こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(
@tazaki_youtube
)と申します。
学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。
その経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。本日は、
「投資で一番大切な20の教え」(ハワード・マークス著/日本経済新聞出版)
という本を紹介します。ウォーレン・バフェットも「近年稀に見る実益ある本」と大絶賛しています。
「一番大切な20の教え」というタイトルには、多くの人が違和感を感じるかもしれません。これは「一番大切な」教えが20個も存在するということです。このことは、投資には「これさえやればうまくいく」という唯一無二の方法が存在しないということを示しています。
投資は、すべての知識が重要であるため「知の総合格闘技」ともいえます。
リスクとは
よく見られる資本市場の折れ線グラフでは、リスクが低い資産ほどリターンが小さく、リスクが高い資産ほどリターンが大きくなります。
ところが、本書では正規分布を使ってリターンの頻度を分析。すると、
リスクが高くなると高いリターンを期待できる可能性は増加しますが、同時に低いリターンにとどまる(損失する)可能性も出てくる
ことがわかります。これがリスクの本質です。
著者のハワード・マークスは、ジャンク債や不良債権の投資に熟練しており、バリュー投資のエキスパートと言えます。この本は、バリュー投資の真髄が詰まったというべき一冊です。
【バリュー投資】本質的価値を見極める
「モノの価格の変化」は、需要と供給の違いによって説明することができます。
需要曲線と供給曲線(図3)は、価格と需要・供給の大きさを表しています。需要曲線は価格が安くなるほど数量が増えます(=買いたい人が増えます)。一方、供給曲線は価格が高くなるほど数量が増えます(=売りたい人が増えます)。これはモノの価格が決まる当たり前のルールです。
しかし、投資の世界ではこのルールが通用しないことがあります。
投資家は値段が上がれば満足し、下がれば逆に不安になってしまうという、普通の商品の売買とは異なった心理を持っています。
これらの価格の変動に対して感情的なままに行動する投資家もいます。
そこで、正しい分析や根拠に基づいた本質的価値が必要です。この
本質的価値に対する株価が割安だと判断した場合に買うバリュー投資
が著者の提唱するものです。この本質的価値と価格の差は非常に重要であり、「価格と関係なしにいいアイデアはない」と述べられています。
「偉大な企業」であっても、買い値が誤っていれば投資は失敗になります。
良い投資には、「優れた企業」と「適正な価格」という2つの条件が必須
です。
非常に優秀な企業であっても、価格が高騰し過ぎてしまった場合、長期間の含み損が続くこともあります。逆に、安価な価格であっても、危険な企業であれば「安いから」といって投資する価値はありません。
「本質的な価値」はいかに測るかと疑問に思った方もいるかもしれません。
実際には、「本質的な価値」は単一の絶対的な解答はなく、複数の指標によって構成されています。これには、現金の収支、有形資産の価値、現金を生み出す能力、拡大する余地などが含まれます。
DCF法などは代表的な指標として存在しますが、目的に応じた多様な方法があるため、ここでは詳細な議論はしません。
バリュー投資の弱点
バリュー投資の良い点だけでなく、その弱点も確認することが重要です。バリュー投資が有効なのは、本質的な価値が低くなっている株価がいずれ適正価格に収斂して上昇すると予想されるからです。しかし、「いつ」適正価格に収斂するかは分かりません。
経済学者のケインズは「市場はあなたが支払い能力を保てる期間よりも長く、不合理な状態を継続する」と述べました。
本質的な価値の推定値が正確であったとしても、周りの投資家がそれに気付かなければ、長期間不合理な割安価格の状態が続いてしまう可能性があります。
これがバリュー投資の弱点です。
この対策としては、「カタリスト(株価上昇のきっかけ)」までを含めたストーリーを作り、その上で投資するといったアプローチが考えられます。
相場サイクルと人間心理
市場のサイクルに関して、多くのページが割かれております。特に人間の心理に関わるサイクルの原則は必見です。
サイクルの原則
原則1 ほとんどの物事にはサイクルがあることがやがて判明する
原則2 利益や損失を生み出す大きな機会は、周りの者が原則1を忘れた時に生じることがある
市場は時に人々に絶望や熱狂を感じさせます。「振り子を意識する」と第9章に記載されているように、投資家の心理は振り子のように強欲と恐れの間を揺れ動いています。
そこで投資家は大きく2種類のリスクを感じます。
一つは
「損失を恐れるリスク」
で、リスクというとこのリスクが通常思い浮かびます。これは弱気相場において現れる心理状態です。しかし、これはある意味で必要な「恐れ」だと言えます。恐怖を感じ、警戒しながら投資するくらいの方が、ちょうどいいですからね。
もっと恐ろしいのが
「機会を逸するリスク」
です。これは強気相場において、強欲から生じるリスクです。例えば、バブルが発生しているときに、「自分もこの波に乗らなきゃ損だ!」と思ってしまう心理のことです。このようなとき、投資家は積極的すぎる行動をとってしまいます。一つ目のリスクよりもこちらの方が恐ろしいのです。
このような心理に対して、ウォーレン・バフェットは
「価格上昇は、麻薬のように、進むべきか退くべきかを判断する理性を鈍らせる」
と述べています。
ウォーレン・バフェットが1999年に記録したアンダーパフォーム(運用成績がベンチマークを下回る)はハイテクバブルに乗ることを拒絶した強い意志の証、だと言わています。
彼は麻薬を拒むことで、目の前の快楽は逃しましたが、長期的には世界指折りの成績を残す大投資家となりました。
二次的思考が、成功の鉄則
最後のまとめであえて、第1章の「二次的思考」に触れたいと思います。
「二次的思考」とは明確な定義がないものの、シンプルで一般的な思考とは異なる、複雑で多面的な思考のことを意味します。投資家は、他の投資家とは異なる観点を持ち、他の投資家に気づかれていないことに気づき、高い分析能力を持つことが求められます。
これは一朝一夕で身に付くものではないと思われますが、本書を読むことにより、過去の経験や知識を活用して、多くの気づきを得られるかもしれません。このため、本書は時間をかけて深く味わうことができる、するめのような本と言えます。
自分の投資哲学を固めるのに、最高の1冊ですね。