サウナがブームとなり、サウナーと呼ばれるサウナ愛好者の数も年々増え、ひとつのカルチャーとして定着している感のあるサウナ。多くのサウナ施設が新しく誕生し、銭湯がサウナに力を入れてリニューアルするなど、勢いは止まらない。そんななか、2022年12月23日、書籍「サ道」の作者であり、サウナ・スパ協会公認の日本サウナ大使でもあるタナカカツキ氏が総合プロデュースしたサウナ施設「渋谷サウナス」がオープンした。
「ととのう」ために必要な要素を妥協なく取り入れたサウナ
東京・渋谷にオープンした「渋谷サウナス」。オープン前から大きな話題となっていたサウナ施設がついに営業を開始。館内には趣向を凝らした8種類9つのサウナ室と、2種類4つの水風呂があり、男女の浴室を日替わりにすることで、誰もがすべてのサウナを堪能できるようになっている。
3フロアある施設は、2階と3階がサウナエリア。フロアで男女を分けるのではなく、建物を縦に東西で分けた“メゾネット”のような造り。
東側「LAMPI」でととのう
東側はLAMPI(ランピ=池)。2階には2つのサウナと水風呂がある。「MUSTA(ムスタ=黒)」はフィンランドから輸入した塗料を使用し名前の通り“黒い”サウナ室。和の意匠を取り入れた瞑想にもぴったりなサウナ室で、自分でサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる「セルフロウリュ」が楽しめる。
「BED(ベッド)」はまさにベッドのように横になれるサウナ室。定員は3名で、サウナ内には“枕”が置かれていて寝転んだ状態でサウナを楽しめる。足の部分が少し高くなっていて、足元から温まることができる。普段のサウナではなかななか横になることはできないし、一番冷えを感じる足が下になることが当たり前だが、足を上げて横になれるのは至福。オートロウリュ付きなのもうれしい。
「MATALA(マタラ=浅い)」は水風呂。寝転んだ状態で入る水風呂で、頭を置く部分にも水が流れ、横になりながら頭から足先までしっかり冷やすことができる。サウナで一番熱くなる頭を冷やせるように設計された、ほかではなかなかないタイプの水風呂だ。このフロアだけでも満足してしまいそうだが、まだ上のフロアがある。
「LAMPI」の3階には2つのサウナと外気浴スペースが確保されている。「SOUND(サウンド)」は、音楽家とくさしけんご氏とWHITELIGHTが共同開発したサウンドシステムを搭載したサウナ室。中に設置された円錐形の反射板によって広がる音とロウリュの熱を全身で体感できる。熱と音に包まれる独特の感覚の虜になるはず。
もう一つの「KELO(ケロ)」は樹齢数百年のフィンランドパインが立ち枯れてできた木材「ケロ」を使った、コンパクトなサイズのサウナ室。ここでは、植物について専門的な知識をもつウィスキングマイスターによる「ウィスキング」の施術を受けることも可能。「ウィスキング」は白樺やユーカリなどの若葉を束ねたものを使ったリフレッシュサービス。日本ではウィスキングマイスターも少なく、まだまだ体験できる施設が少ないが、「渋谷サウナス」ではそれも可能となる。
ウィスキングマイスターの中には、サウナ芸人として知られるマグ万平氏もいて、日程限定かつ男性限定だが直接施術を受けるチャンスもある。
そして、「渋谷サウナス」こだわりの水風呂「SYVÄ(シヴァ=深い)」も同フロアにある。関東最大級の深さの水風呂はなんと水深160センチ。小柄な人なら頭まですっぽり潜ってしまう造りになっている。タナカカツキ氏は、「サウナの後の水風呂で頭を冷やすのが気持ちいいが、なかなか頭まで入れる水風呂がない。髪をつけない、潜らないが水風呂のマナーとなっているが、頭を冷やしたいという欲求に応える水風呂」と話す。サウナでしっかり体を温め汗をかいた後、シャワーを浴びて「SYVÄ」に入ると何とも言えない“満たされ感”に包まれる。
