では『このまま逝ってもいいな』という幸せを感じるほどいい仕事をさせていただきました」と思いを馳せた。

大変だったことについて橋爪は、自動車教習所でのシーンを挙げ「縁石に乗り上げろとか、バックしてあそこへぶつかれとか、結構腕がいるんですよね。大変でした」とわざと下手な運転することに苦労したという。

大阪府出身の山田監督、橋爪。それぞれ大阪への想いについて尋ねられると、山田監督は「大阪の豊中生まれでして、豊中市にはまだ僕が生まれた家が残っているんです」と明かし「豊中市の名誉市民にまでなっているんですけれど、豊中ではわざわざ上映会をやってくださったりして、この年になって生まれ故郷は豊中だってことを改めて思ったりしているわけです」と語った。続いて大阪市出身の橋爪は「昔新幹線に乗ってきて名古屋ぐらいを過ぎると売り子さんが『冷コー』って言ってたんですが、最近は若い人だからか『アイスコーヒー』って言うんです。それを聞いて自動的に関西弁になっていたんですが、あれ是非復活させてほしいです」と言い、客席に向かって「『冷コー』ってもう言わないの?」と尋ね、言わないと返事があると「もう死語?情けないわぁ。そうか、もう無いのか……」と残念そうなそぶりを見せた。

最後に橋爪は「撮り終わると離れてしまうので、作品に対する熱意というのがどんどんどんどん薄れてくるのですが、それをまたこうやって封切り前に劇場に来てご挨拶をすると、撮影当時のことがいろいろ思い出されます」と言うと、続けて「噂によるとパート3ができるかもしれない」と重大発表を行った。そして「そのためにはこのパート2でドッと盛り上げないかんと、みなさんの責任は重大なんです。沢山のお客さんに来ていただくことをお願いして、挨拶に代えたいと思います」とPR。山田監督は「大笑いして、楽しんで、劇場をあとにしていただければと思いますけれど『無縁社会』『老人の孤独死』という今の日本の社会が抱えた大きな問題がこの映画の背後にあるわけでして、それは誰もが決して他人事ではないと思います」と作品のテーマについて触れ「この国は安心して年を取っていける国であるのか、そのような政治が熱心に行われているのかということを考えていただけるきっかけにもなればいいなと思っております。そのためにもどうぞこの映画を沢山の人に観てもらえるように、少しでも手伝っていただければ有り難いと思います」と締めくくった。

『家族はつらいよ2』は、前作『家族はつらいよ』での橋爪功演じる周造と吉行和子演じる富子の離婚騒動から数年後の話。周造はマイカーで外出することを楽しみにしていたが、車に傷が目立ち始めたため、家族は高齢者危険運転の恐れがあるとして運転免許を返上させることを画策するも、頑固な周造を説得する嫌な役回りを誰が買って出るのかと兄妹夫婦でなすりつけあう内に不穏な空気になり……再び平田家のドタバタ劇が繰り広げられる。『男はつらいよ』シリーズ、『母と暮らせば』(15)など、数々のヒット作を生み出した山田洋次監督がメガホンを取った作品。

【関西ウォーカー編集部/ライター南 華凛】

南 華凛

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