「ロシア人客が立ち往生」、その時子供たちは砂浜で遊ぶ――。タイで見た侵攻直後の光景に静かな反響

タイに滞在中のロシア人観光客が立ち往生に――。ウクライナ侵攻がはじまり、世界に広がる波紋の1つとしてこんなニュースを見聞きした人は少なくないはずだ。事態が目まぐるしく変わる最中、仕事でタイに滞在していたイラストレーターの小林眞理子( @mariko_asia27 )さん。自らの目で見たその時のタイのとある島の様子を描いた漫画に、静かな反響が集まっている。

「冒険しよー！」無邪気に遊ぶ子供たちの姿に心動かされる

小林さんは、数年前から長期滞在も含め何度もタイに足を運び、その時々のタイの風景や、出会った人々、自身の体験を題材にしたコミックエッセイをSNS上で発表している。コロナ禍の影響でなかなか渡航ができない中、今年2月、約2年ぶりに再びタイを訪れたという。

今回の滞在では以前にも訪れたことのある、とある島に再訪した小林さん。ビーチに面したテラスで作業していると、近くの席にロシア語を話す家族連れがいることに気付く。プーケットをはじめ、多くのリゾート地を有するタイはロシア人観光客にとって特に人気の高い国なのだ。

ロシア系と思しき夫婦が話し込む中、手持ち無沙汰に猫を撫でる子供と目が合った小林さん。そこにやってきたのが、タイの現地に暮らす子供たちだった。ホテル従業員の子供たちにとっては、敷地内も遊び場。小林さんのタブレットを覗き込み「お絵描きしてる？」と訊ねたり、自由気ままに過ごしていた。

すると、現地の少女が、観光客の男の子に声をかけた。遊び相手もなく退屈していただろう男の子は、目を輝かせて子供たちの輪に加わり、岩場をめがけ一目散に駆け出した。お互いに言葉が通じないことをものともせず、流木や砂浜をおもちゃにはしゃぐ子供たちを見て、小林さんは「あの子たちに国境なんてないんだ」と感じたという。

タイの少女の「パイティアオパイパイ！」という言葉を、“冒険しよー！って気持ちかな”と読み解くとともに、「私もそんな楽しいこと　誰かに言いたい」と思った小林さん。無邪気に遊ぶ子供たちに背中を押されたかのように、小林さんは「…遊びに行こう」とつぶやくのだった。

TwitterやInstagramで公開されたこのエピソードは、ロシアによるウクライナ侵攻がはじまって数日後の出来事。きっと以前なら取り立てて語るまでもなかっただろう、タイの浜辺での何気ない光景だ。

2年ぶりの訪タイで、コロナ禍の影響や国際情勢の変化に直面し「私の目にした事を皆さんに伝えたいです」と話していた小林さん。読者からは「切ない」「なんだか泣きたくなるようなお話」と、描かれた時間へのコメントが多く寄せられていた。

画像提供：小林眞理子(@mariko_asia27)