西側「WOODS」でととのう
西側は「WOODS(ウーズ=森)」。2階にあるのは「HARMAA(ハルマー=灰色)」。グレーを基調としたサウナ室で、座面下を「Z」の形にすることで足元にゆとりがある設計になっている。
「VIHTA(ヴィヒタ)」は白樺の若葉を束ねたもので、「ウィスキング」に使用するのと同じもの。こちらのサウナ室はヴィヒタで覆いつくしたボタニカルな空間になっていて、室内を漂う白樺の香りに包まれながらサウナを体験できる。3人掛けのコンパクトな室内で、ゆったりと過ごせる。
3階にあるのはクロモジ茶のアロマを使用した「TEETÄ(テータ=茶)」。胡座になってサウナストーブを囲み、小窓からの景色を楽しめる茶室をイメージ。ゆっくりと深呼吸して香りを堪能しながら汗をかける。
もうひとつのサウナは「TUULI(トゥーリ=風)」。床から天井まで木材で埋め尽くしたサウナ室で、天井が高いのが特徴。20人程度が利用できる広い空間で、「アウフグース」を楽しむためのサウナ室。
ちなみに「アウフグース」は、熱したサウナストーンにアロマ水などをかけ、発生した蒸気をタオルで仰いで拡散させるドイツ式のサービスのこと。通常時よりも体感温度が上がる。「SAUNAS」のアウフグースアドバイザースター諸星氏のアウフグースも受けられる。
「WOODS」の2階にも寝転べる水風呂「MATALA」、3階には「ウィスキング」体験ができる「ケロ」、水深160センチの水風呂「SYVÄ」があり、「渋谷サウナス」こだわりの水風呂やウィスキングはどちら側でも体験できる。
そして、同じく両サイドに共通しているのが3階の外気浴スペース。サウナでととのうためには、サウナ→水風呂→外気浴という順を踏むのを理想と考え、都市型サウナでは珍しい外気浴スペースをしっかりと確保。不定期にミストを噴霧し、より心地いい外気浴が体験できる。
“桶シャワー”もあって、ぬるめのお湯を一気に頭から浴びてサウナ後の汗を流すことができる。
サウナの前後も快適に過ごせるこだわり
建物1階がフロントとワークスペースと食事スペースになっていて、奥には予約制の会議室もあり、ミーティングなどに使用することもできる。仕事を頑張った後に、サウナでゆっくりするのもいいし、サウナでスッキリしてから仕事に集中することもできる。
さらに食事でも「ととのう」を妨げないようヴィーガン対応メニューを用意。ミシュラン2つ星の精進料理「醍醐」四代目野村祐介氏監修による新業態のヴィーガンレストランを併設していて、「果実とスパイス香るヴィーガンカレー」(1540円)や「焼きネギ醤油ラーメン」(1320円)など、サウナで健康的にリラックスした後にぴったりのメニューがそろう。
サウナ後の人気ドリンク“オロポ”は、通常、オロナミンCとポカリスエットを合わせて作るが、ここではヴィーガンの素材のみで“オロポのような味”を表現した「クラフトオロポ」(660円)が楽しめる。
細かいポイントを挙げるとまだまだあり、そこかしこにサウナ好きのための仕掛けや工夫があり、同じくサウナを愛する人たちが造ったサウナ施設であることを実感できる。朝8時から営業しているので“朝サウナ”OK。予約制ではあるが会員制ではないので気軽に立ち寄れるのもポイント。
「渋谷サウナス」は、タナカカツキ氏いわく、「妥協なく理想をそのまま形にしたサウナ」。この存在によって“渋谷でととのう”が広く当たり前になるかもしれない。
取材・文/岡部礼子
※「渋谷サウナス」は毎日、男女利用可
※WOODSとLAMPIは偶数日と奇数日で入れ替え制。詳しくは公式サイトで要確認
※男女ともに裸で入浴、タオルと館内着は入場料金に含む
※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。
※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。