Kバレエの「海賊」いよいよ上演!宮尾俊太郎が魅力を語る

関西ウォーカー

WEB連載「演劇ライター・はーこのSTAGEプラス」Vol.42をお届け!

なんてワクワクする、スリルに満ちた舞台だろう! それまで『海賊』と言えば、バレエのガラ公演で踊られる、パ・ド・ドゥ(男女2人の踊り)が有名だった。なかなか上演されることのない『海賊』全幕ものを、Kバレエの芸術監督・熊川哲也が物語を再構築、音楽を改訂し、振付や演技を見直す大胆な演出で作り上げたのが2007年。すごいテクニックに目を奪われるものの、物語やキャラクターの関係性に希薄な印象のあった『海賊』が、演劇的に深みを持ち、わかりやすく、ビジュアル的にも申し分のない非常に魅力的な作品に生まれ変わった。初演時、「渾身の作品です」と話していた熊川。『海賊』に新たな歴史を刻んだKバレエの舞台が、2010年の再演を経て、7年ぶりに大阪・フェスティバルホールで上演される。

ちなみに初演時は、ジョニー・ディップ主演の映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』第3弾の公開時期と重なる。今回はシリーズ第5弾が7月1日(土)から公開だ。映画の海賊ジャック・スパロウと同様にカッコイイのが『海賊』のコンラッド。15年にプリンシパル(バレエ団の最高位)となり、Kバレエ以外の舞台などでも活躍中の宮尾俊太郎が演じる。そんなスターダンサーの彼が、『海賊』の魅力を語った。

プロローグでいきなり大きな2隻の船が登場する。コンラッドを首領とする海賊たちが商船を襲い財宝を手にするが、嵐で難破。ギリシャの浜辺に打ち上げられた彼らを救ったのは、美しいメドーラとグルナーラ姉妹たち。が、彼女らは奴隷商人・ランケデムの一行にさらわれてしまい…。

海賊と商人の戦いに、恋物語を絡めたドラマチックな物語だ。豪華なセット、エキゾチックできらびやかな衣装。「熊川さんのこだわりが散りばめられています」と話す宮尾は、10年に引き続きコンラッド役だ。「何度も踊って来ている役ですが、若手と作品を牽引しながら、プリンシパルとしての踊りを見せないと。キャラクターをより深く掘り下げて臨みます」と意気込む。

熊川が「恋物語に主軸を置かず、男同士の友情や権力争いなど、荒々しさを全面に出した壮大な海賊アドベンチャー」に仕立て上げた舞台は、男性ダンサーの層が厚いKバレエにハマる。宮尾も「回転や跳躍といった、男性ダンサーならではの迫力あるテクニックがたくさん見られ、その魅力を存分に楽しむことができます。僕たちの肉体美もいかんなく発揮できるし(笑)。冒険活劇なので、男性や子供たち、バレエを知らない人にも入りやすくて見やすい作品ですよ」。

海賊のメンバー・アリはダイナミックな踊りで、熊川が得意としていた役。今回はKバレエの若手・山本雅也がアリ役デビューする。2013年にローザンヌ国際バレエ・コンクールで第3位入賞した期待の大型新鋭だ。「大阪に来るころには、素晴らしいアリが待っていると思います」。

『海賊』の全幕もの上演の機会はなかなか、ない。そして、これほどなスペクタクル・アドベンチャーの『海賊』は、まず、ない。クラシックバレエのデビューを考えるなら、これが最適だ。『白鳥の湖』も『ジゼル』も、今後さまざまな公演で観ることができる。エンタメ・ファンにも必見の舞台。どんな席でもいい。このチャンス、絶対逃さないで!

【関西ウォーカー編集部/演劇ライター・はーこ】

演劇ライター・はーこ

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