円安による生活コストの上昇や、老後資金問題など、お金に関する漠然とした不安を抱えている人も多いはず。一方で、これまでにも「お金を貯めたい」と考えてきたにもかかわらず、なかなかうまくいかないという人も少なくないだろう。ここでは、『年収300万円でもラクラク越えられる「貯蓄1000万円の壁」』の著者でもあるファイナンシャルプランナーの飯村久美さんが、お金を増やすコツを伝授。
今回は第43回。
「いつでも仕事を辞めることができる」
そんなふうに思えるのも、貯蓄1000万円超がもたらす大きなメリットのひとつです。
「仕事はつらいけど、お金がないから辞めたら生活していけないな」
「転職先がすぐに見つかるかどうか不安で辞められないよ」
「ローンの支払いもあるし家族のために嫌でも稼がないと……」
上司をはじめとした職場の人との人間関係、会社の雰囲気、やりがい、労働時間、給与への不満など、仕事を辞めたいと思う理由は人によってさまざまです。こうした不満を抱えながらも、実際は生活のためにお金が必要なので、我慢しながら働き続けているという人はたくさんいます。
しかし、無理をして仕事に追われる生活を続けていると、精神的にも肉体的にもどんどん疲労が蓄積していきます。最悪の場合は、心の病を患うこともあるでしょう。
私は、「みなさん、嫌なら仕事を辞めてしまいましょう」といっているわけではありません。でも、過度なストレスは、確実に私たちの心身に負荷をかけていき、とりかえしのつかないことになるケースもあります。
どうにもならない状態に陥る前に、「仕事を辞める」という決断があってもいい
と思うのです。
もちろん、それなりの貯蓄がないのに急に仕事を辞めてしまったら、その後の生活は困窮します。いまの仕事を辞めてすぐに希望に合った会社に転職できるかといえば、それは簡単なことではないでしょう。
私のクライアントのなかにも、新入社員として入社したけれどパワハラを受けて会社に行けなくなってしまい、わずか1年で退職した人がいました。貯蓄がまったくない状態で退職したため、日々の生活を維持するのに精一杯になってしまい、余裕を持って転職活動ができなかったと悔やんでいました。
でも、ある程度の
貯蓄があれば、しばらくはお金のことを気にせずに生活していけます。
人生は長く、20年、30年、40年と私たちは働いていく必要があります。心身を病んでしまうくらいに現状に対しての不満があるのならば、いちど仕事をリセットして、自分の未来を見つめ直すことは確実にプラスに働くはずです。
貯蓄が1000万円あれば、いつでも仕事を辞められます。具合が悪くなるまで我慢せずに、スパッと決断をすることができます。また、給与額を基準に仕事を選ばなくてもよくなるため、生活のためにあきらめていた仕事に挑戦することもできますし、ライフスタイルにあわせて自由に働ける職場を選ぶこともできるでしょう。つまり、
「貯蓄1000万円の壁」を越えれば、自分にとって理想の働き方ができるチャンスが広がる
ということです。
もちろん、いますぐ仕事を辞めなくても、「いつでも辞められる」「次の仕事を慌てて探す必要はない」と思えるので安心感がまったく違います。上司の顔色をうかがったり、嫌なことを無理に我慢したりする必要はなくなるのです。
そんな働き方をするためにも、貯蓄1000万円を目指してください。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・どうにもならない状態に陥る前に、「仕事を辞める」という決断があってもいい<br />・「貯蓄1000万円の壁」を越えれば、理想の働き方ができるチャンスが広がる
編集協力=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、洗川俊一、横山美和、撮影=樋口涼