物価高が続く昨今、お財布に優しい100円ショップをはじめとした低価格帯日用品店の人気が高まるなか、無印良品の新業態「無印良品500」が店舗を拡大している。「無印良品500」は、“500円以下”の日用品や消耗品を中心に商品をセレクト。2022年9月にオープンした1店舗目の「無印良品500 アトレヴィ三鷹」では、取り扱いアイテムの6.5割が500円以下の商品だ(スキンケア用品、シャンプーなどの500円以上の商品も取り扱っている)。“500円以下”をキーワードとして新業態を展開していった理由を、株式会社良品計画販売部の森安浩次さんに聞いた。
売れ筋商品から暮らしの日用品へ。暮らしに欠かせないショップを目指す
「無印良品500」で販売されている商品は、通常の無印良品でも取り扱いがあるもの。「無印良品500」限定の商品というものはない。新業態という形で店舗を展開しているのはなぜだろうか。
「無印良品は1980年から暮らしに寄り添うことを目指して、製品開発に取り組んできました。40年で磨き上げた商品の中には、500円以下のものが多数あります。500円以下の商品を中心とした店舗を暮らしに寄り添う場所に出店することで、お客様の役に立ちたいと考えています」
“500円以下”という基準を設けた理由を聞くと「ワンコインで価格と品質への安心感を持って買っていただける商品を集めました。低価格で生活を支えようと思ったとき、最適な価格で作った商品が500円以下の商品群でした」とのこと。値上げラッシュが続き、生活者の財布のひもが堅くなりがちなところをうまくついた基準と言える。
1号店となった「無印良品500 アトレヴィ三鷹」は、もとは「MUJIcom(ムジコム)」として営業をしていた。「MUJIcom」は、“いつもの通り道ですぐに立ち寄れて、必要な時に手早く買える、より身近な無印良品”というコンセプトで展開、衣服や生活雑貨、食品の売れ筋商品をセレクトしている。
「売れ筋商品を集めていた『MUJIcom』に対し、『無印良品500』では暮らしに欠かせない日用品を集めています。三鷹駅は生活圏で、かつ1日の乗降客数が約20万人の駅。周辺にお住まいの方はもちろん、通勤・通学の利用者が多数います。『無印良品500』をオープンする前に当該店でトライアルを行い、反響も上々だったこともあり、三鷹店を1号店としてスタートさせました」
「無印良品 500」で脚光を浴びたアイテムは?人気の5アイテム
無印良品で販売しているアイテムは衣料品、生活雑貨、食品と多岐に渡り、500円以下のアイテムも数多い。“500円以下”という基準を設定し、ディスプレイに工夫をしたことで商品の魅力の“再発見”にもつながっているそうだ。
「お客様の目線に届きやすく、手に取りやすいよう什器の高さを工夫しました。『無印良品にはこんな商品があったんだ』『ワンコインで買える便利なものがこんなにあるんだ』と気づいていただけるよう工夫をしています」
「『無印良品500』でピックアップすることで、人気商品となったアイテムがいくつもあります。例えば、タオルとデニムの残糸を使った『残糸を使った軍手』(49円)。片手ごとに購入可能で、同じ色味でそろえることも、わざと片手ずつ違う色にすることも可能です。『竹100%携帯用ペーパーナプキン』(99円)はティッシュと違って水に濡れても手に張り付いたりしないので、手洗い後に使われる方が多いようですね。ケースに粘着テープがついているので、開け閉めもしやすくなっています」
ほかにも、泡立ちと水切れのよさにこだわった「ウレタンフォーム三層スポンジ 3個入」(299円)、ホイップ状の泡を作れる「泡立てボール・大」(150円)、紙芯がなく一般的なトイレットペーパーよりも長い「トイレットペーパー長巻」(150円)などが“再発見”されたアイテム。アイテムによってはSNSで「100均よりも安い!」「無印らしいシンプルデザインと高品質なのにお得」という声もあがっており、リピート買いする人も多いようだ。
「無印良品500」として出店する立地の基準はどのようなものなのだろうか。
「乗降客数3万人以上の駅で、駅ナカや駅チカ、街中などの暮らしに寄り添う場所に出店したいと考えています。日用品が必要なときに、ちょっと買って帰る、コンビニやドラッグストアのような役割を担いたいと考えています」
2023年2月末までに都心部中心に27店舗、年間20店舗のペースで出店を予定中。500円以下の日用品ラインナップも拡大していくそうだ。無印良品がより暮らしに根ざした存在になってくれそうだ。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・目的に合わせた基準を設定する
・セレクト基準を変えると商品の違った視点での魅力を周知するきっかけに
取材・文=西連寺くらら