鶴房汐恩(JO1)と松井愛莉がW主演を務めるテレビドラマ『ブルーバースデー』(カンテレ/関西ローカル 毎週火曜深夜0時55分~)。時空を超えた想いが織りなすタイムリープ・サスペンス・ラブストーリーとなる本作は、毎回驚かされる展開から目が離せない内容となっているが、ついに最終回を迎える。番組終盤にて、弟である、鶴房汐恩演じる准を殺害した犯人が、姉である咲ということが明らかになったが、番組のキーパーソンとも言える咲を演じているのが、女優としての地位を確かなものとしている石川恋。殺人犯を初めて演じる石川に、今回の難しい役どころについて聞いた。
挑戦的な役ができるというのが、女優としてとてもプラスになると感じた
――まずは、『ブルーバースデー』に出演が決まった時の気持ちを聞かせてください。
【石川恋】私が演じる咲が、番組の前半は優しくて本当に穏やかな頼れるお姉ちゃんみたいな感じだったのが、後半からは豹変して猟奇的になっていく、二面性がある役だと聞いて、面白いなと思いました。
これまでこういう役を演じたことがなかったので、2023年の年明け1本目の作品から、挑戦的な役ができるというのが、女優としてとてもプラスになると感じています。
――演じる上で難しかったことを教えてください。
【石川恋】タイムリープして物語が進んでいくのですが、時系列がバラバラになって、自分のなかで整理がつかなくなったりしました。監督や主演の松井愛莉さんと「ここはこうでこうだからこうだよね」みたいな話をたくさんして、整理してました。
咲については、描かれていない部分も結構あったんです。実は台本には咲のこれまでの人生は書かれてなくて、そこを詰めていくという作業は結構時間がかかりました。咲を演じる上で、自分だけでは補いきれない、台本に載っていない背景を監督と結構長い時間話して、しっかりと詰めていきました。
人を殺す役を演じるのが初めてだったので、演じる上で引きずるものがあって、難しい役でしたが得られたものはすごく大きかったです。他にも、詳しくはお話できないのですが、激しいアクションもやっています。
――咲をどう理解しながら演じたのでしょうか。
【石川恋】咲は、すべて仮面をかぶって本当の自分を隠しているんです。あえて人に尽くしてるというか、愛情が欲しいからこそ、たぶん人に尽くすみたいな意味で、いろんな人をもてなしているんだと思います。
私自身が、咲に共感できる部分や咲を理解できる部分は正直あまりありません。ただ、私が咲の一番近くで咲を1カ月も演じてきているから、「どうしてこういうふうになっちゃったのか」とか、「どうしたら咲を救えたのかな」とか、咲から離れて素の自分に戻ったときにずっと考えていました。
人とちゃんと向き合っていたら、こんなふうにはならなかったのではないかというのを、咲のことを理解できないけど、理解してあげたくなったというか、救いたくなったというか、そう思ってました。
咲は、幼い子供の気持ちのまま、ずっと大人になりきれなくて、子供のまま大人になってしまったという女性だと思います。
――石川さんとは全く違う、理解もできない咲という難しい役柄を女優として演じることは楽しかったですか。
【石川恋】「楽しい」という感情とはまた違いました。最後の方はもうしんどかったですね。鶴房汐恩くん演じる弟の准が、松井愛莉ちゃん演じる花鈴を守りたいという気持ちがすごくピュアでまっすぐなんです。准は、姉である咲や家族のこともすごく大切に思ってくれてるから、咲をどうにか更生させようとするんですけど、全く聞き入れないんです。
准が言ってくれる言葉のひとつひとつを咲はもう理解することもできないし、聞き入れられないんですけど、咲を演じている私がちょっと気を抜くと、私にまっすぐ入ってきてしまうんですよね。
それがもう辛くて、どんどん刺さってくるから、私が出てきて感情を受け止めたら駄目みたいな気持ちが後半はずっと続いていました。意図してないところで涙があふれるということがすごく多かったです(目に涙を浮かべながら語ってくれた)。
最後のシーンを撮り終えた後で、藤江(儀全)監督が、「咲が石川恋さんでよかったです」と言ってくださって、その言葉で全部が救われた気持ちになりました。咲という難しい役に挑戦できてよかったと思えました。
タイムリープできるとしたら、中学生に戻ってお芝居を勉強したい
――とても貴重なお話を聞かせていただきました。難しい役を演じられることは女優としての石川さんにプラスになりつつも、同時に苦しい思いをずっとされていたわけですね。ちょっと話題を変えまして、タイムリープした際の女子高生の制服を着てみた感想について聞かせてください。
【石川恋】とにかく寒い!高校生のときによくあんな格好で自転車をこいで、高校に通えていたなと本当に思いました。暖房もなくて、ホッカイロ10枚ぐらい貼っても学校は寒いんですよね。寒さのしんどさもすごくありました。
――高校生を違和感なく演じていると感じましたが、実際どうでしたか。
【石川恋】高校生を演じているといっても、周りが同年代の子たちなので、あまり意識することなく普通に演じていました。
――小島梨里杏さんも髪に大きなリボンを付けて、おもいっきり女子高生という感じでしたね。
【石川恋】梨里杏ちゃんも私と同い年なんですよ。28歳と18歳をタイムリープで行き来するという話ではあるんですけど、まさか30代を目前にして、制服で学生役をやるとは思ってなかったです。
――石川さんの制服姿を見た方はみんな可愛いなと思ったはずです。
【石川恋】本当ですか!まだまだお待ちしてます(笑)。
――もし、石川さんがタイムリープできるとしたら、どんなことをしてみたいですか。
【石川恋】中学生、13歳ぐらいの自分に戻りたいです。今の事務所・テンカラットに入って、ワークショップに通って、もっとお芝居を早くから勉強したいですね。
全然後悔はしてなくて、今の自分にすごく満足はしているんですけど、やっぱりお芝居を始めた年齢がちょっと遅いので、経験値的にまだまだ足りてない部分がいっぱいあって、できればもっと早いうちからお芝居を勉強したかったです。10代のうちからお芝居をしてたら、今どうなっているのかなという、何かがもっと見えたり、もしかしたら世界は違ったりしたのかなという気持ちはずっとあります。
でもその反面、ちゃんと栃木で高校に通って、大学を4年で卒業して、アルバイトの経験もあるという生活を送ってきたことも、今に十分活かされていると思います。
今回は学生役ができましたが、ずっと学園ものに出演することにも憧れていました。初めてお芝居をしたのが21歳で、がっつり高校生の学園ものへの出演経験がなかったので、早いうちからお芝居を始めて、等身大の高校生の役柄を演じてみたかったです。
――最後にメッセージをお願いします。
【石川恋】7話以降の咲の存在は、観ている方からもっとも憎まれ、いなくなってもらいたい存在になっていると思いますので、今までの咲からの豹変ぶりに注目してもらいたいです。
いろんな要素が詰まったドラマです。JO1さんの主題歌の「Romance」もドラマにとても合っていますし、撮り方もこだわっていて素敵なんです。最終回は、衝撃の結末が待っていますので、楽しみに観てもらえたらと思います。
取材・文・撮影=野木原晃一